また、Go To の話

 Go To トラベルの期間延長について公明党から自民党に申し入れがされ、延長する方向で調整に入ったとの報道があった。

 具体的な延長幅は今後詰めるということだが、首相曰く「予算がなくなったからやめるというのではなく、全体の状況を見ながらやっていきたい」ということで、とりあえず予算が尽きても1月末で終わるということはなさそう。そして公明党が主張するGWまでになるのだろう。

 Go To トラベル事業については「金と時間に余裕のある人だけが得をする」「利用客にではなく困っている事業者に給付すればいい」という意見も見かける。

 補助上限が大きく高級宿ばかりが恩恵を受けているというような報道を見たときは私も「制度設計がまずいんじゃないか」と思ったが、これは観光業界の救済というだけでなく、経済活動の活性化という目的があり、むしろそちらの方が大きいのだろうと思うようになってからは、大筋で合理的な施策かと考えるようになった。

 経済活動の活性化とはつまり、お金を使ってもらうこと。それにはお金を持ってる人に働き掛けないといけない。「お金に困ってはいないが雰囲気的に旅行に行きづらい」という人に旅行に行くキッカケを与え、「感染予防をしっかり行ったうえで、対策のきちんとした宿に泊まってもらう」よう誘導する必要がある。

 この事業では1.3兆円の予算が投じられるが、少なくともその同額を利用者が自腹で使うことになる。実際には補助対象とならない観光・飲食・交通での支出もあるから、投じた予算の倍以上の経済効果が見込まれるだろう。

 「補助がなくても旅行してた」人の利用も多いだろうが、そういう人にしてもちょっと贅沢にしたり、ちょっと出費を増やしたりする人は多いだろう。

 止まっているお金の流れを動かす種火としての公費投入であり、インパクトとして「最大半額」という補助率も悪くないと思う。

 ただ、周知はもう十分なので、続けるのであれば、補助率や補助上限は引き下げた方が政策の費用対効果は高いように思う。利用者としては残念だが、税金の使い方としてはその方が効率的。

 補助率そのままで上限を引き下げるか、補助率も補助上限も引き下げるか。個人的には前者の方がありがたいが。

 星野リゾート代表は、休日と平日で割引率に差をつけることを提言している。季節や曜日による繁閑の差をなくしていくことを宿泊業の大きな命題と捉えて、長期休暇の地域分散の実現に向けて動いている星野さんならもちろんそう言うだろう。星野リゾートの高級宿は休日は1月末までもう予約でいっぱいらしいし。

 合宿免許だと教習費用も割引対象となることに対する「主旨と違うのではないか」という至極真っ当な意見を受けて、観光目的以外の旅行商品や高額な施設利用券をセットにした商品は除外されることが決まった。

 除外対象の例として「ヨガやダイビングの免許取得講習」が挙げられているが、一般的なスキースクールのように免許取得を目的としない講習ならいいのだろうか。人気デモのレッスンには宿泊付きのものもあるが。

 8泊以上も対象外にするという。「長期の利用はビジネス目的が多い」というのが理由というが、ずいぶんと雑という印象を拭えない。そんなこと言ったらほとんどの旅行は日帰りか1泊か2泊で、3泊すら少ないのではないかと思うし、それに、7泊ごとで予約すれば、結局は対象になるのではないか。

 Go To イートの「トリキ錬金術」などは店側の読みの甘さが原因だが、「無限くら寿司」と言われるように自己負担1000円で理論上は何万円分も公費で飲食できてしまうのは、公費支出の費用対効果という点で制度上の問題と言えると思う。

 「予約すれば夜はクーポン1000円分」というのは、居酒屋やレストランなど客単価が3000円とか5000円の業態を想定していたのだろうが、ならば適用条件に「2000円以上」などを入れておくべきではないだろうか。

 「巧遅より拙速」のスピード重視の施策だから穴もあるだろう。やってみて見つかった穴はすぐ埋めればいいのだが、そこのスピード感には不満がある。

 政府や行政への不満はさておき、経済活性化に寄与し、バラマキ予算の恩恵を受けるべく、久しぶりに北海道スキーでも行くとするか!