白馬の宿代も爆上がり?(続・白馬のニセコ化)

 信濃毎日新聞によると、「訪日客殺到…白馬村のホテル、冬の予約もう満杯 「ベッドが圧倒的に足りない」観光業者危機感」とのことです。

白馬村で今冬季の宿泊予約が好調。宿泊予約申し込みの動きは例年より1カ月ほど早い。
・インバウンド(訪日客)を中心に申し込みが殺到し、冬季の空き室がなくなる宿泊施設が続出している。
・オーストラリア人を中心に宿泊予約を受けている旅行会社では、八方尾根などの人気エリアのホテルでは8月末時点で来年1、2月分がほぼ埋まったという。
・早い時期に予約する訪日客は年々増えており、担当者は「早く予約に動かないといけないという心理が働いている」と指摘する。
・白馬東急ホテルでは、昨年より1カ月早い7月末時点で、全101室の今冬季の予約がほぼ埋まった。
・白馬樅(もみ)の木ホテルでも、8月末時点で今冬季の部屋は予約でほぼ埋まった。
・訪日客の動きが早い半面、国内旅行客は宿を取りづらくなっている。
・対策の一手として、12月20日から来年2月24日、大町市大町温泉郷と村内のスキー場をつなぐシャトルバスを初めて運行する。
・国内客の受け皿として大町温泉郷の宿泊施設を活用する狙いで、大型バスを朝夕各1本ずつ走らせる計画。

 この12月には八方エコーランド地区に5階建て・38室、分譲価格1億~2.5億円という新築のホテルコンドミニアムが新たに開業し、咲花ゲレンデ隣接地3.3ヘクタールには高級ホテルブランドの建設が決まっており(2026年以降開業予定)、岩岳ベースエリアの約2ヘクタールには5階建てで白馬村内最大級のホテル建設が決まっています(2030年開業目標)。

 5年前の時点で、客数減少と運営者の高齢化により、岩岳エリアの宿泊施設はピーク時の半分近くに減っているという記事がありました。あのスキーバブルとしか言いようのないブームのピーク時と比べてもとは思いますが、スキー場の客数が1/3~1/4に、宿泊客はおそらくそれ以上に減っているでしょうから、いくらピーク時はどこも予約で埋まっていて取るのに苦労したとはいえ、5年前は訪日客向け以外はまだ宿泊施設過剰だったと思われます。

 「圧倒的に足りない」のはそうした訪日客需要に対する供給であって、それもコロナ前の何倍にも需要が増えているわけではなく足りてないのはコロナ前からで、低価格帯の宿泊施設には影響は見られなかったのですが、今年は様子が違います。

 例えば、一昨シーズンに金曜3900円・土曜4500円で1人1室素泊まりできた栂池の宿が、この冬は金曜5200円、土曜は素泊まり設定がなくなって2食付き7800円のみになっています。食事提供をやめて広い食堂は片隅に電子レンジや湯沸かしポットが置かれているだけだったのが、週末限定で食事提供を復活させたばかりか、土曜泊は素泊まり提供をやめて単価を上げてきました。

 その他にも1人1室5000円以下の宿は多かったのですが、現時点で楽天トラベルを見る限りでは5000円以下はなくなり、土曜泊だと素泊まり6000円が最安となっています。

 その昔は1人1室提供などしていませんでしたし素泊まりも少なかったもので、その後、食事提供は負担が大きいことから低価格帯ではむしろ食事提供なしのところが増えていたのですが、そのトレンドも変化し始めたのかもしれません。

 訪日客向けと国内客向け低価格帯では市場がまったく重ならないように思うのですが、東急や樅の木などの訪日客向けホテルが早々に埋まったことで宿側が強気に転じて、中価格帯の宿が国内客向けのツアー商品での提供価格を上げ、それを聞いた低価格帯の宿も値上げしてきたということでしょうか。だとすれば値上げの構図としてはニセコの爆上がりと同じのように思われます。

 5年前の時点でも、団塊世代後期高齢者入りで個人経営の宿泊施設は(1980年代に脱サラして移住してきて開業したペンションを中心に)廃業が相次ぐだろうことは確実だったと思いますが、そのタイミングでコロナ禍がきたことで前倒しで廃業が加速したのかもしれず、低価格帯の宿も昨シーズンですでに稼働率が目に見えて上がっていたのかもしれません。

 廃業加速による供給減少、訪日客増加による需要増加、経済のインフレ化によるコスト上昇、スキー場リフト券の大幅値上げ、それでも根強いレジャー消費(コト消費)など、様々な要因が短期間に凝縮・重複したことでの大幅値上がりで、上昇率自体は一過性のものだと思います(思いたいです)が、上昇自体は今後も続くことになりそうです。(円高に戻ることで訪日客が大幅に減りでもしない限り)

 ブームが去ってデフレ期に突入した当初、「ゲレンデがこんなに空いていていいのか」「宿がこんなに取りやすく、こんなに安くていいのか」と思ったものですが、長年続いたデフレ期の価格が身にしみついている者としては、インフレ期再突入の値段に慣れるのに時間がかかりそうで、高いとボヤキながら利用し続けることになりそうです。