リフト券価格の史上最大値上がり

 今シーズンはおそらく、日本の歴史上もっともリフト券価格上昇率の高いシーズンだったと思われます。

 全国169のスキー場のリフト1日券の価格を調べたところ、平均価格の上昇率は7.2%となりました。(基本的にナイターを含まない日中券で8時間券なども含む。個別券と複数スキー場共通券がある場合は基本的に共通券は含まないが、志賀高原は全山券のみカウント)

 2000年代前半から昨シーズンまでの上昇率が7.7%(税別)なので、1年で20年分の値上がりになったことになります。調査対象の73%のスキー場が値上げしており、値上げ額の平均は325円(昨シーズン平均4516円→4841円)でした。値上げしたスキー場の値上げ額だけを平均すると450円です。

リフト券価格推移

 値上げ額ごとのスキー場数を見ると、値上げしたなかで最も多い値上げ額は500円(28スキー場)で、次いで200円(22スキー場)でした。最高額はルスツの2300円(6500円→8800円)、次いで谷川岳天神平の2000円(4000円→6000円)です。上昇率は天神平が最大です。

 元々値段の高かったスキー場ほど、値上げ額はもちろん、値上げ率も高くなっています。昨シーズンの価格が3000円台だったスキー場の値上げ率が5.6%だったのに対して、4000円台は6.5%、5000円以上は9.9%でした。5500円以上だと10.5%ですし、6000円以上だと12.7%にもなります。

 価格の二極化が進んでいるということであり、標準偏差を見ると、2000年代前半は440円前後で平均価格に対して11%ほどだったのが、昨シーズン時点でも617円の13.7%に広がっており、今シーズンは798円の16.5%と大幅に拡大しています。

 標準偏差の+1単位までは「標準的」、それを超えると「ちょっと高い」、+2単位を超えると「かなり高い」とすると、

 2000年代は「4500円までが標準的、5000円はかなり高い」だったのが、

 昨シーズン時点で「5100円までが標準的、5800円以上かなり高い」となっており、

 今シーズンは「5600円までは標準的、かなり高いのは6500円以上」ということになります。(「かなり高い」スキー場数は概ね一桁です)

 この二極化に関しては、これまでがスキー場の規模の違いに対して価格差が小さすぎたということかもしれません。ブランド力・人気があるスキー場が積極的に大幅な値上げをすることであるべき健全な状態に近づいているとも考えられそうです。

 値上げの要因は、設備更新先送りの限界、コロナ禍による客数減、エネルギー価格の高騰や人件費上昇といくらでもあり、これらが重なっての大幅値上げになったのだと思われます。

 ニュースでは昨今のエネルギー価格上昇では数百円の値上げでは追いつかないというスキー場関係者のコメントもありましたので、値上げを見送った3割弱のスキー場や、値上げ額300円以下までを含むと過半数になるスキー場にとっては特に、来シーズン以降も値上げが続くことも考えられます。

 2010年代半ばにニセコが全山1日券の価格を毎年大幅に引き上げていた時(6000→ 6400→6900→7400)、狙ってなのかどうなのか、東京ディズニーリゾートの1日券(ワンデーパスポート)とぴったり歩調が合っていました。その後、TDRは時期による変動価格を細かく大幅にして7900~9400円となり、ニセコ全山は今シーズン8500円(ハイシーズン)でした。

 ニセコヒラフはエースフォーをゴンドラに架け替えますし、ビレッジやアンヌプリも設備の更新需要はまだまだこれからでしょうから、TDRの料金をみて「まだもうちょっと上げられる」と思っているかもしれません。あるいはルスツのように国内客に見切りをつけたかのような値上げに走るか…。