皆川氏の発言:選手強化-1

 インタビュー記事での皆川氏の発言を抜き出してまとめてみる。

 まずは選手強化について。

 

「(強化のための)予算を5倍もかけている国と戦っている選手もいる。そのなかで成績を上げている彼らの努力はすごいが、十分に知ってもらえていないのは我々の能力のなさ。彼らが望む環境はまだまだできていない」

「古い組織図、やり方では、ヒト・モノ・カネの効率が悪かった。強化費が足りないと言っているのに、各競技が感覚で好きなことを実行してきた。無駄な経費ばかり かかり、選手に強化費を回せずに、選手に良い環境を与えられなかった。」

「現場に紐付いていることを、現場を把握しない人たちが意思決定する事も少なくなかった。現場の意見と世界情勢に対応できる組織図ではなかった。」

「今までは、たまたま成績が上がってきた選手に対してピントを合わせて、ターゲット(メダル)を取りに行こうとしていました。」

「いちばん重要視しているのは、僕は生産力だと思っています。われわれが仕組みとして生産力が足りないことは問題でした。生産力を定義し逆算する事で必ず選手のためになる。人間には平等に24時間、365日が与えられ、そのバジェットを選手も役割を得た強化スタッフも生産力を持って使い切る事がこれからの課題です。」

 

 これらは強化についての課題の現状認識について。これらへの今後の対応として、

 

「競技本部を組織形態から抜本的な見直しを行います。」

「物事のゴールに到達するために、蓄積型にしていく。人を変えればよいのではなくて、仕組みを蓄積し、そのうちの何%がうまくいっているのか、改善すべきか、ということを模索しています。」

「今後は直接担当理事とヘッドコーチがスピード感を持って情報共有をできるようになる。強化策も見える化できます。そうすれば、今まで流れなかった強化費等々が選手たちに流れる。まずは仕組みを作ってこの次の4年に対してやっていきたい。」

「時間は平等に与えられるわけだから絶対にやらないといけない。「これをどうやってつくるか、使うかが君たちの仕事だ」というふうにマインドから変えるということ。そして、この改革により一定の種目に関しては、かなり高確率でメダルが取れるようになる。」

「なぜアンダーチームの仕組みを変えたかというと、もしかしたら、2026年や2030年に札幌が冬季五輪の開催地に決まる可能性があるかもしれません。仮に決まったときに、「決まってから準備じゃ遅いよ」っていうのを、皆に言っている。だから、4年で回していくというのは短期的な話。その次のところがやっぱり本当のターゲットだと思います。」

「選手と連盟との信頼度を高めていきたい。たとえば、同じ言葉を選手に言ったとして、信頼していないコーチに言われても響かない。重要なのは、経営と同じで、役割分担がすごく必要。」

「日本の社会はピラミッド型で、上から階級制で底辺までなっていて、組織統制するには、すごくいい。しかし、ワールドカップで優勝や結果を求めるにはピラミッド型では理想的な組織ではない。本来であれば目的を達成するために全員が並列になる、サークル型に変わる必要があるんですよ。サークルは目的型であり役割分担の中のパートナーだから、選手・コーチを含めすべてのメンバーがフラットであるべきです。」

 

 

 よくしていく仕組みをつくって、改善状況を確認して、それを基に次の改善計画を立てる、というのは、いわゆる「PDCAを回す」といって、一般企業、特に製造業では常識的な考え方。そういう考え方がSAJ(アマチュアスポーツ界全般?)にはなかった、あるいは少なくとも、実践・定着していなかったということ。

 「見える化」も企業ではよく使われるワード。資料や表示を文字でなく図表や色分けなどで視覚的に分かり易くするという意味でも使われるし、ここでのように、どのように意思決定され実施されどういう結果だったのかよく分からない活動を外部からも分かるようにする意味でも使われる(こちらは「透明化」とも言われる)。

 PDCA見える化くらいは企業で管理職をしていれば基本用語だと思うが、逆に、そうでもなければなかなか馴染みのある言葉ではないだろう。「引退後すぐにも事業やビジネス等々やっていた」とも言っているが、経営管理的なことをきちんと学んでいる様子がうかがえる。(続く)