高速道路のETC専用化の検討

 国交省が高速道路をETC専用とする方向で検討、とのこと。

 この見出しを見たとき、なぜか「有人ゲートの廃止か」と思ってしまったのだが、それだけではなく、現金不可というだけでもなく、「専用化」ということはETCがないと高速道路を利用できないということ。

 時期も何も未定で、ただ検討の方向性を明らかにしただけだが、役所が何の具体案もなくこんなことを言わないだろうし、逆にただ願望を口に出しただけならそれはそれで問題。まずは世論の反応をみるための観測気球の可能性が高いが、いけそうなら大体こんな感じで、という腹案くらいはあるのだろう。

 コロナ対策でっていうのは、あまりにも取ってつけたような口実。「料金所係員9人の感染が確認された」って、それ、本当に業務での感染?いや、逆に9人全員が業務外での感染だったら、それはそれで確率高すぎる気はするが、貨幣を通じた感染リスクがそんなに高いなら小売店での市中感染がもっと多いのではないか。料金所での対策が不十分だったということでは?

 コスト低減には有人ゲートは廃止した方がいいのだろうが、それはネクスコが考えること。といってネクスコの判断でETC専用にはできないだろうから、ネクスコ国交省に要望したのか。

 国交省としても、「コロナ対策」が取ってつけたような口実なのは百も承知で、「神風が吹いた!今がチャンス!」ということでの観測気球打ち上げか。

 ETCの利用率は93%という。これを高いとみるか、「まだ7%もいるの?」とみるか。データをさかのぼると、2007年3月の65.9%から2010年3月の83.7%までは年率6ポイントほどで順調に増え、震災の影響か一度減るが、2012年3月には85.6%と増加基調に戻り、2013年3月の87.9%からは増加ペースが鈍って、7年かけて2020年4月に初めて93%を超えている。

 問題は当然、クレジットカードを持たない(持てない)がゆえにETCカードを持たない人の利用をどうするかだが、ただ有人ゲートの廃止というだけなら料金徴収機を置けば済む話で、コロナ対策というならそれで十分のはず。そういう意味では、なぜ専用化したいのか、その本当の理由が気になる。

 そもそも、今も、クレジットカードを持たない人向けにデポジット方式によるETCカードの発行制度はある。使い勝手が悪くて利用者はほとんどいなさそうだが、これの使い勝手をよくするというのも専用化の手段の一つになるだろう。

 日本のETCは、料金収受以外にもあれこれできるように機能を盛り込んだために、諸外国に比べて車載器の値段が高価になったという話を以前に聞いたことがある。実際、ETC2.0をみるかぎり、必要な機能とも車載器のコストに見合っているとも思えないし、ETC2.0でなくても取付費込だと1万円するとなると、たまにしか使わない人には微妙。

 アメリカでは、カメラでナンバープレートを読み取る方式のため車載器不要のところもあるというし、シンガポールでは車載器搭載が義務付けられているという。自動車保有者ならクレジットカード保有が当然であろうアメリカや、都市国家であって自家用車はぜいたく品で自動車輸入関税もバカ高いシンガポールと日本を同列に論じることはできないにしても、日本では車関連の税金も高いし、役所の利権やら的外れな政策やらでいちいち高コストになってしまっているのではないかとの疑いが晴れない。

 なぜETC専用にする必要があるのか、したいのか、まずはそこを明らかにしてからにしてほしい。