スキー産業と競技強化の持続可能性 -1

 「産業振興が選手の強化につながり、興行の担い手としての選手の活躍が振興にも循環していく」のが皆川賢太郎氏の「思い描く未来」。

 日本のスキー産業とスキー競技者育成の持続可能性について考えてみる。  

 皆川氏のスキードーム構想もその一環だし、平昌五輪代表選考基準に全日本選手権優勝を加えたのも、選考過程の透明化と、さらには興行化(SAJが主催する国内大会で放映権料を取れるようにする)のための第一歩だろう。

 スキーが人気競技になってテレビ中継されるなんて今は現実的でないが、フィギュアだってここまでになるとは誰も思ってなかったと思う。

 フィギュアスケートが人気だからってスケートリンクの来客が増えてるという話はあまり聞かないように、スキーが興行として成立するようになってもそれは「見るスポーツ」としてであって、それでスキー場の来場者が増えるかは別だろう。

 しかし、フィギュアスケートがそうであるように、競技者の裾野拡大には寄与するだろうし、元選手で競技本部長である皆川氏にはそれが第一に違いない。

 皆川氏は2015年秋に理事、2016年秋に常務理事となり、その2016年秋に「スキー未来会議」の第1回を開いている。「日本の文化に新たなるスキー産業を作るプロジェクトを行っていくという想いから開催」ということだが、ここでは皆川氏は、発信者としてより、専門家の話の聞き手であり、異業種交流のコーディネーターとしてふるまっている。

 皆川氏のSAJでの理事としての担当は「マーケティング」。マーケットの現状を、スキー場運営や用品販売、観光業や他のスポーツの興行関係者などに来て話をしてもらう。産業に関わる者が集まって現状と将来展望を語り、情報共有する場を設け、マーケットの拡大に繋げていく。マーケテイング担当が以前からSAJにあったのかは知らないが、なかなか見事な仕事ぶりと思う。

 冒頭の「産業振興・興行化と選手強化の好循環」とは、フィギュアスケートを想定していると思われる。

 フィギュアスケートの場合、長野五輪決定と伊藤みどりの五輪メダルを機に有望ジュニアの発掘(野辺山合宿)を始め、それが荒川静香村主章枝らの輩出に繋がったという競技強化の成功がまずあり、加えて浅田真央というスターの登場により興行化にも成功、さらに羽生結弦というスターの登場へと繋がっている。(続く)