設備更新

 野沢温泉の長坂ゴンドラ架け替えは、2015年から「2020年頃予定」と報じられていたが、ホームページで「2021シーズン 新長坂ゴンドラ」と発表されている。設備更新を1年前から大々的に告知するなんて初めて見たが、工事が順調ということか。

 中間駅をなくし経路を直線的に引き直すこと(スピードアップも?)で所要時間は半分近くになるし、定員10人の着座式にするというから搬器はかなり大型化しそう。山麓駅のリニューアルも告知されているが、過去の情報では、2022年秋には「650席のレストランとカフェ、ショップ機能をもつ山頂駅「トップステーション」を新たに建設」と聞いている。どうせなら降り場を奥にして、やまびこゲレンデやスカイラインコースに直で滑り込めるようにしてくれるといいのだが。

 野沢温泉村にとって、スキー場をやめるなんてことは選択肢にないだろうから、ゴンドラ架け替えも山頂駅のリニューアルもいつかはしなくてはいけない。外国人を中心に客が増えている今がその時なのは、そうだろう。とはいえ数十億円もの投資は大変だ。

 この何年かでスキー場来客数が年数万人増えているから数億円の増収にはなってるだろうし、外国人客のおかげで宿が(しかも比較的高いところから)埋まっていれば、村の税収も増えているだろう。それでも、来シーズンはリフト料金がさらに値上がりして、志賀や八方と同じ5500円か、もしかするとそれ以上になるかも。

 びわ湖バレイはすっかり夏の方が客が多くて、夏はゴンドラ待ちどころか駐車場待ちも激しいとか。岩岳のテラスも、2年目となる今年は冬より多い客が来たとのこと。ゴンドラ往復だけだからリフト券単価は冬の半分かもしれないが、人件費の少なさを考えると利益率高そう。

 稼いで貯めたお金(+借入)で設備を更新、設備を新しく快適にすることで魅力・競争力が向上し、それを理由に料金上げ。レジャー産業の常道だが、スキー場ではもう20年以上もそれができていなかった。市場縮小の荒波は確かに厳しかったが、経営の無策も大きかったに違いない。

 スキー客数が底打ちしたと思われた2014年ごろ、スキー場再生の旗手としてマックアースがメディアによく取り上げられたが、2015/16シーズン以降の暖冬による客数減でその頃の勢いはすっかり影を潜めている。マックアースには設備更新サイクルを回すところまでは持っていけていないところが多いが、やはり資本力がモノをいう業界であり、知恵と工夫だけでは限界がある、あるいはすべてのスキー場が生き残れるものではないということだろう。

 ここにきて、遅まきながら、大手スキー場では設備更新が聞かれるようになってきた。日本スキー場開発は、岩岳のテラス、栂池のアスレチック、八方のマウンテンビーチと夏の投資が先行しているが、それは冬の設備更新のためでもあるはず。

 八方の活性化計画は、暖冬による客数伸び悩みのせいか、索道会社の融合が進まないせいか、一向に進展の話を聞かないが、スカイラインやパノラマの高速クワッド化はぜひとも実現してほしい。

 正直なところ、危険でないのなら、古いままで値上げしないでくれた方が有難かったりもするのだが、多くのスキー場で前回の更新は30年前、設備を使い続けられる時期は終わりを迎えつつある。ローカルゲレンデの消滅は止められそうにないが、中規模以上のスキー場は何とか存続してもらいたい。