スキー場休廃止数の推移と近年まとめ

 「日本におけるスキー場の閉鎖・休業にみられる地域的傾向」(2014年:呉羽正昭)によると、日本で最初に閉鎖されたスキー場は1962年の石筵スキー場(福島県)、2012年までに開設されたスキー場総数は763か所で、そのうち閉鎖は241か所、休業は43か所、閉鎖・休業スキー場は計284か所で、これまでに開設された全スキー場数の37%に達し、2012年時点で営業していたのは479か所、ということらしい。

 営業スキー場数のピークは1994年の639か所で、1998年から急減し、閉鎖・休業のピークは2006年の21か所、2010年以降の閉鎖・休業数は8か所、7か所、7か所に減少している。

 私の調べでは、2013年以降も一桁が続き、2014年には3か所(白馬みねかた、柳津温泉、サンパティック斑尾;他にロープトゥのみが3か所)、2015年には2か所(マウンテンパーク津南、スカイ獅子吼)まで減ったが、2015/16シーズン以降の雪不足で再び増加傾向にある。

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(2019以降は推測)

 

 2019/20シーズンは営業するつもりだったのが雪不足で1日も営業できずにそのまま休止(復活見込みなしの実質閉鎖)となっているスキー場がいくつかあり、これを2019年にカウント(最終営業は2018/19だから)するか、2020年にカウントするか(2019/20は営業体制にあり、休止を決めたのは2020年だから)悩ましいところだが、「2018/19が最終営業」でそのまま終わりそうなスキー場は現時点で11か所(他にコロナ休止で再開しそうなところが3か所)と2桁復活の可能性がある。

 大穴: 19/20シーズン前に確定
 奥大山: 19/20シーズン前に確定
 スイス村: 19/20シーズン前に2シーズン休止発表(リフト老朽化のため)
 ミカタスノーパーク: 19/20シーズン前に休止(翌年以降未定)発表
 アサヒテングストン: 19/20シーズン中に自己破産
 わかぶな高原: 19/20シーズン後に村が支援打ち切り決定
 雁が原: 19/20シーズン後に自己破産
 花見山: 19/20シーズン後に休止発表(経営者夫婦高齢のため)
 揖斐高原: 19/20シーズン後に実質運営の町が撤退発表
 国見岳: 19/20シーズン後のホームページ更新なし
 魚沼大原: 告知なし(2009年12月には市が廃止検討)
 ぶどう、胎内、新保ファミリー: 19/20は雪不足で営業できず、20/21はコロナ休止

 今シーズン休止で「2019/20が最終営業」も今は2桁を超えるが、今シーズンはコロナ禍を理由とした休止も多く、最終的にいくつになるかはまだ見通せない。マウントレースイのように、運営会社が自己破産したが同じ出資者が別の受け皿会社を設立しているところもあり、2桁にはならない可能性が高そう。

 飯綱高原: 確定(20/21は地元有志が「雪遊び広場」として開放)
 雲辺寺: 確定(20/21シーズン前に発表)
 猪苗代リゾート: ホームページ更新なく廃止濃厚
 ばんだいx2: ホームページ更新なく廃止濃厚
 国設芦別: 指定管理の応募なく休止(あれば再開)
 芸北国際: マックアース撤退後の告知がなく不明
 石打花岡: 休止理由の発表なし
 エコーバレー: コロナ休止(来季以降も数年間は営業しない可能性を示唆)
 今庄365: コロナ休止
 天山リゾート: コロナ休止
 妙高スキーパーク: リフトケーブル他に不具合(再開は夏のゴルフ場の収入次第)
 マウントレースイ: 運営会社が自己破産も別の受け皿会社が設立される
 瑞穂ハイランド: 自己破産後も営業継続に意欲的だが譲渡先探しは難航
 飛騨高山: 豪雨災害により休止も再開に向けて市が復旧予算計上
 広島県民の森: 指定管理者が自己破産したが別の指定管理者が決定

 2020/21シーズンが最終営業となりそうなところは、リフト営業を終了するところが2か所(大湯温泉、三井野原)と、民間運営への切り替えが成就しなさそうな3か所(岩手県奥州市の越路、ひめかゆ、国見平)に、年内に存続か廃止か決定の宇奈月温泉も廃止濃厚か。

 キビしいところは昨シーズンの雪不足と今シーズンのコロナでやられていると考えればこれ以上大きくは増えないかもしれないが、報道や公表はされていないが瀬戸際のところも多いだろう。これからシーズン開始にかけて、2桁に増えてもおかしくはない。

 2011/12シーズンを最後に一旦休止した牧の入が2012年の休止にカウントされているのか分からないが2016/17シーズンに復活、2017/18シーズンにはARAIが復活、峰山高原が14年ぶりの新設、佐渡市営平がロープトゥをチェアリフトに架け替えといった増加要因もあるが、2013年以降で差引40近く減っている。呉羽氏のデータを基にすると、開業765か所のうち営業しているのは440か所ほどで、残存率は57%といったところか。

 設備更新が1990年前後で止まっているスキー場は多く(大半)、大規模更新を必要とする設備寿命が30~40年とすると、ここからの向こう10年で設備が老朽限界を迎えるスキー場が続出するが、その多くは設備更新費用を捻出・調達できないものと思われる。

 リフトは廃止するがロープトゥのみで営業を続けるところ(三井野原)、地元有志が雪遊び広場として整備して開放するところ(飯綱高原)など、「索道を有するスキー場」ではなくなっても、地域の憩いの場として存続するケースはあるだろうが、「地域外からの集客(集金)装置」として生き残れるのは、設備投資を継続できる資金力のある、規模・立地・知名度などに優れた一部のスキー場に限られ、当面、スキー場の休・廃止数は年間7~10程度の水準で推移していくのではないだろうか。



 

 

スノーヴァ羽島、11/30終了

 スノーヴァ羽島が11/30で営業を終了するという。これで残る通年営業屋内スキー場はスノーヴァ新横浜だけとなる。

 日本の屋内スキー場といえば、バブル期の象徴的にも語られるザウスだろうか。長さ約500m、幅約100m、高さ約80mは当時世界最大、他の日本の屋内スキー場は長さ60~120m、幅30m程度、高さ10m程度だから桁違いである。

 私が知る限り、日本に屋内スキー場は15か所存在した(同時に存在したのは2000年10月から2001年にかけてが最大で14か所)。1991年開業のスキーイングイン津田沼を皮切りに、ビッグエア福岡、93年にザウスから2000年10月のスノーヴァ足利まで、続々と開業した。

 前半は空前のスキーブームを受けてだろうが、90年代末は急激にスキー客数が減っている。それでも通常のスキー場の新規開設も2003年まで続いたように動き出した計画を止めるのは難しいのだろうし、あるいはレジャーの安近短化もあったから屋内スキー場はいけるという読みもあったのかもしれない。

 しかし、1997年に終了したスキーイングイン津田沼は事情が違うとしても(屋内スキー場システムのソフト面の研究とデモを兼ねての営業)、2001年のスノーヴァ板橋から続々と終了していく。最後にオープンしたスノーヴァ足利などは2002年6月にわずか1年8か月の営業で幕を閉じている。

 2012年にアクロス重信が終了して残り3か所になったところで落ち着いたが、昨年3月にスノーヴァ溝ノ口、今年11月にスノーヴァ羽島が終了し、残るスノーヴァ新横浜空調機器の老朽化で維持が困難になってきているようなので(減価償却が終わってランニングコストは賄えても、大きな投資をするだけの利益はでていない)、そう長くは続かないだろう。

 羽島は1998年12月オープン、溝ノ口と新横浜は1999年11月オープンと同時期であり、溝の口も羽島も終了の主要因は、客数減よりも空調機器の老朽限界の方が大きいのではないか。

 世界的には、中東産油国や中国だけでなく、ヨーロッパや北米でも屋内スキー場は増えているという。皆川賢太郎氏は「やり方次第で日本でも可能」であり、「スキー産業復活のために一年中滑れる環境が必要」と前向きだったが、昨秋のSAJ理事解任(再任されず)以降、動静は聞かれない。

 競技引退後、SAJ理事就任の前に始めた「スキー未来会議」も、SAJで競技本部長にもなって忙しくなったからか、2017年の第3回を最後に開催されていない。今のコロナ禍のなかでリモートで開催するのも難しいのかもしれないが、SAJを離れたからこそ、またこちらに力を入れて、屋内スキー場の実現も含めて動いていってほしい。

 その屋内スキー場に自分が滑りに行くかはともかく、日本でも大型屋内スキー場が持続可能であるなら、みてみたい。

Mt.乗鞍売却検討報道に思う

 「乗鞍スノーリゾート売却検討」という記事が出て、運営会社が「今後の方針について」をホームページに掲載している。

 「地元のりくら観光協会松本市、長野県、環境省の方々と協力しながら、最後までお客様をお迎えする体制をとっていきたいと思っております。」

 一見「頑張ります」宣言のようにも見えるが、「最後」とはいつのことか。破産手続きの開始を宣告すれば、そこが運営会社の「最後」だろう。親会社100%出資の運営会社を清算することに法的な問題はなく、明日宣告するかもしれない。

 「観光協会、市、県、環境省と協力しながら」というのは、これらの地元や自治体・政府の援助がなければ立ち行かずに「最後」になります、というある種の脅しのようにも読める。

 当初の運営は松本市出資の第3セクターだったが、2011年9月に債務超過清算。借入金約14億円を切り離し、新たな事業継続会社として「のりくら総合リゾートサービス」を設立し、ここにマックアースが資本金1000万円の全額を出資することで、実質的な運営はマックアースとなった。

 この年は震災以降は閑古鳥が鳴いてシーズンを終えたので、それで見切りをつけたのかもしれない。しかしこの後、震災をきっかけにレジャー消費が盛り上がり(モノの購入より体験価値重視)、しばらくは降雪にも恵まれてスキー客数は4年ほど下げ止まりから微増の様相をみせることになる。

 このタイミングで急拡大したのがマックアースで、この2011/12シーズンは乗鞍のほかに北志賀よませ、ユートピアサイオト、2012年2月には現在も経営の屋台骨であろう、高鷲スノーパーク・ダイナランド・ひるがの高原の経営権も取得している。

 マックアースの拡大は2015年まで続くが、2015/16シーズンの記録的雪不足で拡大は止まり、16/17シーズンも前年ほどではないにしても雪に恵まれなかったことで、休業・売却・指定管理の解除などが増えていく。その「マックアース大放出」のピークが2018年で、乗鞍もここで手放している。

 この年は、箕輪・乗鞍・さのさか・エコーバレー(とヤナバ)を太陽光発電事業などを手掛けるブルーキャピタルに、チャオ御岳を旅館プロデュースなどを手掛ける優福屋に売却(譲渡)し、おんたけ2240の指定管理者をゴルフ場経営などを手掛けるアンカーにバトンタッチしている。

 スキー業界が斜陽化して20年以上。一部のアクセスのよいところや外国人観光客に人気のところは賑わっているが、圧倒的多数のそれ以外のスキー場はずっと青息吐息。右肩下がりのスキー客数がほっと一息ついたタイミングで急拡大したマックアースも、ある程度のコスト削減ノウハウはあって平常時の延命はできたとしても、よくてギリギリ黒字であろう中小規模スキー場に継続的に設備投資していくほどの資金力はなく、抜本的な再生はできなかった。

 そのマックアースが匙を投げた案件を、スキー場運営は初めての異業種が買う。捨てる神あれば拾う神あり、とも言えるし、異業種だからこそ見える勝ち筋ややり方というのもあるのかとも思ったが、タダ同然の出物によく考えもせずに飛びついたのでなければいいがと懸念もした。

 結果は、優福屋はチャオを5月に買って、夏営業をしただけで運営放棄と最悪の状況。ブルーキャピタルは、さのさかのセンターハウスやホテルに設備投資するなど前向きだったが、雪不足に加えてコロナ禍で瀕死といった感じ。

 コロナ禍の2020/21シーズン、さのさかは地元の協力(おそらくは冬期従業員のコロナ対応宿泊場所の確保)を得て営業したが、エコーバレーは休業したうえで来季以降も数年間は営業しない可能性を示す(地元には「その後は必ず営業する」と説明したそうだが)など引き気味で、乗鞍は営業はしたが売却を検討となった。

 乗鞍の客数(3月末まで)は、2012年の7.8万人のあと、8.5万、8.6万、7.5万、8.6万、8.8万と推移したところでマックアースが手放し、7.5万、6.6万、そして今シーズンは4.8万人となっている。ここ2シーズンは、2015/16シーズンを超える雪不足にコロナ禍と想定外だっただろうが、買収1年目から雪不足の2015/16並みのおそらく過去最低なのは、宣伝力や共通シーズン券の有無という「マックアースとの差」か。

 どういう戦略と見通しを描いていたのかは分からないが、結局はそもそもの見通しが甘かったのではないかと思わざるを得ない。(一方で、マックアースの見切り時は正しく、都合よく買い手が現れてくれて助かったといえそう)

 とはいえ実際問題、運営会社の努力だけで何とかなる状況ではないだろう。地元や自治体はどう考えていて、どれだけの覚悟があるのか。公費で支えるにしても限界はあり、大規模更新の費用は出せないとなると、いずれは設備寿命とともに諦めざるを得なくなる。

 地域外からの集客の少ないローカルゲレンデは、特に町村合併によってローカルゲレンデを複数抱えることになった自治体では、閉鎖や集約に進んでいるところがほとんど。

 潰すにはあまりに影響の大きいところ、例えば王滝村などは、おんたけ2240がなければ村が成り立たないとばかりに支え続けているが、そんなところは稀だし、指定管理を10年契約したアンカー(運営は子会社の王滝ツーリズム)だって、ここまでの3シーズンは迷走状態で冬も冬以外も目立った成果は見られず、いつまで続けられるかは分からない(親会社が赤字補填し続けられるほど儲かっていれば別だが)。

 「スキー場がないと食べていけない」という地元の有無という点では、チャオ御岳は地元がないだけまだ諦めやすく、そういった地元を抱えるおんたけ2240やMt.乗鞍は「重い」と言えそう。

 松本市在住なら、距離と規模感においてMt.乗鞍は野麦峠と並んで有力な候補となり得るが、もう十数kmで白馬に行けることを考えると微妙。選ばれる理由は「空いてるから」になりそう。それも松本市在住ならであり、遠方からの宿泊客の需要はすでにほとんどないのではないか。

 それでも雪に覆われる冬場に数万人の来客があるかないかが地元にとって大きいのは間違いないが、松本市にとってMt.乗鞍が財政援助するほど重要かどうか。結局は、スキー場を維持することで得られる便益がいくらで、スキー場を維持するために地元が負担可能なコストがいくらかということになるだろう。

 来シーズンを迎えられずに終わるということはなかったとしても、先行きは相当に厳しそうだ。

来シーズンこそGoToトラベル

 首相肝いりであれだけ熱心だったGoToトラベルも、第3波での年明けの2回目の緊急事態宣言以降は、さすがの菅政権も触れなくなった。

 もともとが「感染が収束したあとの景気刺激策」であり、ワクチン接種がある程度いきわたってから行うのがスジのもの。そういう点で、今年の秋以降に実施するのが正しい。GoToなんかなくても、感染が収まればリベンジ消費的に旅行は活発になりそうだが、予算はすでに確保してあるのだから再開は間違いない。

 内閣支持率を維持し、秋(予想)の衆院選で勝利するためにも、首相はワクチン接種拡大に必死。高齢者への接種がほぼ完了すれば、新規感染者が増えても入院者数や死者数はこれまでより増えなくなり、病床逼迫や医療崩壊は起こらなくなるだろう。

 「1日100万人接種」は、高齢者への接種を7月末に完了させるために必要な数字を逆算したに過ぎず、実現可能かどうかの根拠はないスローガンでしかないようだが、これが実現して継続すれば、9月中に人口の半分が接種済みとなり、年内に全員の接種がほぼ完了する計算。「希望者への接種を10月か11月に完了」という首相発言も1日100万回を維持することでという計算に違いない。

 新規感染者が増えても入院率が大きく下がることで病床逼迫のリスクが低下するなら、この夏にでも景気刺激に舵を切ってもいいはずだが、選挙を前にした状態では目先の景気より感染者数抑制が(支持率回復に有効として)優先されるだろう。

 選挙は自民党総裁選前、9/7解散の10/3投開票が有力といわれている。となると、盆あたりで感染がすっかり収まってない限り、9月からのGoTo再開はないだろう。GoTo再開は衆院選後となって、早くて10月下旬となるのではないか。ワクチン接種が順調に進んでいれば、接種済みが過半数を超えて、希望者全員への接種完了も見えているはずの頃だ。

 10月下旬なら秋の観光(紅葉)シーズンにも間に合うが、制度の再設計も含め、選挙からそんな短期間で実施にこぎつけられるものかどうか。準備に手間取れば冬からになってしまうが、一般的な観光地には閑散期となる冬がメインというのは、観光業的にはむしろよいこと。特にスキー業界的にはもってこい。

 補助の内容が変更になるのは確実だろう。高級宿から埋まるだの週末や連休は密になるだの批判が多く、業界側からも改善要望が出ている。連休や年末年始は除外とし、助成率や上限額を下げることにもなりそう。助成率35%(割引25%・金券10%)、助成上限額1万円/泊あたりだろうか。

 来シーズン、「ワクチン接種で国内客は元通りだが、外国人観光客の戻りにはまだ時間がかかる」となれば、外国人比率の高くなっていたスキー場には打撃が続くが、国内スキー客的には「GoToで安上がりのうえに外国人客いなくて空いてる」という千載一遇のチャンス到来となるかもしれない。

 まずはワクチン接種が順調に進み、感染者・入院者が減ること、そしてしっかりと雪が降ることが重要だが、GoToトラベルをフル活用できるシーズンになることを切に願う。

1日何回リフトに乗るか

 札幌国際スキー場のデータを基に算出した、スキー客1人当たりの索道乗車回数は、3年平均で7.3241回/人になるという数字を先日紹介した。

 しかしこの1人1日リフト7.3回というのは少なすぎないか?ということで、特殊索道輸送人員数(通年;12月~3月の普通・特殊索道合計輸送人員数とほぼ同じ)と、県(長野・新潟・山形・岩手)が発表しているスキー客数から算出してみる。

 過去10年の平均で、長野県は10.4(9.6~10.9)回/人、新潟県は8.4(7.9~9.0)回/人、山形県は8.0(7.4~9.0)回/人、岩手県は5.4(5.2~5.9)回/人となっていた。岩手県、少なすぎる!

 他にちょっと古いデータだと、群馬県が10.1(9.2~11.0)回/人、宮城県が9.7(8.7~10.4)回/人、福島県が8.1(7.8~8.3)回/人、秋田県が4.9(4.6~5.4)回/人、青森県が4.9(4.3~6.1)回/人。秋田、青森は岩手よりさらに少ない!

 思ったより道県による差が大きいのは、首都圏(雪無し都市圏)からの客比率が高いところ(群馬、長野、新潟、宮城、福島)=ゲレンデ滞在時間が長く、地元民はそんなにやたらと滑らない(青森、秋田)ということかと思ったが、それだけでは山形が多く岩手が少ない説明がつかなそう。普通索道比率の違いもあるだろうが、それにしても地域差が大きい。

 これらのデータからは、札幌で7.3回/人というのはおかしくはなさそう。

 ちなみに、都道府県別データは北海道のみ支局ごとのデータが出ており、札幌市局が道全体の2/3を占め、札幌市局だけで群馬県を上回って3位に位置する。なお、札幌支局といっても札幌市だけではなく、ニセコ・ルスツ・キロロなども札幌支局。支局2位は旭川で、富良野トマム旭川支局。

 1992/93シーズンからのデータがある、長野・新潟・山形の時系列推移を見てみると、スキーバブル期は多かったのが15~20%程度減少傾向にあることがわかる。ただ、1997/98シーズン以降のデータがある岩手県に関しては、2000年前後を底に上昇し、2010年代以降は安定している。 

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 スキーバブル期は、全てが猛烈に混雑していたが、特にゴンドラやクワッドリフトの混雑が激しく、クワッドリフトと並行してペアリフトが設置されていること(設置順序でいうとペアリフトメインのゲレンデにクワッドを増設)も多かったため、待ち時間の短いリフトをたくさん乗る人が多かったから、1日の乗車回数が多かったものと推測する。

 あれだけリフト待ちがあったなら乗車回数は少なくなりそうな気もするが、1日10回程度であれば、ゲレンデ滞在時間(バブル期の方が朝一から並ぶ人や最後まで滑る人が多かった)や休憩時間の長さで調整されるだろう。

 一方、5回前後と低水準ながら最近の方が回数の増えている岩手県の増加要因は何か。地元客が減り、都市圏(首都圏・仙台)からの客比率が高くなっているからということだろうか。

 しかし地元客メインだとしても平均で5回以下とはこれいかに。地元民は、子供連れできて1回券で2,3回滑って帰る、という人が多いということか。

 比較的データの多い上記4県(長野・新潟・山形・岩手)合計での平均は9.5回/人(直近10年では9.2回/人)。札幌は7.3回/人ということで、都道府県別3位の北海道全体を7.3回/人、6位の福島の8.1回/人、8位の山形の8.0回/人を加えると平均はこれより下がる。

 しかし、4位の群馬、5位の岐阜、7位の兵庫、9位の滋賀、10位の広島は都市圏客比率の高いところであり、平均回数は9.5回/人より多い可能性が高い。

 岩手(5.4;索道輸送11位)・秋田(4.9;18位)・青森(4.9;20位)は、平均回数は少ないが索道輸送人員数も少ないため、加えても平均は大きくは下がらず、全体の平均回数は9.0~9.5回/人の範囲に収まると考えられる。

 これは実感としては少ないと感じるが、地元客やファミリー客の影響なのだろう。

 では、それなりに滑る人の平均はどれくらいなのか。

 ホワイトワールド尾瀬岩鞍が、ホームページでシーズン券保有者全員の利用日数と乗車回数を公表している。

 これによると、シーズン券保有者は約460人で、ざっとみたところ、ボリュームゾーンは、日数では10~30、回数では150~600あたり。1日あたりの回数は15~20くらいの人が多そうで、シーズン1000回以上の9人をみると、30.1回/日(1059回/35日)が最多。

 ゴンドラがある尾瀬岩鞍で緩斜面リフトばかりで30回ということもないだろうから、これはなかなかのものだと思う。15~20回というのは、ゴンドラばかりだとかなりのものだが、ゴンドラとリフト半々なら、まあそんなものなのかなというところか。

スキー場客数ランキング 2020/21シーズン(推定)

2020/21シーズンのスキー場別客数ランキングを推定してみた。

 1位 志賀高原    推定55~58万人(3月末;50.3万人)
 2位 ルスツ     推定40~50万人
 3位 ニセコヒラフ  推定30~35万人
 4位 サッポロテイネ 推定30~35万人
 5位 五竜・47    247,665人
 6位 上越国際    推定20~28万人
 7位 野沢温泉    推定23万人(3月末;20.2万人)
 8位 高鷲スノーパーク   推定23万人
 9位 札幌国際    推定20~25万人
10位 奥伊吹     221,675人
11位 安比高原    推定18~26万人
12位 鷲ヶ岳     推定21万人
13位 蔵王温泉    推定17~25万人
14位 神立高原    約20万人(4月末;19.9万人)
15位 かぐら     推定19~20万人(4月末;16.4万人)
16位 軽井沢プリンス 約19万人(3月末;18.9万人)
17位 八方尾根    184,526人
18位 スキージャム勝山   推定16~21万人
19位 ハンタマ塩原  推定15~22万人
20位 岩原      180,600人

 自己記録を更新した奥伊吹(10位)同様、都市近郊の日帰りメインのスキー場は落ち幅が小さいと考えられることから、高鷲(8位)、札幌国際(9位)、鷲ヶ岳(12位)、スキージャム勝山(18位)などが上位に躍進すると思われる。湯沢地区で落ち幅の小さかった神立高原(14位)も同様。

 前回記事の過去10年のだいたいのランキングと比較すると、20位圏内の顔ぶれという点では、札幌国際・奥伊吹・神立・ジャム勝がランクインし、2位の苗場(12.2万人)と13位のガーラ(約15万人)、17位の舞子(推定14~21万人)、18位の栂池(14.1万人)が消えている。

 順位変動の最も大きいのは30位にも入らないであろう苗場(30ランク以上ダウン)で、過去10年平均では13~19万人で35位あたりの奥伊吹(25ランクアップ)、そして同じく35位あたりの神立(20ランクアップ)が目立つ。あとは、札幌国際(通常推定20~27万人)が13ランク程度アップ、高鷲が11ランクアップ、八方が9ランクダウン、ガーラは10ランク以上のダウンか。

 来シーズンは、外国人観光客比率の高かったスキー場の苦戦は続くだろうが、ワクチン接種がいきわたることで県境をまたいだ移動の自粛を言われることもなくなり、近場優位はそれほどでもなくなるだろう。

 苗場が定位置の2位まで戻るかは見通せないが、トップ5くらいには戻るのではないか。安比蔵王もトップ10に戻り、高鷲・札幌国際・奥伊吹のトップ10陥落が濃厚と思われる。

スキー場客数ランキング(だいたい)

 19/20シーズンは異常雪不足、20/21シーズンはコロナ禍で、スキー場毎の客数変化に大きな差が出て、ランキングも大きく変動していそうだが、この2年を除いた過去10年ほどのおよその数字から、だいたいのランキングを作ってみた。

 1位 志賀高原    90万人前後
 2位 苗場      70~80万人
 3位 ルスツ     推定50~60万人
 4位 ニセコヒラフ  推定50万人前後
 5位 五竜・47    40~48万人
 6位 上越国際    推定40~46万人
 7位 安比高原    32~48万人
 8位 八方尾根    38~43万人
 9位 野沢温泉    35~42万人
10位 蔵王温泉     34~41万人
11位 かぐら      33~37万人
12位 サッポロテイネ  推定31~39万人
13位 ガーラ湯沢    30~33万人
14位 岩原       26~33万人
15位 軽井沢プリンス  25~33万人
16位 ハンタマ塩原   推定25~33万人
17位 舞子スノーリゾート   推定25~32万人
18位 栂池高原     25~28万人
19位 高鷲スノーパーク    推定25~28万人
20位 鷲ヶ岳     推定23~27万人

 以下、札幌国際、石打丸山竜王、菅平、スキージャム勝山、尾瀬岩鞍などが20~25万人で続く。

 13/14シーズンまでは苗場が100万人を超えるなどして1位だったのだが、暖冬少雪の影響なのか近年の減少幅が大きく、14/15シーズン以降は志賀高原がトップ。

 ルスツとニセコは近年のデータがなく、特にルスツは10年前の60万人というおおさっぱな数字しかないのだが、近年の雪不足期間は北海道の特に札幌支局ではむしろ増加傾向にあるので、その頃の数字と大きく変わっていないものと推定した。上越国際も近年のデータが少ないが、湯沢町のスキー場と同様の推移として推定。ハンタマ、舞子、高鷲、鷲ヶ岳に石打丸山、ジャム勝、尾瀬岩鞍も近年分はザックリ推定。

 だが、サッポロテイネと札幌国際については推定方法が異なる。

 「スノーリゾート推進に係る基礎調査報告書」(令和2年3月調査:札幌市経済観光局)に、「札幌国際スキー場のデータからリフト利用延数(2018年)を利用者(2018年)で除した利用者1人当たりのリフト利用延数 7.17803(a)を算出」し、「各スキー場のリフト利用延数を除して、利用者数を算出」という推計が用いられており、どうやら札幌国際についてはどこかにデータがあるようなのだが、見つけられず。

 2017/18シーズンの札幌国際のリフト延利用数は1895(千回)で、(a)で割ると264,000人となり、確かに報告書のグラフ上も「264」(千人)となっている。だが、この報告書のデータでは16/17,17/18とも243(千人)となっているが、リフト延利用数を(a)で割ると249と252になる。

 サッポロテイネの数字はすべて(a)で除した値と一致したが、札幌国際については元データを用いているようで、この元データから1人当たりリフト回数を計算すると、16/17シーズンは7.3416回/人、17/18シーズンは7.4527回/人となり、この3年の平均は7.3241回/人となる。サッポロテイネと16/17シーズン以前の札幌国際については、この7.3241回/人をもとに算出した。

 2020/21シーズンに関して言えば、苗場が12.2万人でトップ20からの脱落は確実(昨シーズンは31.9万人でおそらく9位)な一方で、奥伊吹が、3シーズン前・2シーズン前の18万人台から昨シーズンは雪不足で5.8万人まで減ったが今シーズンは過去最高更新の22.1万人でトップ10入りの可能性もある。

 22.1万人以上が確実なのは、志賀・ニセコヒラフ・ルスツ・テイネ・五竜/47くらいで、安比・野沢・札幌国際・蔵王上越国際あたりが上回るかどうか。高鷲スノーパークと鷲ヶ岳も、もしかすると奥伊吹を上回ってトップ10入りしているかもしれない。

 近年でも35万人程度は必要だったはずのトップ10が22万人で入れそうというのは、やはり今シーズンは6割程度の客入りだったということか。