開田高原マイアスキー場

 長野県木曽郡木曽町は、平成の大合併木曽福島町日義村開田村三岳村の4町村が合併して誕生しました。これによって、旧・木曽福島町木曽福島スキー場、旧・開田村開田高原マイアスキー場、旧・三岳村御岳ロープウェイスキー場の3つのスキー場を抱えることになりました。

 合併時点で御岳ロープウェイスキー場の所有・管理が自治体だったのかは不明ですが、木曽福島スキー場は町営、開田マイアスキー場は1996年設立当初の第3セクターから清水建設が2002年に撤退したことで、開田村が98%出資の第3セクター運営という実質町営状態でした。

 御岳ロープウェイスキー場は2009/10シーズンを最後にスキー場営業を休止してゴンドラの夏営業だけになり、2012年にはこの3施設の運営会社を合併させてアスモグループ㈱となりました。

 しかし赤字は止まらず、この3施設をどうしていくかの協議がされるようになりました。地元にはアクセスのよい木曽福島スキー場の支持者が多かったようで、2019年に別の指定管理者による運営に切り替えられることになりました。

 残るは開田マイアですが、ここも町からの指定管理料の支払いが2021年度で終了することは決定していました。それでもアスモが続けるのか、続けられるのか、と思っていたら、やはり続けられないということで、マイアスキー場はこの夏で、御岳ロープウェイもこの秋で運営から撤退するとの発表がありました。

 町は8月になって指定管理者または無償譲渡の引受先を募集しました。応募者がなければこのまま廃止の可能性もありましたが、撤去費用が膨大という試算ももちろんされていたので、実際は無期限休止だったかもしれません。

 結局は応募者がありました。公式発表では「県外企業」とだけですが、某掲示板では岐阜県美濃加茂市に本社のある豊実精工㈱という製造業だと書かれています。事業内容に「グループ会社の運営」として「ホテル・観光事業・飲食店業・輸入雑貨の販売など」とありますが、どこでどんなことをやっているのかの情報はありません。下呂市小坂町の「ひめしゃがの湯」の運営を請け負っているという情報もありましたが確認はできませんでした。

 指定管理ではなく無償譲渡の方で手を上げたとのことですが、スキー場の運営は初めてかと思われます。もちろん、「R6年度以降は一切の費用について負担を求めないが、R4、5年度にかかる施設整備費総額約3億2,000万円のうち2億4,000万円を負担して欲しい」「事業開始から10年間の地代の負担、固定資産税の減免をして欲しい」「事業撤退時の施設の撤去は町で行なってほしい」など、いろいろと条件を付けていたようで、こうなるともう無償譲渡でも何でもないのですが、木曽町としても条件をのんで譲渡を決めました。

 指定管理料なしの指定管理契約と、地代(年約1300万円)なし・固定資産税減免・撤退時の撤去費用負担なしの無償譲渡で、何がどれくらい違うのかよく分かりませんが、当面の初期投資費用として8000万円とその後もそれなりに掛かるであろう設備維持費用(アスモの試算では年1億円程度)だけなら何とかやっていけるとふんだもよう。

 それで10年間頑張ってみて、地代・固定資産税負担してもやっていけるなら継続、無理そうならさらなる減免を申し出て、だめなら撤退(売却先探し)、ということでしょうか。

 豊実精工㈱の社長曰く「今季の営業を12月半ばには始めたい。施設改修工事を急ピッチに進め絶対に開けたい。食やアカデミーといったこれまでの良さを残し、主体が変わったことをアピールして来場者に満足感を与えリピートしてもらえる場所にしたい」「スキー場の名称・ロゴは引き継ぐが、イメージカラーを豊実精工を象徴する青色に変更。計画だと二ヵ年で施設を全面改修し、初年度は11月末までにできる範囲で行う。地元住民の協力も得て草刈りなどゲレンデ整備に取り掛かる」とのことらしいです。

 近年、マックアース撤退後に新規参入してきた異業種組は、チャオ御岳にしても、エコーバレーやMt.乗鞍など4つまとめ買いした会社にしても、未曽有の雪不足やコロナといった災害があったとはいえ散々な状況なので、異業種の新規参入というだけでイマイチ期待しきれませんし、同じことをやっていては黒字運営できるはずもありません。

 わずかでも存続してくれるのはありがたいのですが、こうもことごとく結果を残せないとなると、皆、どういう見通しで新規参入してくるのか不思議です。マイアも冬の営業だけで黒字化できるとは思えないのですが、夏に何をするのか、できるのか。

 通常は夏の間に索道点検やゲレンデ整備を始めてないと間に合わないとも言われ、昨年のこの時期に指定管理者を変更・再募集した御嶽スキー場は12/18オープン予定(も前指定管理者と揉めて結局12/29オープン)でしたが、それよりも数週間早いことで、12月上旬の例年通りのオープンを目指すようです。

 そうなると次はリフト券価格がどうなるのかが心配です。アスモが参加表明したアースホッパーは既に不参加が発表されています。ただでさえ燃料価格の高騰で値上げは避けられない状況ですが、小幅でとどまってほしいところです。