八方活性化計画、始動

 八方の新ゴンドラが2023-24冬の稼働を目指して整備される方針がスキー場運営会社で固まったとのこと。投資規模は20億円で、観光庁からの補助金を活用するとのこと。

 名木山-兎平間に8~10人乗りを整備ということで、山上駅舎は今の位置のままだろう。現在の麓駅を名木山へと南東方向に400mほど移設し、山上駅の位置はそのままかと思われる。

 「白馬八方尾根活性化マスタープラン」が策定されたのが2015年12月と、インバウンドが盛り上がり、超暖冬・雪不足に見舞われる前で比較的雪に恵まれて、マックアースがもてはやされていた頃。

 「前提として、現在二社で運営している索道事業者の体制について~見直し(=一山一社化)が必要」という「前提」が成立せず、このままお蔵入りしてインバウンド頼みのジリ貧に陥るかと思っていたら、「「目玉」となるもの~具体的には、一山一社化の上でのゴンドラ移設も含めた、名木山ゲートの整備がまずは最優先」としていたその「ゴンドラ移設」が、動き出したということ。

 マスタープランでは「整備のタイミング案」として、「名木山周辺の整備に着手(第一期:2017-18年~)」→「需要の動向を見定めつつ高標高域の整備を実施(第二期:2020年~)」→「国際・咲花の充実化(第三期:2025年~)」とあり、第一期の具体的項目として「スキーセンター、駐車場の充実」「ゴンドラの移設」「周辺の再開発」が挙げられていたから、3~5年遅れでのスタートになる。

 これを報じたサイトでは「スキー場運営会社」と書かれていたが、上記のマスタープランの抜粋にもあるように索道会社だけで2社あって、駐車場やらを含めて八方尾根スキー場をどこか1つの会社が運営しているわけではない。

 マスタープランを策定した「推進委員会」には、索道2社の他、スキースクール、八方尾根観光協会一般財団法人八方振興会に八方区・八方口区という地元も名を連ねており、ゴンドラの麓駅を白樺から名木山に移して、もちろん移すだけでなく名木山エリアを玄関口として開発・整備しようというのだから、地元の協力は欠かせない。

 動き出したのが「一山一社化」に動きが出たからなのか、白馬観光開発㈱(日本スキー場開発㈱)が単独で進めるのかは、現時点では情報がない。

 八方全体を効率よく再開発していくには一社体制であるに越したことはないが、ゴンドラ移設と名木山再開発だけなら白馬観光開発㈱と地元だけで進められるのだろうし、とにかくできるところから手を付けて、うまくいけばその先にも繋がるだろう、ということなのかもしれない。

 新ゴンドラの麓駅舎の位置は、今のスキースクールの北側(白樺寄り)のスペースあたりだろうか。マスタープランでは「経済性を見ながら第3駐車場への延伸も検討」とあり、さすがにそれはないと思うが、その場合でもここなら直線上にある。

 そうすると、名木山の大壁や、リーゼンスラロームから白樺に降りるところの真上あたりを通っていくことになる。

 「未利用地に新たな情報センターや駐車場も作る予定」ということだが、スキースクールは情報センターに入るとしても、広い駐車場を作れるほどの未利用地などないのではないか。

 マスタープランには、名木山南ゲレンデからさらに南側に迂回するルートで「林道を活用した初心者コースを設定」とあり、「初心者スキー場エリア」として「村道からゲレンデ側の土地は、原則、「スキー場」として利用」とあるから、ジャンプ台にかけての道よりゲレンデ側にある何軒かは立ち退いてもらって、初心者エリアの拡充と駐車場にあてるのかも。

 「村道の一部を冬季閉鎖し、Ski-In/Out可能な面積を拡大」ともあり、「名木山は「リゾートの顔」となる可能性がある」「海外スキーリゾートの例を見ると、高級ホテルと付帯コンドミニアムがベースの中心となり」という記述からも、ゲレンデ直結の高級ホテルをもってきたい(誘致したい)という思惑もあるのだが、「地域内で慎重に検討を進める必要がある」「検討に値するのではないか」と推進委員会内でも合意は取れていないようす。

 もっとも「コンドミニアムの分譲益の充当により資金不足に対応させることができないか、今後議論を進めたい」と、積極推進派は具体論に踏み込んで前のめりがちな様子も見て取れる。

 ゴンドラと同時にどこまでできるのか分からないが、スクール・レンタル・レストラン・土産屋・更衣室に託児所なんかも入った、五竜エスカルプラザのようなスキーセンターと、それに隣接して大型バスの入れるゲレンデ直結の駐車場ができれば、というかむしろそれがメインだろうから、そこまで作ることで、これは大きく変わる。

 個人的には、人出が増えてゴンドラがさらに混むのは困りものだが、10人乗りになれば待ち時間はさすがに減るだろうし、名木山が便利になって人が集まって咲花・国際が空くのなら、それはそれで利用者としては穴場として有難い。GWの第3駐車場からゴンドラまでが、バスを待つのも歩くのも面倒だったので、これが楽になるのなら嬉しい。

 それに何より期待するのは第二期以降だ。

 3年後にはさすがにコロナも落ち着いて、外国人観光客も戻るだろう。名木山再開発で国内客も増えれば、第二期でパノラマのクワッド化とスカイラインのクワッド化が、さらには第三期で国際第1ペアのクワッド化が視野に入る。こうなると相当に快適になる。

 第三期は順調にいっても2030年以降だろうが、とりあえず動き出しはした。一度は集まって作ったマスタープランを全く無視するということもないだろう。気長に待とう。