スキー未来会議 #1 -4

(前回から続く)

 「スノーリゾート地域の活性化推進会議」の第4回会議(2018年6月1日)で観光庁が参考資料として提示した「海外スキー市場に関するデータ整理」では、リフトが5基以上あるスキー場が中国に84箇所となっているが、これもあやしい。同会議での「中国スキーインバウンドについて」という資料によると、2017年、中国で索道のあるスキー場数は145箇所で、索道数は236となっている。リフト5基以上が84箇所との差が大きい。

 これはこれで索道数236は少なすぎるのではないかと思うのだが、この資料によると、索道のないスキー場が558箇所、スノーエスカレーターが1076基となっており、イメージ的にはこの数字の方が実態にあっている感じがする。

 ここまでスキー場数について書いてきたが、スキー場の数が日本が世界で2番目かどうかは、一ノ本氏の主張において重要な点ではない。

 日本では戦後、高度経済成長期のレジャー勃興期以降、スキー産業が降雪山間地域の冬季の収入源の柱になってきたことは確かだろう。それまで、農家は冬の間、養蚕なり炭焼きなり出稼ぎなりで凌いでいたのが、スキー場がそれらの代わりとなって家計を支えてきた地域・家庭は多いだろう。スキー産業が都市と地方の地域格差縮小に寄与していたのかもしれない。

 しかし、ブームは去り、レジャーは多様化し、スキー客はバブル期前の1980年頃の水準にまで戻った。高速道路網の整備により、スキー客以上に宿泊客は減少した。時代は大きく変わったと言える。地元が引き続きスキーで食べていくなら、時代の変化に応じて地元も変わらなければいけないだろう。

 一ノ本氏の「努力をして維持してくことが重要です」とは、そういった地元の変化対応を言っている、のかどうかは分からないが、おそらくは、スキー場事業者、自治体、地元住民のすべてに対して「努力」を呼び掛け、今あるスキー場を「維持」することを求めているのだと思う。

 観光庁の蔵持氏は、「スキー場の数は適正か否か」というテーマで続けて、「例えばバスだと需要を満たす満たさないにかかわらず、生活路線として必要であれば補助金が入ります。しかし、スキー場にたいしては…一切行っていません。バブル時代から見ると、スキー場が多い、お客さんが入らないと思いますが、今の時代に合った数が残っているのではないかなと思っています」と発言している。

 バスは「公共」交通機関として、生活に欠くべからざるインフラと位置付けられており、これとスキー場を同列に語るのはどうかと思う。それともこれは、スキー場は公共財であり補助金を投入して存続させるべき、という主張なのだろうか。

 また、直接に補助金としては投入されていなくても、かつて公営だったものを第3セクターに移管する時に、そしてその第3セクターが破綻した時に、あるいは指定管理者制度にして指定管理料として、税金が投入されているのが実態なのではないか。 

 自力で残れるところは残り、そうでないところは淘汰されて適正数になった、という主張のために、バスと違って補助金投入されていない、と前置きしたのか。(続く)