スキー未来会議 #2 -4

(前回から続く)

 それとも、「過去にしがみついたプロダクトアウト前提のマーケティング」の要点は「プロダクトアウト」よりも「過去にしがみついた」にあるのだろうか。だとしても、これは何を指しているのだろう。昔から変わり映えしないもの。例えばゲレ食はだいぶんと変わってきていると思うが、どうだろう。

 団体向けでサービスレベルの低いホテルが相変わらず多いとかいうことだろうか。個人的には、そういう宿は値段も激安でコストパフォーマンスとしては悪くないので有難い存在だし、そういうとこしか行ってないので中価格帯の宿のサービスレベルやコスパがどうなのか分からないのだが。

 「新たなコト提案を怠った」というのは、スノーシューハイキングだったり、圧雪車ツアーだったり、スノーモービル体験だったりの試みがまだまだ少ないということなのだろうか。ここ10年で、ただ滑るだけ以外の雪山の楽しみ方もずいぶん提案されていると思うのだけど。

 しかし実際、そうした滑る以外の楽しみ方の人気はどうなのだろう。それなりに人気で定着してきているのか、それほど人気ではないのか。それほど人気でないのだとしたら、それは宣伝の問題なのか、ただ需要がないだけなのか。

 さらに「大きな変化もなく、顧客接点を軽視しているスキー業界には未来がないと思っている。お客さまとの顧客接点を重要視し、お客さまのスキーシーンに踏み込んだ、過去とは違った「コト提案」を模索し、新たな「使用価値や感動価値」提案をするべき。今こそマーケット、顧客満足を再定義し、真のバリューポイントを探り、大きな枠組みで価値提案をするべき時代に突入したのではないか」 とも言っている。

  「顧客接点を軽視/最重要視」の「顧客接点」とは、つまり何か。「新たな使用価値や感動価値」とは例えばどういうものがあるか。「マーケット、顧客満足を再定義」って、これまでの定義は何で、それをどう再定義すべきというのか。「真のバリューポイント」って、それが分かれば苦労ないんじゃないのか。「大きな枠組みで価値提案」の「大きな枠組み」って何?

 何やらいかにもな言葉を並べ立てているが、あまりに教科書的だし、具体論がなさすぎて机上の空論に聞こえる。本に書かれたリクツを読み上げるだけの「意識高い系」みたい、というのは言い過ぎか。 

 スキー場エリアの新たな(埋もれていた)価値提案の成功事例としては、例えば、「雲海テラス」があるだろう。星野リゾートトマムで、夏場の観光の目玉として雲海に注目し、ゴンドラで登った山頂付近に雲海を眺めるためのテラスを設置したのは2005年ということで、竹田城が「天空の城」として注目され始めたのと同時期。トマムでの成功を受けて、その後、竜王びわ湖バレイでも設置され、岩岳では雲海ではなく白馬三山の景観を見るためのテラスが設置されている。(続く)