スキー未来会議 #2 -5

(前回から続く)

 スキー客が勝手に見つけ出した(埋もれていた)価値としては、バックカントリー(サイドカントリー)スキーがあるかもしれない。

 パウダースノーやシャンパンスノーといった呼び名で雪室の良さをアピールすることはバブル期からあったが、それはあくまで圧雪時の滑走感の良さを示すものであって、圧雪可能な斜面は基本圧雪されていた。非圧雪斜面とは不規則なコブ斜面を意味し、降雪直後の深雪にも特に価値は見出されていなかった。そこに価値を見出したのはニセコのオーストラリア人スキー客だった。

 最近では、通常は圧雪している斜面を降雪時は非圧雪としたり、スキー場エリア内にツリーランエリアを設定するなども増えている。初中級者向けの「ツリーランガイド」や「深雪滑走レッスン」があれば、「新たな価値提案」といえるかもしれない。

 クロススポーツマーケティングの中村氏は、スキー人口が最大で1700万人以上いたのはバブルだっただけとして、「レジャー白書において、サッカー・フットサル人口は約630万人、バスケットボールにおいては約400万人。それに対して、スキー人口は約700万人と、ある意味標準になったと捉えている。ほかのスポーツと変わらない人口になった中で、スキー・スノーボードが消費者にどのように向き合っていくのかが大事になってくる」と発言している。

 これらの参加人口は、1年間で1度でも実施したことがある人の数を、全国で3000程度のアンケート回答から推計したもの。同時に実施回数なども聞いており、産業界からすれば参加人口ではなく延べ人数(回数)で見るべきかと思うのだが、なぜか参加人口ばかりがよく引き合いにだされる。

 スキー・スノボに比べて、実施可能な期間も場所もはるかに多いサッカー・フットサルやバスケットボールと並べて、スキー・スノボも同規模であると語られるのは、スキー業界にとってはハタ迷惑なミスリードなのではないか。

 もちろん、バブル期の1700万人を想定した運営はすべきでないし、そんな業界人はいないだろう。700万人(調査対象年齢において参加率7%)前後で下げ止まるかも予断を許さないが、ひとまずその規模を想定して向き合うことが必要なのは確か。参加回数や1回あたりの使用金額を増えるようにすることを考えたり、その規模で持続可能な方策を考えたり。

 一方で、「今の700万人という参加人口は減りすぎである」と考えて、参加人口を増やす取り組みも必要だろう。参加人口も索道輸送人員数も、現在の水準は1980年前後の水準であるというのは、いかに時代が変わって経済環境や将来見通しも違えばレジャーも多様化しているとはいえ、「妥当・適切」ではなく「減りすぎ」と考えても、決して間違いとは言えないと思う。

 こうした会議では、楽観派と悲観派、夢を語る人と現実を見ろという人がそれぞれいて、会議全体で両論併記になっているということもあるので、一方の言葉だけ取り出して「見方が偏っている」と指摘するのはフェアではないのだろう。

 専門家を呼んで話を聞くというのは、その専門の立場からの、ある意味偏った考えを聞くということでもあるわけだし、ある程度偏っている方が面白いのも確かなのだが、個人的にはもう少しバランス感覚のよい考えを、そして具体的な話を聞きたい。

 現状を見据えつつ、ポテンシャルを想定すること。既存顧客の満足度を高めつつ、可能性を信じて市場の拡大に取り組むこと。維持と拡大を両輪にして業界の活性化を進めていくことを、具体的な成功事例・失敗事例とともに、メッセージとして明確に示してもらえたらと思う。