皆川氏の発言に思う -11

引き続き、スポーツくじ関連のウェブサイトでのインタビュー記事「希代の名スキーヤーが第二の人生を“スキーの未来作り”に捧げた理由」から。

 

 「(中国は国策としてスキー・スノーボードの競技人口3億人を目指している。)天然雪が降らない隣国で3億人に増えた時、日本の観光の受け入れはどうなるのか。そう考えると、日本で最大だった『1,860万』は大きな意味を持つ数字ではない」

 大ボケなのか、ミスリードを意図した確信犯なのか。中国の3億人はスキー・スノボに限らない”ウインタースポーツ参加人口”、あるいは”ウインタースポーツ関係者の数”であり、おそらく延べ人数。日本の1,860万人はスキーをした人の実人数。比較する意味がない。

 中国が、1年でスキーをした実人数を3億人にしようとしていると、本当に考えているのだろうか。延べ人数で3億人なら、まだ分からなくもない。延べ人数だと現在の日本で3200万人くらいのようだから、人口10倍以上の中国が3億人目標でもおかしくないと考えることに無理はない。だがそうなら、日本のピーク時の延べ人数は確か1.2億人であり、これと比較すべき。

 中国のスキー・スノボ人口(延べ人数)は2018年で2113万人と、日本の2/3程度。しかし2014年からの4年で2倍になるなど、日本が経験したことのない猛烈な勢いで増えている。スキー場の数も、2014年で460か所と現在の日本と同等で、それがこの4年で1.6倍とこれまた猛烈に増えて742か所と、日本のバブル期のピーク時並みになっている。

 2013年から17年にかけて、日本でスキーをした中国人は1.7万人から19.1万人へと11倍になっていると推計されている。中国のスキー人口の増加を上回る増え方で、今は中間層~富裕層が中心で日本に滑りに行くことが一種のトレンドなのかもしれない。

 しかしスキー人口が増えるにつれて庶民が多くなるから、近いうちに、日本に滑りに来る中国人の数は、中国内スキー人口の増大ほどには増えなくなるだろう。つまり、19.1万人が100万、200万になるとは考えにくい。ここからの増加数は、実人数で数十万、延べ人数で100万くらいなのではないか。

 仮に実人数で100万増えたとしても、600万人程度の現状からは大きな数字だが、ピーク時の「1860万」を引き合いに出すには程遠い。

 

 「(日本の選手強化を考えると)『スタジアム』が絶対必要だと思っています。僕が思う形はスキー、スノーボードが年中できるドーム型施設。昔あった『ザウス(屋内スキー場)』のような施設が海外では39個目ができている。日本ではバブルの産物と思われていますが、世界にそれだけの数の施設があり、収支が取れている。日本のような先進国なら(通年でスキー・スノーボードができる施設が)1つはあった方がいいと考えています。スキー道具を10万円で揃えたとしても1年の間で3か月しか使えないのはもったいない。そういう部分を解消する意味でも必要だと感じます。もちろん、今の時代はアーティストのコンサートができるようなアリーナも必要で、興行ベースで検討していかないと収支が取れない。どうやってスキードームを作っていくかが僕の夢です」 

 ここはNumberWebと重なる部分。「10万円で揃えても1年で3か月しか使えないのはもったいない」という表現は穏当。しかし、夏に屋内ゲレンデに行くような人ならGWまで4~5か月は使ってそう。一方、大多数であるシーズン1~3回くらいの人は3月になると行かなくなって2か月しか使ってなさそう。

 「コンサートができるようなアリーナ」とは、長野オリンピックの時につくったスケート会場のエムウェーブが念頭にあるのかもしれないが、屋内ゲレンデで「コンサートができるアリーナ」とは、いかなるものか。

 (続く)