また、チャオについて考えた

 チャオ御岳のホームページが1年半ぶりに更新された。

 といっても、”休業中”というだけで、中身は何もない。

 でもまあ、運営会社の飛騨森林都市企画㈱(の過半株主の優福屋)の中で何か動きがあったということだろう。飛騨森林都市企画㈱の第2位株主である高山市の話し合い要請に応じない優福屋に対して、高山市がとうとう株主総会の開催を裁判所に申し立てるというアクションを起こしたから、何がしかの進展があったのかもしれない。

 しかし社員はどうなっているのだろう。1年半、会社は売上ゼロだろうに、社員の給料はどうなってるのか。

 クラウドファンディングの方は、CAMPFIREのは相変わらずゼロだし、READYFORの方も150万円を超えたあともポツポツと増えてはいるがほぼ止まりつつある。プロジェクト紹介でもコロナ禍については触れられているが、仮に億単位の出資者が現れたところで、普通ならこのコロナ禍のご時世に復活させることはあるまい。

 高山市によると、市所有のスキー場であるモンデウス山スキー場とアルコピア舟山スキー場については、採算ラインは来客数4万人程度だという。木曽町の資料では、開田高原マイアスキー場やきそふくしまスキー場は、5万人入っていた時期は赤字ではなかったよう。しかしチャオはマックアース時代の10万人でも赤字だったという。

 チャオの採算ラインについては、やはり高山市議会で質問が出ていて、「以前聞いたところでは15万人」という回答がされている。これがマックアース時代なのかJR東海時代なのかは分からないが、だとすると最も客が来た2002/03シーズンしか黒字でなかったということか。

 チャオの開業には60億円が投じられたという。その減価償却を含めると、15万人の来客者がないと黒字化しないのはわかるが、JR東海の撤退時に減損処理してないと、さすがのマックアースも引き受けなかっただろう。

 会計上の償却がなくなれば、比較的若いチャオに大きな設備投資が必要になるのはまだ先だろう。キャッシュフローだけなら、他の近隣スキー場と同程度の4~5万人が採算ラインになるのではないか。でもマックアース時代も8~10万人でも赤字だった。

 その高コストの原因は何なのか。ゴンドラは維持費が高い?建設費については確かに、高速クワッドリフトに比べても距離当たりで1.5-2倍ほど掛かりそうで、維持費も相応に掛かるだろうが(だからおんたけ2240もゴンドラを休止するのだろう)、その維持費だけでクワッドリフトよりも入場者4~5万人分も余計に掛かるとは思い難い。

 チャオが休業しても、おんたけやマイアなど周辺のスキー場の客がその分ふえたということにはなっていない。「あのエリアのどこかに滑りに行く」のではなく、「チャオに滑りに行く」というファンが多かったのだろうか。

 失礼ながら、そこまでの魅力や個性のあるスキー場だったとは思えない。春の雪質は北斜面のおかげでおんたけやマイアと比べても良かったのは確かだし、4月中旬以降は奥美濃や諏訪も含めてチャオしかやってないことが多かったというのは個性には違いないが、それだけでおんたけやマイアの倍の客数にはならないだろう。

 他に考えられるのは、JR東海時代のキャンペーンのおかげで知名度が高い、早くから小学生以下リフト無料をやっていた、あたりか。JR木曽福島駅からのバスの利用者がどれくらいいたのか分からないが、一般のバスツアーを含めて、あのエリアではバスで来る客が多い方だったと思うが(奥美濃とは比較にならないにしても)、それもアクセスが悪いからこその営業努力と、JR時代での知名度のおかげか。

 周辺の旅館御岳や日和田高原ロッジやチャオ御岳山荘がどうだったのかは知らないが、ゲレンデ内にあるロッジ・チャオの週末の予約の埋まりは早かった。わずか数十人程度のキャパではあるし、アクセスの悪さゆえでもあるとはいえ、少なくともスキー場内の宿泊施設は需要超過だった。

 つまり、何だかんだ言って、根強い人気があって春以降は混んでいることが多く、実際に周辺の倍の客数を誇っていたのだが、内訳は分からないがそれ以上に固定的な経費が高かったようで、赤字だった。

 そこさえ何とかなって周辺スキー場並みの採算ラインになれば、設備老朽化による大規模更新が必要になるまでの十数年は営業可能なはずで、そうなるとマックアース時代の10万人もいれば、あるいはグリーンシーズンも利益を稼げるようになれば、設備更新も可能なはず。逆に、固定費の高さが避けられない場合はどうにもならないだろう。

 とにかくまずは、休業放置の理由も、こうなると参入の真意も分からない優福屋の出方次第だが、シンプルにカネがないと言われたら(実際そうなのだろうし)、また出資者探しが必要。

 復活の望みがないわけではないと思うが、ハードルは高そう。