スキー未来会議 #3 -4

 (前回から続く)

 第2部では、3名のパネリストがスポーツにおけるITの活用事例を紹介している。

 楽天の杉浦氏は、野球場の売店などをキャッシュレス化することにより、現金でのやりとりが減り効率的になっていると、スポーツを興行化するうえでのキャッシュレス決済の普及の重要さなどについて述べたという。

 盗難リスクだったり、おつりの用意だったり、間違いだったり、レジ処理スピードだったり、購買データだったりと、キャッシュレス化によるメリットは利用者より事業者側の方が大きいだろうが、多くのスキー場は、購買データがあっても活用方法が分からないし、レジ待ちが長くなるのも現金管理の手間もそういうものだと思っているから、手数料に見合った導入メリットを得られないと考えて導入していないのだろう。

 キャッシュレスの方が効率的なのは間違いないけど、それが「スポーツを興行化するうえ」で重要と言われてもピンとこない。インバウンド対応ということでは分かるが、日本人相手の商売としては優先順位の高いものとは思えないし、興行化=競技観戦のためとなるとなおさらどう重要なのか分からない。皆川氏はキャッシュレス推しが強いようだが、そんな主催者に忖度した発言のようにも感じる。

 また「ファンクラブと楽天IDのデータベースを連携することで、さまざまなコンテンツにアクセスしやすくなる。試合の映像や試合予想ゲーム、選手の情報などを利用できるアプリ提供なども、スポーツを興行化するための大事なツール」と述べたという。

 「さまざまなコンテンツにアクセスしやすくなる」というのは、楽天IDをもっていればファンクラブ用のIDをもたなくても楽天IDでコンテンツにアクセスできる、ということか。スキー競技興行にあてはめて考えると、スキー観戦愛好者のためのファンクラブをつくり、そこへは楽天IDでログインできるようにすれば便利、ということか。

 ユーフォリア代表取締役である宮田氏は、選手育成の観点からスノースポーツの盛り上げを提案した。

 同社は、選手のコンディションやトレーニング、食事データの管理などを行う、アスリート向けの体調管理システムを提供している。「客観的なデータだけでなく、体調や睡眠の質などアスリートの主観的なデータも収集することが大事」とスポーツをデータ化する重要性を解説したという。

  このあたりは、皆川氏のSAJにおけるマーケティング担当常務理事としての産業活性化のトピックスというより、競技本部長としての競技力強化のトピックスになる。

 ITジャーナリストの井上氏は、Apple Watchを活かすことで得られるメリットとして、「連絡手段としての活用」「アプリでモチベーションアップ」「Apple Payでキャッシュレス対応」の3つを挙げた。

 どれも確かに便利だろうが、個人的には、スキーで腕時計ってウエアやグローブと干渉して邪魔だったり使いにくかったりする。ウエアの上から着けられるバンドが欲しい。というか、機能的にはどれもスマホ本体でできるわけで、ウエラブル端末の利便性に何万円かを払うかというと、そういう人は少数かと。

  スキー未来「会議」というからには、スキーの未来についてのディスカッションもしてほしいところで、持論発表や事例紹介だけなのはちょっと残念。

 今年5月予定とアナウンスされていた第4回は、何の告知もないまま開催されず、この秋の開催もなさそう。これで終わりでは寂しすぎる。ぜひとも続けていってほしい。