皆川氏の発言に思う -9

続いて、スポーツくじ関連のウェブサイトでのインタビュー記事「希代の名スキーヤーが第二の人生を“スキーの未来作り”に捧げた理由」から。

 「日本のスキー界のルールに疑問を感じることもあり、当時、自分は正しいと思って競技の普及・発展を目指す選択をした。大きな組織でもっと良くできると感じたこともあった。現役を辞めた時、自分と同じ思い(もっと、スキー競技をメジャーにしたいという思い)をしている選手がいるのではないかと自分に問いかけた」「選手たちにとって正しいサポートがまだ足りないと思いました。それを改善するには、ルールを整備できる側にいかない限り難しい。上流から物事をきちっと変えないと、現場の一つひとつの問題を解決できないと思いました。」

 皆川氏は、ソチオリンピックに出られないと決まったことで2014年1月に引退を発表。その年の夏に「40歳までの3年」として技術選への参加を表明して、2015年3月の全日本決勝で13位タイ。2015年10月にSAJの常務理事就任し、技術選予選に参加して全日本決勝への出場権は得たけど欠場。3年目となる技術選には参加せず。

 SAJは競技本部と教育本部からなる。技術選への参加は、教育本部の活動について選手の立場で知るためのものだっただろう。引退してすぐ理事就任の打診があったがまずは技術選に選手として参加してということだったのか、理事の話はなかったけど将来的にSAJを中から変えるためにまずは技術選に選手として参加したらすぐに理事の話がきたのか、その順序は分からないが、スキー界における自らの知名度を活かしたセルフプロデュースに長けていると感じる。

 知名度があるからメディアからのインタビューもあるし、フェイスブックの利用やスキー未来会議の開催など、情報発信力や周囲を巻き込む行動力がある。歴史のある競技団体というのは、多かれ少なれ、旧態依然とした閉鎖的な要素があるだろうし、その中で短期間にあれこれ変えようとすると疎まれもするだろうが、組織のトップが味方についているのだろう。

 本人の発信情報しか見てない(見えない)ので、いい部分しか分からないのだけど、やろうとしていること、実際に変化の見えているところは間違ってないように感じる。

 

 「例えば、ワールドカップに関してモーグルは1大会で5,000万円、ジャンプは4,000万円弱で開催できます。ですが、当時のアルペンは3億4,000万円の事業。世界から30か国の選手が出てきて、日本にもこのくらいの競技人口がいるからと訴えても、日本のスポンサーにはなかなか響きませんでした。そうなると、大会開催のためにはこういった助成金(スポーツくじ)の支援がないと実際には難しかったですね」

 その金額差は何によるのか。参加選手数?賞金額?スピードスケートやフィギュアスケートのW杯・グランプリシリーズや世界選手権の開催費用はいくらなんだろう。

 

 「今は日本全体で、国のインバウンド観光事業としてのスキーの需要が高まっている一方で、学校の教育プログラムにおけるスキー授業は減っています。そうなると、国内ではスキーに対する親しみが減る中で、海外から多くの人が日本にスキーをしに来たとしても、スキーの環境下で働く人がいなくなってしまう。ワールドカップをやりたい背景には、『世界最高峰の大会を持ってきたい』ということはもちろん、それ以上に大事なのは教育と産業に関わる人を創出したいということです。だから、こういった世界大会は必要ですし、やっていくべきだと思っています」

 W杯の開催と、スキーの教育と産業に関わる人の創出。無関係ではないだろうが、「人の創出のために国際大会が必要」という理屈はピンとこない。”国際大会を運営するノウハウや運営者の育成”なら分かるが。

 スキー授業の減少の影響は、地味ながら確実にありそう。先生が大変だからなのか、保護者が消極的だったり反対だったりするのか。教える側の問題なのだったら、SAJでリタイアしたシニアにボランティアで協力してもらうことで教師の負担を減らすとかできそうだけど、行政がらみはまたいろいろとハードルが高そう。

 (続く)