皆川氏の発言に思う -15

引き続き「元アルペン代表・皆川氏 「スキー界の国技館」構想を語る」より。

 

聞き手:売り上げや会員数の目標はありますか。

皆川:売上高100億円、会員数100万人という目標を掲げています。世界を見渡してもここまで成長したスキー団体はまだありません。「ハンドレッド(100)プロジェクト」と命名し4人の戦略立案チームを組んで高い目標に向けて一歩一歩進んでいます。さらに12人からなるマーケティングチームも立ち上げ、イベント企画、ウェブ制作、メディア対応などに取り組んでいます。

 9.6億から13.4億になるメドがたったばかりの収入を100億にするのも大胆だが、7.4万人で低迷(実際は漸減?)している会員数を100万人にするという目標はさらに大胆かと。会員100万人もカネをばらまけば(会費以上の特典をつければ)瞬間的には可能だろうが、持続的にとなると「アルペンスキーでオリンピックで金メダル」より困難かもしれない。

 売上拡大には、とにもかくにも興行化の成功が必要だろう。全日本選手権もだが、冬季Xゲームのような大会もあるとよさそう。既に興行的要素の大きい、技術選手権大会の更なる盛り上げがまずは手っ取り早いかもしれない。

 興行的成功にはスター選手の存在が不可欠だが、拡大した規模を維持するには、継続的なスター選手の輩出が必要。そのためには、普及と競技強化をつなげるべく、教育本部と競技本部の連携強化が必要か。

 それでも、日本スケート連盟の経常収益が17~37億円(国際大会の日本開催の数などによって変化が大きい)ということからすると、100億円というのはやはり非現実的な目標に思われる。

 会員100万人というのはもはや、ジャニーズのファンクラブの規模(嵐の284万人は別格として、関ジャニ65万人、HeySay!JUMP57万人など)。スキー・スノボ人口の15%にもあたるわけで、競技人口や熱烈な愛好家だけが対象ではどう考えても不可能。

 会員でないとできないことの魅力を高めることに加えて、会員ならではの特典(リフト割引などのお得感)がないと(あっても)、100万人は無理だろう。

 個人的には、壮大すぎる目標には賛同しかねるのだが、「1割・2割の改善目標より、1桁・2桁の変革目標」という考えがあるのは分かるし、スローガン的な長期目標として、組織論・リーダーシップ論からは正解なのかもしれない。

 SAJの本質的な使命は「スキーという競技・レジャーの普及と発展」であろうこと、その指標の一つとしての「100億円・100万人」であって、その数値目標に引っ張られすぎないことを前提に、遠大な目標に向かっての取り組みを応援したい。


 なお、SAJの使命について、SAJの定款の第3条(目的)には「この法人は、わが国におけるスキー界及びスノーボード界を統轄し、代表する団体として、スキー及びスノーボード(以下「スキー等 」という。)の普及及び振興を図り、もって国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。」とある。

 SAJの存在理由、その最終的な目的は「国民の心身の健全な発達に寄与すること」。公益財団法人であるためにはそう書かざるを得ないのか。

 組織の存在理由というのは、既得権益者にとっては「メシの種」だったり、「見栄」だったり、「権力行使の快感」だったりするのが現実だと思うが、いかに理想論を語ろうにも「国民の心身の健全な発達に寄与」は形式的すぎる。

 じゃあ何のための「普及及び振興」かいうと、「スキー・スノボが好きだから」だろう。好きだから普及させ、振興させたい。「スキー・スノボ界を統括し、代表する団体として、また、愛好する者の団体として、スキー・スノボの普及及び振興を図ることを目的とする」が正直でいいと思う。