皆川氏の発言に思う -4

NumberWebの「NSBC補講Ⅳ 皆川賢太郎のスキー革命論」の2018/11/29「一年じゅうスキーができる国をつくる。皆川賢太郎が考える屋内施設の価値」より。

 「メーカーとユーザーがしっかりとコミットし、メーカー側は(道具の)機能を十分にユーザーに感じてもらい、それが購入につながらなければ、スキー産業は復活しません。」

 「スキー産業」を「用具販売」と捉えるなら、「機能をユーザーに感じてもらい…」にも一理はありそうだが、他のスポーツでも用具が売れている要因に「機能が感じられるから」というのはそう多くないのではないか(ゴルフクラブくらい?テニスラケットやランニングシューズも?)。売れる大きな要因は、デザインかスター選手の登場(その選手のモデル)というのが、どのスポーツでも多いように思う。

 ゴルフクラブやテニスラケットの試し打ちや、ランニングシューズの試走がどの程度されているのか知らないが、それらからするとスキー試乗会の開催頻度・利用頻度は高いかもしれない。競技や楽しみへの道具の依存性の高さの競技間比較は難しいが、スキー道具の価格が高いのは間違いないので、試乗会利用が多いのならそのためだろう。

 道具の機能を感じられる時点でそこそこの中級者であり、ここでも「大半の愛好者は年間平均で1~3回程度」というこの話の想定とあわない。「年1~3回」の人に、道具一式に10万円出して、6月に発注して、試乗会に参加してもらおうということなら、それは狙いを間違っているように思う。

 ライトユーザーにとっての道具は今後ますます、”所有からシェア”で、買わずにレンタルで済ます人や、買うにしてもヤフオクやメルカリで中古を買う人が増えていくのではないか。

 バブル期はウェアだけでなく道具もファッションの一部だったし、リアエントリーブーツやキャップスキーのように見た目の違う新商品が出ていたから頻繁に買い替える人が多かったのだろうが、あの時が異常だったのであって今が正常だろう。

 カービング板になってはや20年。ロッカーが買い替えの動機にはならなかったのは、見た目の違いが分かりにくいからもあるかもしれないが、もはや一般スキーヤーにとっては道具はただの道具、使えなくなるまで使うものであって.、新しいのが出たから買い替えるというものではないだろう。自動車もそうなって車齢が伸びているし、スマホだって割引規制の強化でそうなっていくに違いない。

 基本的には、今が正常であって今後ますます売れなくなると思うが、一方で、壊れない限り10年以上も使い続けているが、今の板を履いてみたら思いのほか滑り易くて買い替えを考えるような、”買い替えなさすぎ”の人も結構いるのかなとも思ったりする。

 「スキーブーツなどのプラスチックは、使っていなくても劣化して割れやすくなります」という啓蒙ポスターをずいぶん前からゲレ食などでよく見かけるようになっているが、これなどもきっかけは、久しぶりの人や買い替えなさすぎの人の道具経年劣化が原因での事故や怪我の報告が増えたからなのだろう(このポスター、安全を建前にした買い替え促進の宣伝ではないかと思うのは、見方がうがちすぎだろうか)。

 そういう買い替えなさすぎの人に、安全のためにも適度に買い替えてもらう余地はあるのかもしれないが、そこに産業の活性化という規模はないと思う。

 「使う機会が増え、機能を感じてもらうことで道具が売れなければ、スキー産業は復活しない」とは、「一年じゅうスキーができる」ことの必要性や効能を訴えるための前振りに過ぎないのだろうが、それにしてもいろいろとずれている感じがする。こじつけを承知で単純化しているのか、本当にそう思っているのか。

(続く)