皆川賢太郎氏の目指す「興行化と競技強化の好循環」とは「競技のメジャー化」ということもできるだろう。
スキー・スノボは、レジャー(するスポーツ)としてはメジャーな部類だろうが、競技の商業的価値(観るスポーツ)としては日本ではマイナーといえる。
バブル期、F1などのモータースポーツも、アルペンスキーのワールドカップも、深夜に地上波で放送されていた。今はプロ野球中継すら視聴率が取れず地上波放送は激減とメディア環境も変化しているし、モータースポーツもスキーもバブル的な一過性のブームだったといえばそれまでだが、どちらもヨーロッパでは根付いている。なぜ日本では根付かなかったのか。
モータースポーツもスノースポーツも、「するスポーツ」としては比較的富裕層のものではあるだろう。日本の雪国では日常のスポーツだが、豪雪の中山間地にそれなりの数の人が住んでいるというのが世界的に特殊であって、一般的には、都市から遠く離れた高標高域に行かねばならない、典型的な非日常型スポーツだ。
「観るスポーツ」としてはそれほど富裕層のものというわけではないだろうが、それでも、現地観戦には旅行を伴う場合が多いことから、中間層以上のものではあるだろう。そういったスポーツは、富裕層の歴史が長いヨーロッパに比べると、日本ではまだ文化として定着するのに時間が必要、あるいは日本の文化にはそぐわないところがあるのかもしれない。
と思ったが、富裕層的・非日常的で、一時期のブームが去って市場が縮小し廃業が相次いているという点でスキーとの類似点が多いゴルフは、「観るスポーツ」としてはスキーとは比較にならないほど定着している。通年型か季節型かの壁も確かにあるだろうが、それだけでは説明できそうにない。
ライブ観戦(コア層)の人気があってこそのメディア観戦(一般層)の人気と考えると、モータースポーツとスノースポーツでは、モータースポーツはまだコア層はつかめている感じがする。それでもバブル崩壊による資金(スポンサー)難でF1を誘致できなくなったのは、一般層への訴求力低下という点で大きいだろう。
もしかして、私が知らないだけで、スノースポーツもコア層はつかめているのだろうか。ノルディックやフリースタイルでは今も、日本でのワールドカップ開催の頻度も高いし、バブル崩壊以降に世界選手権の開催もあるが、現地には観客が押し寄せているのだろうか。だとしたらそれはそれで、世間一般のニュースになっていないことが問題か。(続く)