NumberWebの「NSBC補講Ⅳ 皆川賢太郎のスキー革命論」の2018/11/29「一年じゅうスキーができる国をつくる。皆川賢太郎が考える屋内施設の価値」より。
「今後日本にスノードームが建設されることはあるのかといえば……私は可能だと考えています。」「ここでポジティブな材料になるのが海外で成功したモデルケースです。最も成功しているのは、オランダのスノーワールド・グループがつくった施設ですね。この施設は、山の斜面を建物でおおって建築コストを抑え、エネルギーはソーラーシステムによる自家発電システムで電力を蓄えて使用しています。」
皆川氏が、スキー・スノボ人口の1%のヘビーユーザーをスノードームの客層に想定しているのであれば、首都圏から比較的アクセスのよい降雪山間地の既存ゲレンデを建物で覆うのが、建設費もランニングコストも安くできて現実的と考えているのかもしれないが、その立地での集客についてはどう考えているのだろう。
オランダの場合も、山の斜面ということは海沿いの大都市からは離れているのだろうと思って調べてみると、ゲレンデ長さが540mと規模の大きいLandgraafはドイツとの国境近くにあり、グーグルマップのルート検索によるとアムステルダムからは223㎞。練馬ICから信州中野ICまでくらいで、浦和ICから磐梯エリアよりは近い。ドイツのデュッセルドルフやケルン、ボンなどの方が100㎞前後と近いので、客はドイツからの方が多いのかもしれない。
太陽光発電でコスト低減というのは、実際どうなのかは微妙。海外での、特に砂漠などでの大規模メガソーラーの発電コストは火力発電より大幅に安くなっているというが、それは建設コストが安く日照時間が長いから。中山間地の建物の屋根上に設置するのでは、日本ではまだようやく電力会社から買うのと同等程度なのではないか。畜電池も設置するとなるとなおさら。オランダでも、コストもいくらか下がるのかもしれないが、環境保護イメージからそうしているのがメインかもしれない。
「さらに、レストランやホテルも隣接してコンパクトに作られていて、夜はその中でイベントを行うなど、様々な取り組みにより黒字化に成功しています。我々が目指すべき収益モデルがすでに世界に存在しているのです。」
「夜はその中で」の「その中」とはゲレンデのことだろうか。だとするとどういうイベントが行われているのだろう。あるいは「レストランやホテルの中」でイベントだろうか。
結局、スノードームが海外では成功しているといっても、ゲレンデは長期宿泊型複合リゾート施設の一部、ホテル(の稼ぎ)がメインでゲレンデは目玉とはいえ所詮はホテル併設のレジャーの一つであって、単体では利益が出なくても大赤字でなければいいくらいの位置づけなのかもしれない。
(続く)