奥州市3スキー場の行方

 町村合併で同一自治体が複数のスキー場を抱えることになり、すべてを支えられずに整理を図るということは珍しくありませんが、そうして3つの市営スキー場を持つことになった岩手県奥州市は、その3つのスキー場について、「今後運営するスキー場の数は1つ」「指定管理期間を22/23シーズンから3~5年程度とする指定管理者制」「その間に民間移譲に向けた検討と手続きを進め指定管理期間満了の翌シーズンからの民営移行を目標とする」という方針で進めることにするとのことです。

 この奥州市の3スキー場の扱いについて最初に目にしたのは2015年1月だったので、もう7年越しということになります。最初は「2018年度までに民間移譲を目指す」ということでした。

 これを受けて2017年5月に「民間移譲に向けた調査を始める。譲渡を希望する事業者の有無や条件などを把握し、2018年度に施設ごとの方針をまとめる」「8~9月に事業者向け説明会と現地見学会を開催。冬にも事業者との具体的な協議に入る」となりましたが、その後、音沙汰がなくなりました。

 2020年12月になって「第3回奥州市スキー場のあり方検討委員会が市役所で開かれ、事務局側の市商業観光課は協議のたたき台として、市営3スキー場を2021年度から休止したいとの考えを示した。休止の考えは最終決定ではなく、今年度末に方向性をまとめたい意向」という報道があり、2021年2月に市長から「市の運営であれば廃止となる方向に傾かざるを得ない。運営する組織が現れないと継続は難しい」という発言がありましたが、2021/22シーズンについては地元住民などからの要望により営業されました。

 この時に「次年度以降の営業については本年度中に結論を出す予定」ともあり、年度を少しまたぐ形にはなりましたが、その結論として上記の方針が示されたようです。

 実際に指定管理者を募集しても現れなければ、市直営は考えておらず原則は休止ということで、指定管理者の候補者はある見込みのようですが、全休止もありえる状況です。

 これまでの3スキー場の合計客数が、存続するスキー場に来るなら黒字化しそうですが、大体はそうはならず微増か横ばいというケースが多いです。そうなると赤字は減りこそすれ市が負担し続けざるをえず、指定管理期間終了後の民営化というのも難しそうです。3スキー場合計に近い客数になったとしても、索道関連の大きな更新投資をできるだけの利益になるかは分からず、10年単位での存続は厳しいかもしれません。

 飯綱高原スキー場のように、民営化できずにリフト営業はなくなったけれども、地元住民の管理・運営によって雪遊び広場として利用されている例もありますが、これは長野市の人口規模があってこそのことかとも思われます。

 自分に直接関係なくとも、雪国からローカルゲレンデがなくなっていくのは寂しく感じます。3つのうちの1つくらいは、何とか10年単位で存続してほしいものです。