滑走標高差

 趣味に深くハマると、関連する数字をカウントするようになる人も少なくないと思う。自分のその趣味との関りを数値化することで、その変化の様子を確認したり、他者との比較が可能になる。

 スキーでいえば、シーズンに何日滑ったとか、これまでに何か所のスキー場に行ったとかが代表的。

 どれだけ滑ったかが気になりだすと、滑走日数だけでなく、滑走量そのものも知りたくなってくる。

 滑走量を数値化する場合、累積標高差でみる人が多いと思う。今でこそGPSログで滑走距離も測れるが、距離はコースによって変わり、しかも正確なデータがあまりない(スキー場の公表値も分かりにくかったり怪しいものが少なくない)のに対し、滑走標高差はコースに関わらずリフトの標高差と本数で決まり、リフトの標高差は乗り場か降り場に表示されていることが多い。体力(疲労度)的にも、距離より標高差の方が体感に近い(同じ標高差でも斜度やバーン状況によるが)。

 「滑走量を可視化する」という点においては、skilineのデータサービスの存在は欠かせなかっただろう。特に、利用者の多い志賀高原が採用していたことが大きい。ここで初めてその上位ランカーの数字を見たときは衝撃的で、にわかには信じられなかった。

 1日の滑走標高の上位は20,000mを超え、シーズンの滑走標高上位は確か100万mを超えていたと記憶する。

 八方のゴンドラが600m強(正確には627m)ということは当時でも知っていた(志賀よりも八方の方がよく行っているのでこちらの方がなじみがある)。20,000mには32回。営業時間を8時間として、その間休憩なしで15分間隔いう計算になる。

 ゴンドラの距離は約2㎞で速度5m/sなら乗車時間は7分弱だが、下で板を外してから上で板を付けるまでとなると待ち時間なしでも9分近くかかるのではないか。そうなると6分で滑り降りてこなければならない。

 コース長は、グーグルマップで測ると、リーゼンスラローム経由で約2.2㎞。とすると平均22km/h。この速度自体は大したことない。フラットな中斜面を滑るぶんには遅いくらいだ。

 だが、ゴンドラ降り場からコースにでるまでのスケーティング、リーゼンスラロームコースの斜度、そこから白樺ゲレンデへのトラバースなど、あのコースを6分で滑り降りることを15分間隔で8時間ぶっ通しとなると、平日で空いていてバーンもほとんど荒れなかったとしても、尋常じゃない。

 しかし実際に滑っている人がいる。トイレ休憩くらいはしても食事休憩はせず、焼額第1ゴンドラ(標高差450m)を45本だとか、一の瀬ファミリークワッド(標高差312m)を65本だとかを滑って達成している。

 skilineのデータサービスがあったからこそ、某「20,000mクラブ」ができたのだし、自分自身、リフトが数本程度のスキー場に一人で行くときは、どのリフトを何本乗ったかを何となく数えて滑走標高差を算出するようになった。

 そして自分の滑走標高差を把握することで改めて、「20,000m」の偉大(異常)さを実感した。

 20,000mな人たちは、通常営業時間帯だけで20,000m以上滑るだけでなく、早朝営業やナイターでも滑っていたりする。別にアスリートというわけではなく、どうやらただ滑るのが好きなレジャースキーヤーらしいが、体力も気力も普通じゃない。

 週末オールナイト営業(22:30~24:00はゲレンデ整備のためリフト停止)の鷲ヶ岳スキー場でなら、6時から22:30まで16.5h滑って、1.5h休憩後に24時から17:45まで17.75h滑走も可能なのだろうか。

 そうなるともうスキー体力というより、ただの根性の領域だから、滑走標高差はともかく、どこかのyoutuberがライブ配信で挑戦したりしないかな。