TAKASU MOUNTAINS

 スキー場が集まる岐阜県奥美濃エリアは、今は市町村でいうと「郡上市」になるが、町村合併前の自治体名でいうと、明宝村、白鳥町、高鷲村に分かれる。中でも旧・高鷲村には、高鷲スノーパーク、ダイナランド、鷲ヶ岳、ホワイトピアたかす、ひるがの高原、郡上ヴァカンス村と、今も6つのスキー場がある。

 この6つを束ねて「TAKASU MOUNTAINS」と銘打ち、郡上ヴァカンス村以外で使える共通リフト券を発売し、郡上ヴァカンス村以外を周遊するシャトルバスを走らせるとのことで、専用サイトが開設されている。

 高鷲スノーパーク・ダイナランド・鷲ヶ岳・ひるがの高原の運営がマックアースで、鷲ヶ岳と隣接しているホワイトピアたかすもマックアースと提携して、鷲ヶ岳とリフトゲートを共通化することで共通券が設定されているので、「TAKASU MOUNTAINS」と言っても「マックアース(提携含む)+郡上ヴァカンス村」。

 しかも郡上ヴァカンス村はリフト券も別ならシャトルバスも行かないとなると、実質はただの「奥美濃マックアース」であって、郡上ヴァカンス村は同じ旧・高鷲村所在として名義を貸しただけのようなものか。

 郡上ヴァカンス村スキー場は、小さな「ホテル前ゲレンデ」であり、立地的にも奥まったところにあって決して人気ゲレンデではない(というか潰れてないのが不思議なくらいな)ので、呼ばれて仲間入りすることに何のデメリットもないから加わるけど、そのための設備投資はしない、ということだろう。

 手本は「HAKUBA VALLEY」だろうか。しかし白馬でも日本人でVALLEY共通券を買う人はいないだろう(長期滞在の外国人向け)。高鷲という、白馬のような海外での知名度がないから長期滞在の外国人スキー客はいないのはもちろん、日本人の宿泊需要も少なく宿泊施設も少ない場所で同じことをやるのはあまりにも挑戦的すぎないか。

 奥美濃エリアがバブル期以降の客数落ち込みが少なく済んでいるのは、東海北陸道の開通で近畿圏からの日帰りがしやすくなったからであって、現状はバスツアーも含めてほとんどが日帰り客だ。インバウンド(外国人観光客)を取り込みたいのはわかるし、長期宿泊客がほしいのもわかるが、奥美濃で狙うならまずは、高山や白川郷に行く途中に立ち寄ってもらうところではないのか。

 実際、兵庫県の六甲山スノーパークは、京阪神の外国人観光客を取り込むことで、12月の営業を安定させるための降雪機を増やす設備投資ができているのだし、滋賀県箱館山も、京都観光ついでの雪観光の外国人客でロープウェイ収入を増やしていそう。

 と思ってプレスリリースを見たら、さすがに長期滞在狙いではなかった。多言語化の促進と自動翻訳機の導入で外国人客対応の環境整備を進めるが、目指すのは「観光と組み合わせたミドル・ショートステイ型プランの提供」であって、バスツアー会社と組んで名古屋-高鷲-高山のバスツアーの提供を行うとのこと。

  「TAKASU MOUNTAINS」を名乗るのはタダだし、共通券の設定や専用サイト開設も大した費用はかからないが、問題はシャトルバスだろう。1日数本だけとはいえ、どれだけの経費がかかり、どれだけの利用者を見込んでいるのか。

 「持続可能な中山間地域の創造」を目指すマックアースとしては、あちこちのスキー場に手を出すことに比べれば、シャトルバスくらいなら財務リスクは極めて低いに違いないので、挑戦としては手堅い部類なのかもしれないが、にしても共通券とシャトルバスに需要があるとは思えない。あるとしたら、鷲ヶ岳のホテル客が高鷲ダイナに行くとか、ダイナランドのホテル客がワシトピアに行くとか?

 ちなみに、共通券は1日券5400円、2日券9700円、3日券14400円で、2日券・3日券は連続でなくてもシーズン中利用可能。さすがにHAKUBA VALLEYの1日券6100円、2日券11000円、3日券16300円よりは安いが、志賀高原や八方の1日券5500円、2日券が志賀9300円・八方9950円、志賀3日券13500円とは同等だったり高い価格。高鷲ダイナやワシトピアの1日券が4900円だから、2日券以上なら1日当たりはそれよりギリ安くはなるが…。