ザウス的屋内ゲレンデについて -5

(前回から続く)

  屋内ゲレンデはドバイにもあるし、スペイン・イギリス・オランダ・ベルギー・ドイツ・リトアニア・ロシアなどにもある。ドバイはもちろん、スペイン(マドリード)なども冷涼な気候ではないし、オランダやドイツのものは首都などの大都市近郊というわけでもない。しかし営業的には成立しているよう。

 成立している要件は場所によってそれぞれなのだろう。オランダやドイツは、アルプスに近い地域は特に、スキーリゾート文化が根付いていて、ホテル併設の屋内ゲレンデ(おそらくそれ以外にもアクティビティがあると思われる)に一定の需要があるのかもしれない。マドリードのような温暖な地域でも、都市近郊の複合型施設であれば採算が合うのだろう。

 では日本の場合はどうか。日本にはなぜ、そこそこの規模の屋内ゲレンデがないのか。欧州各国と何が違うのか。

 ホテル併設型というのは、温泉になら泊りで行くが、屋内アクティビティの充実したリゾートホテルに行くという文化は日本にはないと言っていいだろうから(というかそういうリゾートホテル自体がほぼない?)、これは仕方ない。

 都市近郊型については、諸外国と比べて建設費は大きく変わらないだろうし、土地代が高いと言っても定常的な経費として上乗せされるのは固定資産税で,、経費全体に占める割合は大きくないだろうから、コストの問題ではないのではないか。

 そうなるとヨーロッパとの違いとして考えられるのは、日本では都市から雪山が近いため、都市近郊型屋内ゲレンデの地理的メリットが弱いということか。とはいえ、その近いはずの雪山にも都市の人が来なくなって困っているわけだが。

 スノーヴァサイズなら建設費も維持費も安そうだし、「雪遊び場」としてショッピングモールの一角にあって1時間1000円とか1500円くらいなら子供連れの集客が見込めそうに思うのだが、どうだろう。その値段で採算が合うだけの需要はないのだろうか。

 ザウスサイズのものは、ヨーロッパにもいくつかあるようだが、日本ではザウス以降作られないのは、誰もビビッて投資しないだけなのか、ただ単に需要がないということなのか。

 世界的に標準的なのは、ゲレンデ長さ200~300mとザウスの半分くらいのサイズのもののようで、ザウスはビビッても、幅も狭めてザウスの1/3や1/4なら、ショッピングモールの目玉施設としてどこかがやってもおかしくないと思うのだが、結局はやっぱり単に需要がないということなのか。

 レジャー白書によると、スキーは生涯経験率(子供の頃やバブル期にしたことがある)も希望率(やってみたい)も高いというが、それはあくまで、冬に開放的な自然の中でするからいい、季節レジャーということであって、スポーツとしての需要は小さいということなのか。

 日本にそこそこ規模の屋内ゲレンデがないのは、単に人気がないから、というのが結論だとしたら、あまりに寂しすぎる。

 既存ゲレンデを囲うことで競技の強化にも使えるレベルの屋内ゲレンデを作るというのも、ぜひ実現してほしいが、そこそこ規模の都市型屋内ゲレンデも、誰かどこかに作ってほしい。それによって、それが事業として成立するだけの人気があるレジャーなのだと示してほしい。