コロナ見通し

 前回、ワクチン接種状況について書いたのが7月15日。その頃3000人を超えたあたりだった新規感染者数は1.5万人へと急増しているが、ワクチン接種は順調に進んでいる。

 現在、1回でも接種した人が全人口の46%(接種完了率は33%)。といっても、高齢者・医療従事者を除いた完了率は1割にも満たないので、夏休みに入って自粛疲れの若者を中心に行動制限が効かなくなって感染が広がるのは仕方ない。

 「このペースで増えれば」って言ってる”専門家”がいるけど、いつまでもこのペースが続くわけはなく、実際、前週比増加率は大きく下がりだしている。そろそろピークアウトしてもおかしくないし、盆を過ぎれば人流も減って感染者数も減るだろう。

 都会ではまだ接種予約が取りにくいほどに接種意欲は高く、7月末までは1日120万回の政府目標はクリアしていて、今後も職域接種のフル稼働が始まることで100~120万回は維持されそう。そうすると接種率は1か月で12~15%増える。完了率は今月末には45%になり、9月末には6割近くになる。

 問題は接種率をどこまで伸ばせるか。SNS上の「ワクチンにはマイクロチップが入っていて生体情報を管理される」などというトンデモデマを気にしてる若者が少なくないというし、「新しい技術のワクチンだから5年後に何が起こるか分からない」という、そんなこといったら添加物入りの食品は食べられないのではという偏った心配をしている若者が多いとも聞く。

 感染状況が安定するのに接種完了率8割が必要となると、接種対象外の子供が1割いるので、接種対象者の比率は9割となって、これは無理っぽい。完了率が7割になればだいぶ抑えられるとなれば、それでも対象者の8割近くだから難しそうだが無理ではなさそう。

 ワクチン接種が先行している欧米各国では、カナダが完了率61%、1回以上接種率72%でトップで、感染者は7月下旬を底に反転して増加しているが今はまだピーク時の1/8と低水準。1回接種者は2回目も接種して完了率7割にはなるだろうから、それで感染状況がどうなるか。

 日本も100~120万回/日ペースが続けば、10月末には完了率が7割になる。未接種者が減るにつれて接種ペースが鈍るにしても、冬前には達するはず(希望者がいれば)。

 完了率7割で、マスク着用や消毒は続けるが酒類提供や満席での興行OKとした場合、感染者数・療養者数・重症者数がどうなるか。1日1万人感染でも、ワクチンの効果で自宅療養で問題ない軽症者がほとんどで重症者数が1000人程度で安定するなら、それがウィズコロナの形になる。塩野義が軽症・中等症者向けの飲み薬を開発していて年内に承認目標というから、これが出てくれば入院リスクはますます下がる。

 菅首相は、1日の接種回数が100万回を超えた6月上旬では「この調子ならオリンピックもその後の選挙もいける!」と思ったに違いないが、それは変異前かせいぜいアルファ株(英国型)までならの話で、デルタ株(インド型)の猛威の前では甘い見通しにすぎなかった。おかげで支持率は急落し、オリンピックばかりかパラリンピックも無観客が濃厚。

 それでも9月末に接種完了率6割、1回接種率7割なら、10月の衆院選挙時には感染状況はすっかり落ち着いているのではないか。パラリンピック終了してすぐに臨時国会召集して解散するなら、その時点ではまだ緊急事態宣言がさらに延長されてる可能性もあるし、そうなると総裁選もどうなるか分からないが。

 とにかく、ワクチン接種率が少なくとも7割、できればそこからさらに上積みされることを望むばかりで、希望者さえいれば冬が来る前に接種可能なはず。そうなれば来シーズンのスキー場では、マスク着用義務はあってもリフト・ゴンドラの乗車制限はしなくていい状況なのではないか。

 ちょっと楽観的すぎるのかもしれないが、非現実的な空想論ではないと思う。