マウントレースイの運営会社が破産

 夕張のスキー場「マウントレースイ」や、「ホテル・マウントレースイ」「ホテル・シューパロ」などを運営する会社が破産を宣告し手続きを開始した。新型コロナウイルスの感染が収まらず、事業継続は難しいと判断したとのこと。

 当初は12/5からのオープン予定となっていたが、15日に今季の営業断念を発表しており、続いて24日になって破産の発表だった。

 もともとは夕張市夕張市出資の第三セクターによって運営されていた小規模なゲレンデ。1988年に民間に20億円で売却され、100億円以上を投じてコースを大幅に拡張、ホテルも建設されて1991年にスノーリゾートとして再開業。

 1990年代後半に経営難に陥り、所有者からの打診を受けて2002年に夕張市が約26億円で購入。2007年に夕張市財政破綻すると加森観光が指定管理者として運営を受託したが、2017年3月の契約期限で加守観光が撤退。

 夕張市は売却の為に入札にかけたが1回目は応札がなく、2回目の入札でも応札がなければそのまま閉鎖かというところで、中国人経営の不動産業者が2億3600万円で落札。

 新運営会社の社長は当初、「夕張は新千歳空港に近い立地が魅力。中国、台湾をはじめ、欧州のスキー客も誘致し、夕張発展の一翼を担いたい。将来は、夕張を『第2のニセコ』にしたい」と抱負を述べ、当面の改修費に100億円を投じるとしていた(夕張市は維持には25年間で62億円=2.5億円/年掛かると試算)。

 「第2のニセコにしたい」「当面の改修費に100億円」は大風呂敷を広げ過ぎではないかと思ったが、中国人誘客のメドがあるのであればありえない話ではないのかも、とも思ったもつかの間、コロナ禍によりわずか3年での撤退。そんな大きな更新投資をした話は聞かないので、当初目論みからすれば傷は浅いだろう。

 コロナは確かに予測不能インパクト巨大だが、あくまで一時的なことだとして、ニセコへの投資熱は全く衰えていないという。

 夕張の場合、コロナがなくとも、この3年間の運営が想定と違っていたのではないか。「空港から近い」以外にどれだけのポテンシャルを見ていたのか、リゾート開発としてどういう画図を描いていたのか。甘い見通しで安値で買ったが、イマイチそうなので早めに損切りしたというところか。ビジネスとしては正しいとしても、これで中国系資本への市民感情はますます悪くなる。

 夕張は内陸なので降雪量は少ないが、雪質は乾いていて軽い。気候的には中国内陸部に似ている言えるかもしれないが、そこほどは寒すぎないし、雪も降る。空港からのアクセスはいいので、中国・台湾や、今後は東南アジアのスキー初級者の中間層向けに、滑る以外のアクティビティやレッスンを充実させて現地でアピールすれば、そこにグリーンシーズンの目玉もあれば、第2のニセコとは言わないまでも、トマムのようにそこそこいい感じになれる可能性はあったと思うし、買った不動産屋もそう考えていたのだろう。

 だが、この苦しいコロナ禍を耐え忍ぶのではなく、傷が浅いうちの損切りを選んだ。しかしそうなると、「当面の改修費に100億円」は、その時は本気だったのか、リップサービスで盛りに盛った数字だったのか。「当面」といいつつこの3年間でほとんど何もされていなかったのだとしたら、ただの虚言だった可能性もある。

 夕張市としては、20億で売り、14年後にはるかにスケールアップしたものを26億円で買い戻したのだから、これが財政破綻の原因ではないと思うが、破綻しているので財政支援はできない。どこか他の救世主が現れなければ、このままスキー場もホテルも休止のまま、一時期のアライのように廃墟化していくことになるのだろうか。

 コロナが収束して外国人観光客が戻ってくれば、政府目標のように6000万人になるのであれば、またどこか(中国資本?)買い手が現れておかしくないとは思うが、その見込みがみえてくるまでは難しいのではないか。