スキー産業と競技強化の持続可能性 -2

 「産業振興が選手の強化につながり、興行の担い手としての選手の活躍が振興にも循環していく」ためにどうするか。

 皆川賢太郎氏は、まずアンダーチームを変えると言っている。スキークロスのように年齢、経験といったキャリアが生きる種目と、ビッグエアのように若い段階から強化をしていかないといけない種目があるのに、今までは全種目共通して年齢で決めていた。これを種目ごとに、スキークロスならアルペンからの転向もふまえて20代前半までをアンダーチームに、ビッグエアでは10歳前後までをアンダーチームにするという。

 今まではたまたま成績が上がってきた選手に対してピントを合わせてメダルを取りに行こうとしていた、とも言っている。これを狙って育てるようにしていく、そういう仕組みにしていく、と。これにより一定の種目に関してはかなり高確率でメダルが取れるようになる、とまで強気の発言もしている。

 そうした強化策が功を奏し、スターが登場して人気競技になれば、大会に来る客が増え、入場料・放映権料を取れるようになってグッズも売れるようになり、自前の強化資金を確保できるようになる。まさに好循環。

 さらに、人気選手にはスポンサーがついて、連盟どころか個人での強化資金確保ができるようになるし、人気になってショーの客も増えることで、選手の引退後のキャリアの選択肢も増える。いいことづくめである。

 スキーの「興行」というの何を指しているのかは、皆川氏は具体的には言及していないように思うが、おそらくまずは全日本選手権といったSAJ主催大会の商業化だろう。競技が興行化すれば、フィギュアスケートがそうであるように、元選手には解説者としての仕事が増えて、セカンドキャリアの幅も広がる。

 もしかするとその先には、フィギュアスケートアイスショーがあるように、スノースポーツでも既に、フリースタイルのビッグエアやXゲームなどは北米では既にショーとして成立しているように、エンタテインメントとしての興行も視野にあるのかもしれない。

 そんなのは今はまったく夢みたいな話だが、フィギュアスケートが実際にそうなっており、フィギュアとスノースポーツでそこまで決定的な違いがないのであれば、まったくの戯言というわけでもないのかもしれない。