芦別スキー場

 北海道の芦別スキー場が営業を再開するにあたってクラウドファンディングで資金を募っています。

 芦別スキー場は芦別市の所有で、2016/17シーズンまでは市が運営していましたが、一旦はこの年かぎりでの終了を発表。その後3シーズンは営業を続けましたが、市は再び2019/20シーズンでの運営からの撤退を発表し、指定管理者を募集しましたが、応募がなかったため昨シーズンは休止となりました。

 市としては指定管理者さえ現れれば営業にやぶさかではないようで(おそらくは廃止するとなると撤去費用がかかるため)、今年度も来シーズンの指定管理者を募集したところ応募があったため、来シーズンは営業予定となりました。

 指定管理者に応募して指定されたのは、㈱SUNFLAKEという、元SAJデモンストレーターで現在はプロスキーヤーである吉田勝大さんが代表を務める、主にスキーのオンラインレッスンを行っている会社です。

 芦別スキー場は、長さ1km・高低差180mの第1ペアリフトに沿った最大幅100mのコース(コース下部に長さ650m・高低差120mの第2シングルリフトあり)と、長さ580m・高低差150mの第3シングルリフトに沿った幅80mの非圧雪コースがありますが、第2リフトは以前から稼働しておらず、来シーズンは第3リフトの営業もないようです。

 それだけのコース長と高低差があればローカルゲレンデとしては小さくはないと言えますが、このスキー場目当てに遠方から客を呼べるものではありません。吉田氏が掲げる「ローカルであるからこそ通いたい。日本全国、世界中の方に、芦別スキー場は面白そうだから行ってみたい。そんな形で、多くの皆様に愛されるスキー場になって行きたい。」はあくまで見果てぬ理想であって、「旭川富良野十勝岳、また札幌方面へも動きながら様々なスキー場を楽しむハブのようなエリアとして、市内には芦別温泉スターライトホテルもあり宿泊滞在も可能」という紹介の方が(基本は地元への配慮だとしても)本音に近いかと思いますが、これも現実には相当無理があります。

 長野県などでは、スキー場がその自治体の冬の唯一の収入源であり雇用であることから、所有者である自治体が設備更新費用を負担した上でさらに指定管理者料を指定管理者に支払っている場合が多いようですが、芦別は指定管理料なしで設備更新も指定管理者負担と、芦別市としては「ないならないで構わない」というスタンスです。通年で営業できるものでもなさそうなので、あくまで冬の間のスキー場営業だけで黒字にできるなら、ということになります。

 リフト1,2基のローカルゲレンデで削減できるコストなど削減しきっていて、最低限の設備維持費用の捻出も困難になったから市が運営から撤退したのでしょうから、維持するためには設備を維持できるだけの利益を上げられるまでに売上を増やすしかありません。

 これが多雪地域なら、極論として、ターゲットをパウダーフリークに絞り込んで圧雪車をなくして常時全面非圧雪ゲレンデとして売り込めばコスト削減できますが、多雪でもなく地元のそれも子供が主要顧客であるようなのでやはり無理でしょう。

 費用をかけずに客数を増やすには、他にはない特色を持たせることかと思います。元デモのプロスキーヤーが経営するオンラインレッスンの会社が運営するのですから、やはり元デモによるレッスンを売りにするのかとも思われますが、講師の名前で客を呼べるのは一部の人気デモによる上級者向けレッスンだけですし、吉田氏自身、子供や初心者向けの普及活動への関心が強いようなので、特色づけも難しそうです。

 クラウドファンディングは寄付型で、目標額未達でも成立します。集めた資金は設備補修費用に使うということですが、目標額500万円には遠く及びそうもありません(現在63.3万円)。11月末までの募集なので、募集資金はあくまでプラスアルファであって開業準備は自己資金で進める計画でしょうし、寄付型で500万円集まるとはさすがに思っていないでしょうからクラウドファンディング自体は宣伝になればくらいのものかもしれません。

 準備が間に合わずにリフト営業を見送る可能性を示唆しているのは、資金的なことより時間や人材の問題かと思われますが、「スキー場のスタッフもYoutubeの視聴者様であったり、一般のスキーヤーとしての目線を持ち合わせている人材で構成してまいります!」というのは、通常は地元雇用やリゾートバイトで最低賃金レベルで賄うリフト係や雑用係も、無給とは言わないまでもできれば謝礼程度でのボランティア運営を考えているのかもしれません。(実際問題として下げられるコストはそれくらいでしょうし)

 これまでの客数・売上がどれくらいで赤字がどれくらいだったのか、㈱SUNFLAKEにそんな自己資金があるとは思えないですし大きな借入ができるとも思えませんが、1シーズン目からリフト営業して過去と同等の赤字が出ても2シーズン目も指定管理者に応募する(できる)のか。

 芦別スキー場が5年後もリフト営業されている確率は低いかと思いますが、そういったこちらの勝手な予想をいい方に裏切って、特色あるローカルゲレンデとして生き残れるように㈱SUNFLAKEさんに頑張ってもらえればと願うばかりです。