皆川氏の発言に思う -5

NumberWebの「NSBC補講Ⅳ 皆川賢太郎のスキー革命論」の2018/11/29「一年じゅうスキーができる国をつくる。皆川賢太郎が考える屋内施設の価値」より。

 「私は365日滑ることができる環境を用意しなければ、スキー産業は停滞すると考えているのです。」

 これはまた極端な。よその国がそうなってるということではないだろうから、今の日本には、ということだとして、そう考える根拠はここまでに述べていた、道具を買ってもらうにはその機能を感じてもらうことが重要だから、だろうか。

 試乗機会と購買動機の関係性がそう強いとは思えないし、今まで試乗会に参加してない人で夏も滑れるからって滑りに行って試乗会に参加するなんて人は、稀だろう。

 「365日滑ることができる環境」があれば、主にできたときの話題性として、スキー産業活性化にいくらかは寄与するだろうが、それが必要条件かというと甚だ疑問であるし、寄与度もそう大きくない可能性が高いと思う。

 

  「では実際、今後日本にスノードームが建設されることはあるのかといえば……私は可能だと考えています。」「 実際に通年化を視野に入れてスノードームを現実のものにするため、試行錯誤を繰り返しているところです。設計を試みたり、コストを算出したこともあります。現実的な問題としては、資材のコストの高さを考慮すると総工費100億を切るのは非常に厳しい点ですね。」

 ザウスの総工費は400億円といわれている。10年営業して、最終的な減価償却残の特別損失が215億というから、年間の減価償却額は18億円程度の計算になる。減価償却を除いたキャッシュフローはずっと黒字だったというので、客単価6000円(リフト・レンタル・駐車場・飲食)で70万人(最後の方の入場者数)だと売上42億円だから、ランニングコストが40億程度か。だとすると100万人(ピーク時の入場者数)入れば売上60億円で、減価償却費も賄えていた計算になる。

 今作ってもランニングコストが40億かかるならとても収支が合わないが、空調や降雪の省エネは劇的に進んでいるだろうし、省人化も進んでいる。総工費がザウスの1/4なら減価償却も1/4の年5億として、ランニングコストザウスの半分(年20億円)なら、採算分岐点は25億円となり、平均客単価6000円なら年間40万人強の来客で収支均衡する計算になる。ランニングコストザウスの1/3なら年間30万人強だし、単価8000円なら23~30万人になる。

 

 「ここでポジティブな材料になるのが海外で成功したモデルケースです。現在世界には37つのスノードームが存在し、まもなく38つ目が完成します。最も成功しているのは、オランダのスノーワールド・グループがつくった施設ですね。この施設は、山の斜面を建物でおおって建築コストを抑え、エネルギーはソーラーシステムによる自家発電システムで電力を蓄えて使用しています。」

  海外の成功事例として「山の斜面を建物でおおって建築コストを抑え」ている例を挙げているが、そうすることで総工費が100億強程度に収まるということなら、ザウスのように首都圏の立地は難しいだろう。そうなると集客的にどうなのか。

 しかし、ザウスの教訓は「ライトユーザーはアクセスがよくても夏には来ない」だったとも聞く。「仕事帰りにちょっとスキー」のような需要も想定していたが、自然を感じられない、屋根のあるゲレンデに滑りに来るのはヘビーユーザーがメインだったと。

 (続く)