国際競争力の高いスノーリゾート形成の促進に向けた検討委員会

 「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」の報告書での提言を受けるように、2020年度から「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」という補助金制度が始まります。地域単位で募集し、投資額の最大半額を補助するものです。これは今も続いていて2023年度も募集されており、そろそろ採択結果が各自治体に通知される頃合いです。

 2020年度と2021年度は18地域、2022年度は10地域が採択されていますが、実数では20地域となります。うち9地域は3年連続で採択されています(札幌、キロロ、安比・八幡平、蔵王、湯沢、妙高、志賀、白馬、郡上)。それまで2年連続で選択されていた大雪、たざわ湖、夏油、塩原、野沢、斑尾は、おそらく、申請はしたけれど予算の関係か2022年度は採択地域数が大きく減ったことから対象から外れたのではないかと思われます。上記以外では、ルスツ(2021年度)、会津磐梯(2020年度)、米原(2021,2022年度)、神鍋(2020年度)が採択されています。

 この補助金助成事業も3年が経過したということで、2022年12月から2023年1月にかけて「国際競争力の高いスノーリゾート形成の促進に向けた検討委員会」が開催されました。「これまでの取組における成果と課題を整理するとともに、より効果的な支援のあり方を検討する」ためのものです。

 この検討委員会では、「国際競争力の高いスノーリゾート」として、スキーを目的として訪日する欧米豪のスキー上級者(の特に富裕層)をターゲットとした「カテゴリー1」と、観光の一部に雪遊びを組み込むアジアからの観光客をターゲットとした「カテゴリー2」に分けて、補助金事業としては投資額の大きくなるカテゴリー1に重点を置くこと、そのためにカテゴリー1の基準を明確にすることが行われました。

 オーバーツーリズムの問題などもあって国の観光政策自体がインバウンドの人数から質(消費額)重視に移行していること、補助金事業も費用対効果が問われること、どこが弱くてどこに集中的に投資すべきかを明確にするのは経営としては当然であり、大学を「グローバル」と「ローカル」に分け補助金にメリハリをつけるようにしたのと同じ考えです。

 委員会では、これまでの振り返りとして、「採択されて補助金を受けられるようにするための取り組みが地域でまとまるきっかけとなっている」ことを評価し、「地域経営の取り組みを補助金採択の基準にしてより一層推進すべき」とするとともに、そうするにあたってのマネジメント人材の不足、そうした人材を育成する場の不在も挙げています。

 「日本のスキー教師はスキー技術を教えるだけだがヨーロッパではそのスノーリゾートを楽しむタウンガイド的な役割も果たしているところもある」ことや、あるいは「スキー教師がバックカントリーの山岳ガイドを兼ねていて、それらの資格認定や育成に地域や自治体で取り組んでいる」という紹介もされていました。

 「スキー教師兼タウンガイド」が自然にそうなったのか地域で戦略的にそうしたのか分かりませんが、自然発生的だとしても、それは長期滞在を基本とするリゾート地だからです。日本にその下地はなく、スキー場のベースエリアにガイドが必要なタウンもほとんどありません。

 「リゾートタウン」として街が形成されて、スキー以外の街での遊びやアプレスキー(スキー後の夕方以降の楽しみ)の場所がたくさんあってこそのタウンガイドです。ニセコでも白馬でも野沢温泉でも、ショップガイドがあれば事足りそうで、タウンガイドが必要なほどのスノーリゾートは日本にはなさそうに思われます。

 バックカントリーガイドの育成に地域や自治体が積極的に関わっていくのは良いと思いますが、タウンガイドに関してはガイド育成よりもまずはガイドが必要なくらいのベースタウンの充実が先のように思います。