皆川氏の発言:選手強化-2

(前回から続く)

 ここで「今まで流れなかった強化費」と言っているのは、「無駄な経費ばかりかかり」から繋がるのだろうけど、皆川氏が言うと「アルペンに流れてこなかった」という、メダル有望種目に重点配分とする方針に対する恨み節にも聞こえる、というのは考えすぎだろうか。

 皆川本人の言葉ではなく記者の文章として、

”競技人口の多さや付帯産業への波及効果、他種目へのコンバートの可能性、興行に適しているかどうかなどを総合的に判断し、「全体の『経営』の観点からサポートする概算を立てている」という。メダルの取りやすさという近視眼的な見方だけでなく、「投資(強化費)の回収」といった複眼的、長期的視野でも強化を捉える。”

ともある。

 要点は「次のオリンピックでのメダル」という短期だけでなく、より長いスパンでみていくということだろう。皆川自身「4年で回していくというのは短期的な話。その次のところがやっぱり本当のターゲット」と言っているし、次でメダルなんて場当たり的なことしかしてなければジュニアが育たずに、どこかで重点強化する選手自体がいなくなってもおかしくないのは確かだろう。

 だが、ジュニアの競技人口はまだまだアルペンスキーが多いだろうし、スキーでいえばフリースタイルの選手のほとんどはまだアルペンからの転向組だろうから、その考えが正しかったとしても、それを皆川氏が言うと、結局アルペンに強化費を回すための口実ではないかと勘ぐられないだろうか(これも考えすぎ?)。

 なお、個人的には、興行への適性はハーフパイプの方が上では?と思ったりもする。

 実際のところは、何の情報をどう共有して、それをどう判断して、どう強化費配分に反映するか、難しいだろう。情報共有=見える化、となるかも、それで強化費が適切に選手に流れるかも(どうなら適切なのかも難しい)、それにより期待する成果を挙げられるかも、その仕組みのつくりも、その仕組みの適切な運営も、何もかもが難しいことだらけだ。

 そんなことは皆川氏も百も承知で、でも泣き言はいわず、困難だからこそ挑戦し甲斐があると考えて、できることから手を付けつつ、対外的には夢のある大きな話をするようにしているのだろうけど。

 「選手と連盟の信頼度を高める」「ピラミッド型ではいけない」は、これは4月に出た記事での発言だが、別にレスリングのパワハラ問題を踏まえたものではないと思う。皆川自身が選手時代に連盟に不信感を抱いていたり、ピラミッド型組織であることに不合理を感じていたのではないか。

 しかし、レスリング以降、アメフト、ボクシング、体操と続く、アマチュアスポーツにおける連盟(協会)や指導者と選手との間の不祥事をふまえると、一層重く響く。