北海道新幹線

 政府は、2030年度末(2031年春)としていた北海道新幹線の札幌延伸開業予定を断念し、近く発表する見込み、との報道が出ました。工事の遅れは以前から指摘されており、札幌五輪の誘致を正式に断念した昨年秋の時点で「延期を検討する環境が整った」と報道されていましたが、そのとおりになりました。

 トンネル工事が難航しており4年程度遅れることになりそうとのことで、冬季五輪は2030年のフランスばかりか2034年アメリカ開催も決まって、札幌が誘致に再挑戦するとしても早くて2038年ということになるので、開通を前倒し要請される要素もなさそうです。

 札幌延伸に関しては、貨物も含めた並行在来線問題もはっきりしておらず、そちらの決着にも時間的猶予ができたといったところでしょうか。

 ただ、ニセコエリアの訪日外国人客の増加により冬季の倶知安-小樽間の鉄道利用者が増え、倶知安駅での乗車が多いことで途中の余市駅で積み残しが発生し、日中は1~2両編成での営業だったのを急遽一時的に3両編成にしたということで、外国語対応を含め外国人個人客のバス利用への誘導が必要なのか、バスの増便が必要なのか(運転手確保の問題が大きそうですが)、車両編成の変更や何なら臨時便の運行も可能で対応できるのならそれでよしとするのかということではありますが、観光政策としての視点からは札幌延伸は期待や効果が大きいだけに、延期はやはりダメージが大きそうです。

 なお、ニセコエリアへは、小樽方面から余市までできている高速道路の倶知安までの延伸も工事中で、2020年代後半のうちの開通が予想されています。新千歳空港や札幌からは現在の下道利用よりも遠回りになるため時短効果は小さいですが、札幌・小樽との周遊性や利便性が高まることは間違いありません。

 北海道新幹線の札幌延伸開業の遅れは、整備新幹線の財源の問題から、2046年予定とされている北陸新幹線の新大阪延伸開業の遅れにそのままつながる可能性が高そうで、そちらの推進派は気が気でないかもしれませんが、そちらはそちらで2017年に決まったルート選定について、いまだに米原ルート案がくすぶり続ける(あるいはここにきて再燃する)ような記事が散見されるなど、不透明だったりします。

 北海道新幹線については、現在の函館市長(俳優・大泉洋の兄)が函館駅乗り入れを公約に掲げて当選しており、函館市が「技術的に実現可能」とする調査報告結果を公表したこともニュースになっています。

 これについては、JR北海道はもちろん函館市議会でも費用負担についての言及の甘さを指摘されています。地上設備か車両のどちらかを複数電圧対応にする必要があるが、その費用が明示されていないということで、その費用負担を暗黙のうちにJR北海道に押し付けることで調査報告における費用額を過少に見せているというものです。

 技術的に可能か不可能かでいえば、可能なのは調査せずとも明らかで、いくらかかるかが焦点のはずです。その費用負担から逃げ腰の調査報告を出すようでは、批判されても仕方ないでしょう。

 JR北海道は複数電圧対応以外にも問題点を指摘しており、いずれも費用負担の問題に帰結すると言えばそれまでで、函館駅が本州や札幌と乗り換えなしになることにいくらの価値があるのかということになります。

 札幌延伸開業が延期になったことで、こちらも議論に時間的余裕ができましたが、費用負担の点で実現は難しそうです。