祝 瑞穂ハイランド復活

 前の運営会社が破産し引受先を探していた、瑞穂ハイランドスキー場(島根県)の引受先が決まり、存続・再開の道筋が立ったもよう。

 標高差721m、ゴンドラ1基・クワッド4基等を有して中国・四国・九州エリアで随一の規模を誇り、リフト券価格は2015年頃までは全国でもトップクラスの高さ、それでも広範囲から客を集めていたので、2015/16シーズンにリフト券を大幅値下げしたときは「なぜ?」と思ったくらい。薄利多売に舵を切らなければいけないような状況とは思えなかったので。

 結局、2019/20シーズンの記録的雪不足がトドメとなって、2020年3月に事業を停止し自己破産を申請することになった。2014年7月期の売上(近年の最大値?)が9.5億円、負債総額は30億円とのこと。

 それでも破産管財人が中心となって、引受先を探しながら2020/21シーズンの営業継続を目指していたが、コロナ禍もあって昨シーズンの営業は断念。その後も引受先を探し続け、今年2月に声をかけた会社が引き受けに応じてくれた。

 引き受けたのは広島の土木関連業で、早期の再開を目指し、スキー場だけでなくグランピングなど年間を通して利用できるリゾート施設を構想しているという。ただしスキー場の運営は初めて。

 数年前のマックアース大量放出時の引受先も、スキー場運営は初めての何社かの異業種だった。その後の外部環境があまりに悪いとはいえ、どこもうまくはいっていないようにみえる。

 今回の広島の土建屋さん、おそらく本業はうまくいっているのだろう。社長さん曰く「ハイランドは子どもの頃から通った愛着のあるスキー場」ということで、準地元として存続に貢献したいという意欲もみえる。

 通年で稼げるようにしないと持続できないのは当然として、グランピングは今やあちこちのスキー場がやりはじめている。瑞穂ハイランド近隣でどうかは知らないのだが、すでに競争が激しいのではないか(あるいは今後激しくなる)。

 スキー場は基本的に傾斜地だからキャンプ場には向かない。であれば、景観の良さや、飲食や宿泊提供施設が隣接している特長を生かして、薄利多売的なただのキャンプ場ではなく、少人数に高付加価値を提供するグランピングに特化することで高単価で効率よく稼ぐのがいいのは、戦略的には正しい。コロナ禍も追い風だろう。だが、うまく差別化できないことには結局は価格競争になる。

 破産の要因が設備投資の償却負担の大きさなのだったら、破産でそれらが一掃されることである程度の経営の持続性は期待できるだろうが、キャッシュフローがマイナスだったのなら、夏にグランピングを始めるだけで黒字化できるものではないのではないか。

 規模の大きいスキー場で、一度潰れたが復活して黒字安定経営、という例も(ARAI、そして今後レースイがどうなるか…)、異業種参入の成功例も聞かないだけに不安はつきないが、まずはこのまま消えてなくならなかったことを祝いたい。