スキー場休廃止数の推移と近年まとめ

 「日本におけるスキー場の閉鎖・休業にみられる地域的傾向」(2014年:呉羽正昭)によると、日本で最初に閉鎖されたスキー場は1962年の石筵スキー場(福島県)、2012年までに開設されたスキー場総数は763か所で、そのうち閉鎖は241か所、休業は43か所、閉鎖・休業スキー場は計284か所で、これまでに開設された全スキー場数の37%に達し、2012年時点で営業していたのは479か所、ということらしい。

 営業スキー場数のピークは1994年の639か所で、1998年から急減し、閉鎖・休業のピークは2006年の21か所、2010年以降の閉鎖・休業数は8か所、7か所、7か所に減少している。

 私の調べでは、2013年以降も一桁が続き、2014年には3か所(白馬みねかた、柳津温泉、サンパティック斑尾;他にロープトゥのみが3か所)、2015年には2か所(マウンテンパーク津南、スカイ獅子吼)まで減ったが、2015/16シーズン以降の雪不足で再び増加傾向にある。

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(2019以降は推測)

 

 2019/20シーズンは営業するつもりだったのが雪不足で1日も営業できずにそのまま休止(復活見込みなしの実質閉鎖)となっているスキー場がいくつかあり、これを2019年にカウント(最終営業は2018/19だから)するか、2020年にカウントするか(2019/20は営業体制にあり、休止を決めたのは2020年だから)悩ましいところだが、「2018/19が最終営業」でそのまま終わりそうなスキー場は現時点で11か所(他にコロナ休止で再開しそうなところが3か所)と2桁復活の可能性がある。

 大穴: 19/20シーズン前に確定
 奥大山: 19/20シーズン前に確定
 スイス村: 19/20シーズン前に2シーズン休止発表(リフト老朽化のため)
 ミカタスノーパーク: 19/20シーズン前に休止(翌年以降未定)発表
 アサヒテングストン: 19/20シーズン中に自己破産
 わかぶな高原: 19/20シーズン後に村が支援打ち切り決定
 雁が原: 19/20シーズン後に自己破産
 花見山: 19/20シーズン後に休止発表(経営者夫婦高齢のため)
 揖斐高原: 19/20シーズン後に実質運営の町が撤退発表
 国見岳: 19/20シーズン後のホームページ更新なし
 魚沼大原: 告知なし(2009年12月には市が廃止検討)
 ぶどう、胎内、新保ファミリー: 19/20は雪不足で営業できず、20/21はコロナ休止

 今シーズン休止で「2019/20が最終営業」も今は2桁を超えるが、今シーズンはコロナ禍を理由とした休止も多く、最終的にいくつになるかはまだ見通せない。マウントレースイのように、運営会社が自己破産したが同じ出資者が別の受け皿会社を設立しているところもあり、2桁にはならない可能性が高そう。

 飯綱高原: 確定(20/21は地元有志が「雪遊び広場」として開放)
 雲辺寺: 確定(20/21シーズン前に発表)
 猪苗代リゾート: ホームページ更新なく廃止濃厚
 ばんだいx2: ホームページ更新なく廃止濃厚
 国設芦別: 指定管理の応募なく休止(あれば再開)
 芸北国際: マックアース撤退後の告知がなく不明
 石打花岡: 休止理由の発表なし
 エコーバレー: コロナ休止(来季以降も数年間は営業しない可能性を示唆)
 今庄365: コロナ休止
 天山リゾート: コロナ休止
 妙高スキーパーク: リフトケーブル他に不具合(再開は夏のゴルフ場の収入次第)
 マウントレースイ: 運営会社が自己破産も別の受け皿会社が設立される
 瑞穂ハイランド: 自己破産後も営業継続に意欲的だが譲渡先探しは難航
 飛騨高山: 豪雨災害により休止も再開に向けて市が復旧予算計上
 広島県民の森: 指定管理者が自己破産したが別の指定管理者が決定

 2020/21シーズンが最終営業となりそうなところは、リフト営業を終了するところが2か所(大湯温泉、三井野原)と、民間運営への切り替えが成就しなさそうな3か所(岩手県奥州市の越路、ひめかゆ、国見平)に、年内に存続か廃止か決定の宇奈月温泉も廃止濃厚か。

 キビしいところは昨シーズンの雪不足と今シーズンのコロナでやられていると考えればこれ以上大きくは増えないかもしれないが、報道や公表はされていないが瀬戸際のところも多いだろう。これからシーズン開始にかけて、2桁に増えてもおかしくはない。

 2011/12シーズンを最後に一旦休止した牧の入が2012年の休止にカウントされているのか分からないが2016/17シーズンに復活、2017/18シーズンにはARAIが復活、峰山高原が14年ぶりの新設、佐渡市営平がロープトゥをチェアリフトに架け替えといった増加要因もあるが、2013年以降で差引40近く減っている。呉羽氏のデータを基にすると、開業765か所のうち営業しているのは440か所ほどで、残存率は57%といったところか。

 設備更新が1990年前後で止まっているスキー場は多く(大半)、大規模更新を必要とする設備寿命が30~40年とすると、ここからの向こう10年で設備が老朽限界を迎えるスキー場が続出するが、その多くは設備更新費用を捻出・調達できないものと思われる。

 リフトは廃止するがロープトゥのみで営業を続けるところ(三井野原)、地元有志が雪遊び広場として整備して開放するところ(飯綱高原)など、「索道を有するスキー場」ではなくなっても、地域の憩いの場として存続するケースはあるだろうが、「地域外からの集客(集金)装置」として生き残れるのは、設備投資を継続できる資金力のある、規模・立地・知名度などに優れた一部のスキー場に限られ、当面、スキー場の休・廃止数は年間7~10程度の水準で推移していくのではないだろうか。