マックアース -5

(前回から続く)

 「ウインタースポーツの参加率」が35%というのは、いかにスイスとはいえ高すぎなのではないか。スキー場へのアクセスのしやすさは日本もスイスも世界屈指なのだとしても、高温多湿の気候だったり都市への人口集中だったりと、ウインタースポーツの参加に影響を及ぼしうる要因で、日本とスイスで大きく違うところも多い。日本も積雪山間地域での参加率は20%や30%あるのかもしれないが、西日本では望むべくもないだろう。

 旧来型のゲレンデ滑走だけで参加率を捉えると、スキーバブル期のピーク時で15%程度だったことを考えると、「ポテンシャル」だとしても20%は楽観的に過ぎると感じる。調査時の定義が日本とスイスで異なっているのではないかとも思う。

 「海水浴に行く」とは海辺に遊びに行くことを指すのであって、海で泳ぐことそのものを目的としている人は少ないように、ウインター”スポーツ”ではなく、ウインター”レジャー”の参加率として、「雪山に遊びに行く」人の割合ということなら、スイスなら35%あるのかもしれないし、日本でも(東日本に限れば)20%のポテンシャルもあるかもしれない。

 といっても、砂浜や波打ち際で戯れたり、ただボーっとするために海辺に出かける習慣はあっても、それを雪山に行ってする習慣は日本にはない。皆川賢太郎氏が観るスポーツとしてのスキー文化を日本に作りたがっているように、斜面を滑走はしないが雪山に行って遊ぶ(何もせずボーっとすることを含む)、という文化を作ることからしていかないといけないだろう。

 ところで、なぜ海辺には行くが雪山には行かないか。思いつくのは、日本では山岳国家である以上に海洋国家である(雪山に近い人より海辺に近い人が多い)、日本の冬はアルプスと違って雪が多い=天気が悪いからレジャーに不向き、寒くて天気が悪い時に外出したがる人は少ない、これまでの日本の夏の暑さなら外出に支障がなかった(冷房が普及するまでは屋内も屋外も気温は大きく変わらない)、などか。

 その海水浴にしても、レジャー白書によると、ピーク時の1985年には約3800万人いた参加人口が2016年は730万人に減っているという。ピークの数字はスキーの2倍だが、直近ではスキー・スノボとそう変わらない水準。スキー・スノボの「ピークの1/3以下」を上回る「1/5以下」への減少。2009年には1680万人だったのが2015年には760万人というから、震災でコト消費・レジャー消費が活発化しスキー・スノボ人口も底打ちかけたこの時期に6年で半分以下になるというのはタダごとではない。

 海水浴は日帰りがメインで産業としての市場規模は大きくないから、大きく論じられることはないのだろう。「海の家」の人は大変そうだが、スキー場以上に兼業比率が高く、かつ、依存度が小さいことで、致命的な影響ではないのかもしれない。(続く)