ザウス的屋内ゲレンデについて -2

(前回から続く)

  最終年度で、営業キャッシュフローがほぼトントン、営業損益は減価償却費の20億円が赤字。最終年度は来場者70万人強だったらしい(60万人台とする情報もある)。最後の方はwebサイトに3800円の割引券が出ていたというが(正規は5400円)、駐車場や飲食やレンタルも含めた客単価が6000円とすると売上は42億円で、営業経費も同程度という計算になる。

 来客数のピークは開業3年目の1995年で102万人だったらしい(当初見込みは130万人だそうで大幅未達)。この頃は料金も5900円で、客単価も8000円以上あったのではないか。だとすると売上80億円で、営業経費は大きくは変わらないだろうから、営業キャッシュフローで40億円近い黒字、減価償却を含めた営業損益でも20億円近い黒字だったのではないか。

 98/99年あたりから入場者が徐々に減っていった(目に見えて減りはじめ、という情報もある)ということなので、減りだしはスキー場全体よりは遅めで、とすると10年間の総客数は900万人程度、総売上は600~650億円くらいか。それで営業経費が400億円、減価償却が定額償却で年20億円なら、営業した10年トータルでは減価償却込の営業損益でも黒字。しかし建設費は400億円らしく、150~200億円の回収はできない計算で、三井不動産の判断は正しい(そりゃそうか)。

 建設費400億円か。東京ドーム(1988年)が350億円、名古屋ドーム(1997年)が405億円というから、それらと同程度(大阪ドームの498億円、福岡ドームの760億円よりは安い)。ザウスは500m*100mで面積は野球場全体よりも大きいし、そんなものか。

 しかしアライリゾートの投資総額が500億円(ホテルも何もかも込)というから、ドーム球場に比べるとスキー場そのもの(造成、索道、センターハウス等)は安上がりに感じる。ドーム球場プロ野球興行だけで年間200~300万人の来場があるから、球場と興行主の取り分にもよるとはいえ、それだけかけても採算が合うのだろう。

 営業経費40億円というのはどうなんだろう。一般スキー場とゲレンデ面積当たりで比較すればもちろん莫大だけど、02年度に70万人というと八方並みの集客ということになる。八方は32万人まで減ったあと、近年はインバウンド効果で40万人前後を推移しているが、これで索道収入と運営経費トントン程度とすると、単価4000円として13~16億円程度。

 しかしそうだとすると、八方はピーク時は130万人というから、いくらゴンドラやリフトの新設や架替えで減価償却が高かったり、リフトの数が多かったぶん人件費が掛かるとはいっても、営業利益率50%以上のボロ儲け状態だったんじゃないかとなり、その時の利益はどうなったんだとなるが。

 八方のゴンドラなどを運営する白馬観光開発など、全部で8スキー場の運営に関わっている日本スキー場開発㈱の場合、全社経費が55~58億円程度。そこからすると、ザウス1つで40億円はやはり莫大か。(続く)