ひだ舟山アルコピアスキー場の廃止方針決定

 岐阜県高山市は、市営のひだ舟山アルコピアスキー場を来季限りで廃止する方針を明らかにしました。

 高山市には、町村合併前の2004年には飛騨高山、鈴蘭高原、原山市民と3つのスキー場があり、2005年の合併でひだ舟山アルコピアとモンデウス飛騨位山が加わって5つになり、2005/06シーズンを最後に鈴蘭高原が休止、2007/08を最後に原山市民が廃業となってまた3つになってからは落ち着いていましたが(他に旧高根村がチャオ御岳の運営会社に出資していたのを合併で継承)、これでさらに減って2つとなります。

 3つの市営スキー場はどこも赤字であることから整理の必要があるという話は以前からありました。2020年3月には、舟山アルコピアとモンデウス位山のいずれかを廃止する方針を示しており、それが舟山に決まったことになります。

 「相対的にゲレンデなどが狭く、施設が古い」「位山は全てが市有地であり、耐用年数が24年残るセンターハウス機能が中長期的に使用が可能」というのが舟山に決めた理由ということですが、幅広中緩斜面が特徴でファミリーや初中級者が多い舟山、中急斜面が特徴でポールトレーニングによく使われる位山と、それぞれ住み分けがされており、規模も客数も赤字額も大きな差がないことから、どちらかを選ぶというのは難しかったのではないかと思います。

 高山市からも「それぞれ地域からの愛着は深く、大きな差異を認められなかったが、コンセプトへの合致や効率性、将来負担経費の視点から選定した」と説明されているようです。

 舟山にも奥に急斜面はありますが、中急斜面を高速クワッドで回せてコース幅もコース長もある位山の方が使い勝手がよく、中緩斜面は位山にもあり(幅も長さも劣ってリフトも高速クワッドではなくペアになりますが)、初中級者やファミリーは飛騨高山スキー場の方にもどうぞということもありそうです。

 飛騨エリア(現在の高山市飛騨市下呂市)には、90年代後半には少なくとも19のスキー場があったはずですが、チャオ御岳を含めるとすでに11か所が休廃止となっており、舟山の廃止で残るは7か所となります。

 飛騨エリアでは2009/10シーズンが最後となった濁河温泉と白木ヶ峰以降、岐阜県全体でも2010/11シーズンが最後となったイトシロシャーロットタウン以降はしばらく休廃止はなかったのですが、2015/16シーズンの雪不足以降、しらおが2017/18を最後に休止したのをはじめ、チャオ御岳も今のところ2017/18が最後、揖斐高原と国見岳は2018/19が最後、白川郷平瀬温泉白弓が2020/21が最後となっており、これに舟山アルコピアが続くことになります。

 奥美濃の週末の混雑の激しさを見ると、もうちょっと混雑を嫌がった人が飛騨エリアに流れてもよさそうに思われ、そうなれば飛騨エリアのスキー場の存続にも希望が持てそうなのですが、存続するモンデウス位山にしても舟山の客がすべてやってくるわけではないでしょうし、厳しい状況はまだまだ続くのだろうと思います。

 奥州市にしても高山市にしても、赤字スキーが複数あるから数を減らす → 距離が遠くなった人は足が遠のきスキー客総数が減るだけで残ったスキー場の客が増えるわけではない → 残ったスキー場も黒字化できずなくなる、ということになりそうで、日本はスキー客数の減少に比べてスキー場数が減っておらず競争過当なのだとも言われますが、豪雪山岳国の割には欧米に比べてスノースポーツを行うことへの関心が低いということなのだろうと思います。

 近くにスキー場がある雪国の人はそれなりに行ったとしてもそこがなくなれば行かなくなり、長期滞在リゾートの文化・習慣はなく、長期的には国際ブランドの大規模スキー場と都市部から日帰り圏の中規模スキー場しか黒字経営の継続はできないのではないかとも思います。

 奥州市高山市に限らず、小規模なローカルスキー場は、自治体の財政支援なくしてはほぼ成り立たないのではないでしょうか。生き残れるのは、上記のような広範囲から集客できるある程度の規模や特色のあるスキー場か、雪国における地元住民の運動施設として自治体が支えるローカルスキー場、ということになりそうです。

 索道設置(最後の更新)は80年代半ばから90年代前半というところが多く、ほとんどは既に30年を経過し、ここからの5年、10年で40年経過という索道がどんどん増えていきます。奥州市の越路スキー場もペアリフトが故障してリフト無しでの営業となっているように、機械にしろ電気設備にしろ搬器にしろ、修繕で使い続けることが難しくなってきます。中小規模のローカル・セミローカルのスキー場を中心に、設備投資する余力のないところが続々と休止・廃止されていくかと思われます。

 雪不足とコロナ禍の影響もあって、数年内にスキー場数が400を切るのは間違いなさそうですが、その先どこで下げ止まれるものなのか…。