参加人口がそんなに重要か?

 皆川賢太郎氏がスキー産業の課題として「スキー人口の正確な把握ができていない」ことを挙げていることを以前に書いたが、ゴルフについても同様の意見がされていた。

 「1年でゴルフ人口3割減? レジャー白書の真偽を問う」というタイトルで、レジャー白書のゴルフ人口が2015年の760万人から2016年は550万人へと27%減ったことに対して、「そんなことがあるのか」という思いからの考察記事があった。

 参加率が10%を切るような結果では、7.6%(760万人)か5.5%(550万人)かというのはほとんど誤差の範疇といえるのだが、この記事ではそういう統計学的な考察ではなく、業界団体が「異議あり」と、そんなに大きくは減っていないことを示す別の調査の数字を示していることを紹介している。

 一つは総務省が5年に一度行っている「社会生活基本調査」で、それによるとゴルフ人口は895万人とレジャー白書より6割以上多い。レジャー白書は「ゴルフコースでのプレー」なのに対して社会生活基本調査は練習場でのプレーも含むというので、ゴルフをしない私からすれば「だったらそんなもんでは?」と思ったりするのだが、この記事の執筆者によると「だとしても345万人の差は大きすぎる」とのこと。

 もう一つは、日本ゴルフ場経営者協会が、ゴルフ場利用税の課税状況からまとめている「延べゴルフ場来場者数」で、税額からの算出なので確度が高い。これによると延べ8574万人で前年比201万人(2.3%)減とのこと。

 これらを基にゴルファー1人当たりの年間平均ラウンド数を算出すると、レジャー白書では15回、社会生活基本調査では9回となる。執筆者は「どちらの数字に信憑性があるかは、一目瞭然」と書いているが、ゴルフをしない私にはよく分からない。9回でも多いと感じるし、そもそも社会生活基本調査は練習場でのプレーも含むのなら、そのプレー人口で年間ラウンド数を算出するのは間違っている。

 執筆者は、ゴルフ人口が減っているのは確かであり、やるべきことは山積しているが、レジャー白書の数字を真に受けた一部のメディアが「ゴルフ消滅」の論調を展開し、さらに多くのゴルフ業界関係者も「深刻に受け止める必要がある」などと警鐘を鳴らしていることは「的外れの指摘」とし、ゴルフ界が主体となって独自の「推計値」を発表する時期にある、と提案している。

 このあたりの論調は、皆川賢太郎氏とほぼ同じといえそう。

 推計の方法として、1人当たりの年間プレー回数さえ分かれば、延べゴルフ場来場者数を割ることでゴルフ人口を推計できるとしているが、マーケティング的には参加人口よりも延べ人数、つまり、延べゴルフ場来場者数の数字があればまずはいいのではないかと思う。

 小売業でもサービス業でも、「客数」といえば普通は延べ数のことだろう。なぜそんなに参加人口にこだわるのだろう。レジャー白書が権威になりすぎている、あるいは、権威であるかのように扱いすぎなのではないか。

 世論調査などでもそうだが、サンプリング調査には誤差がつきものだし、±1ポイントの誤差といっても、選択率が5%なら誤差範囲は4~6%と、最大値と最小値で1.5倍にもなる。

 スキーの場合、キッズパーク利用者だったり、今後は滑る以外のアクティビティを広げていこうというなら、「有料サービス利用者数」のカウント・集計が必要になってくるだろうが、「滑る人」だけを相手にするなら、索道輸送人員数が指標としての確度が高いと思う。