2020/21シーズンまで3シーズン、おんたけ2240スキー場(現・御嶽スキー場)の指定管理者だった㈱アンカーとその現地法人王滝ツーリズムが、指定管理継続を求めて王滝村を提訴したとのことです。
王滝村は10年契約のところを3年で契約解除したのですが、昨年秋にその報道が出たときには、アンカーも赤字続きで辞めたがっていて合意の上での契約解消なのだと思っていました。
その後、「アンカーは指定管理者取り消し理由に納得が行かず、リフトの運行関連に必要な書類に署名・押印を拒否。村がアンカーに本年度の指定管理料2500万円(過去3年は年間5000万円)を支払うことで合意」という話が出てきて、そうなると「王滝村による一方的な契約解除だったけれど手切れ金を渡して解決したのか」と思いました。しかし提訴となると、2500万円は2021/22シーズンを別の指定管理者で営業するためだけの「必要書類への署名・押印」代だったことになります。
去年秋の報道では、2020/21シーズン終了後、王滝村議員全員で構成するスキー場特別委員会で「地域経済の活性化と地域雇用の確保のために指定管理料が使われていない」という指摘が相次いで、これを受けて村は、指定管理料の村内還元を条件に加えて指定をいったん白紙に戻した、ということでした。
一方的に契約条件を変更して解除したのだとなると王滝村に勝ち目はなさそうなのですが、「指定管理取り消しの理由は基本協定に基づく業務報告書の提出遅れ」という情報もあり、そうだとすると、この「業務報告書の提出遅れ」が契約を解除するに妥当かどうかが争われそうです。
提訴するということは勝ち目があるとふんでいるのでしょうから、締結した契約書に解除理由として「業務報告書の提出期限超過」が明記されているわけではないのでしょう。
業務報告書の提出期日が契約書に明記されているなら、軽微であっても契約違反として解除理由にする正当性はあると言え、「即時解除とするほどの理由ではない」として争うのは分が悪そうですから、契約書そのものには業務報告書の提出期日どころか、業務報告書の提出自体が記載されていないのかもしれません。
そうなると、その前の2年を含めて、業務報告書の提出をいつ・どのような期日設定で求めて、どう提出されていたかによって判断されそうです。事前に期日に余裕を持って通達していたのに毎年期限を超過して催促してもなかなか出てこなかったとなると契約解除理由として認定されそうですし、突然今日中に出せと言われて翌日に提出したら契約解除されたということなら不適切な契約解除と判断されそうです。
しかし、契約解除が契約内容に沿った適切なものであったのなら、解除した相手に指定管理料を支払ったのはなぜかということになります。リフトの運行関連に必要な書類への署名・押印を求めて提訴していたらスキー場を営業できないから止む無く支払ったということでしょうか。しかもその時に「これにて今後異議申し立てしない」という確約を取ることもなかったのは、相手がその確約を拒否したからでしょうか。だとするとゴネ続けられるのは見えていたことになります。
アンカーとしてもこのために王滝ツーリズムという会社を作っているわけで、理不尽な契約解除で損害が出ているなら賠償を求めることもありえるかと思いますが、アンカーが本当に指定管理を継続したいと考えているかは疑問で、和解金狙いでただ搾り取れるだけ搾り取ってやろうというようにも見えます。
村にとってやめられない、どうあってもやめたくない観光施設の運営に対して、加森観光にもマックアースにも見限られて藁をもすがる思いでの10年契約だったのかもしれませんが、あまりにも足元を見られすぎというか、脇が甘すぎというか、残念です。
スキー場としてもグリーンシーズンに集客するにしても、都市部や高速道路からのアクセスの悪さに加えて御嶽山の噴火懸念もあって、持続的な営業は正直なところ難しいだろうと思われます。人口700人ほどの村の財政のおそらく少なからぬ割合を投じることに、有形無形を含めてそれに見合った価値が本当にあるのかの判断まではできませんが、元村長の孫が支配人となってチャンピオンゲレンデを復活させようとするなど、もしかすると2005/06シーズンに民営化(指定管理者制に)してから最も、村民主体で一体となって再生に取り組んでいるところかもしれません。穏便に解決してほしいと願います。