皆川氏の発言に思う -14

引き続き「元アルペン代表・皆川氏 「スキー界の国技館」構想を語る」より。

 

皆川氏:連盟全体の収入は年間9.6億円から13.4億円に拡大する見通しが立ちました。収入のうち選手の強化に投じられる資金は現在、年間9.6億円程度です。これを13億円まで増やすことができれば、本当に必要なスタッフをそろえ、遠征費用を賄うなどして、選手たちをキレキレの集団に育て上げられると思っています。

  競技のメジャー化・興行化により強化費を自前で捻出できる体制を目指しているのだろうし、そのために世界で戦えるアルペンスキー選手(世界的には雪上競技ではアルペンスキーが圧倒的にメジャーだ(と皆川氏は考えている)から)を育てたいのだろう。

 しかしノルディックスキー(ジャンプ・複合)やフリースタイル(モーグルハーフパイプ)では、オリンピックでメダルを取っても一過性の話題で終わった。W杯でも世界選手権でも、メダルを取らないとニュースで取り上げられもせず、存在の認知さえされない。アルペンスキーでオリンピックでメダルを取っても、劇的に状況が変わるとは思えない。

 フィギュアスケートを例に考えると、オリンピックメダリストはもちろん、W杯の上位常連を継続的に輩出して、その中から浅田真央羽生結弦クラスの、強いだけでなくキャラも立ってて世界中から愛されるくらいのスター選手が現れないと、メジャー競技にはなれないのではないか。

 アルペンスキーの場合、ノルディックやフリースタイルに比べて体格的なハンデが大きそうだが、どうなのだろう。女子ジャンプやフリースタイル、あるいはフィギュアスケートのように、10代からトップクラスということもないとなると、良くも悪くも競技以外の部分で注目を集めることも難しそうで、”国民的スター選手”の登場のハードルは高そうだ。

 

聞き手:連盟の会員数の推移はどうですか。

皆川:残念ながら会員数は7万4000人程度で低迷しています。競技人口を増やすためにも、逆説的ですが大会数を減らす必要があると思っています。現在、1シーズンに開く国内の大会は290もあります。競技を普及させようと、大会数がどんどん増えていきました。しかし資金や人的資源が分散され、個々の大会は盛り上がりに欠けています。大会数を半分程度まで減らせば、注目が集まり、普及が進むはずです。

 SAJ主催の大会が290もあるとは驚き。サマージャンプなどの夏の大会もあるとはいえ、冬の間は毎日複数の大会が開かれていることになる。「競技を普及させようと」して大会が増えているというが、ジュニアの大会や、マスターズのようなシニア向けの年齢別カテゴリーの大会が増えているのだろうか。

 会員数74,000人というのは少ないのだろうか。1級やプライズ・指導員資格保持者の数が大半だろうが、決してメジャーとはいえない競技の統括団体で74,000人の会員数は多いのではないか。

 会費が貴重な独自財源になっているという話を皆川氏自身が過去にしていた。安定的な独自財源を増やしたいから会員を増やしたい、というのは分かるが、それだけでは会員を金づるに考えているみたいになる。

 基本は競技者及び指導者人口の指標としての会員数だろうし、ここでもその文脈で話していると思うが、数の上では会員の大半を占めるであろう1級・プライズ会員目線の発言がなさすぎるのが気になる。(日本独自の検定熱は理解しがたいのだろうけど)

(続く)