ひだ舟山スノーリゾート アルコピア、廃止から一転して営業継続?

 岐阜県高山市にある「ひだ舟山スノーリゾート アルコピア」は2022/23シーズンをもって廃止となりましたが、これを継続させようというクラウドファンディングがありました。地元で13年ロッジを運営している人の主催で、3/11に目標金額200万円で開始し、4月末までの募集期間に294人から451万円を集めていました。

 募集ページには「突然市より閉鎖すると告げられました」とありますが、2020/3/14の岐阜新聞で「岐阜県高山市は13日、市内の市営スキー場2カ所のいずれかを廃止する考えを示した。」(2か所とはモンデウスとアルコピア)と報じられ、2022/4/14には「高山市がアルコピアの廃止方針を固めた」と報じられて4/20にその廃止方針を発表しており、突然ではないと思います。地元ならなおさら、決定発表前に話があったのではないでしょうか。

 このクラファンの主催者は「どうにかならないかと何度も何度も市に掛け合い、スキー場を買い取り経営を継続させてもらえる形に進めることが出来ました」として

「今後私がアルコピアスキー場の経営を引き継いでいく中で、冬のスキーだけでなく、夏場はキャンプ場や音楽のライブイベントをし、またフォレストアドベンチャー(アスレチック)なども建設していきたいと思っています。アルコピアスキー場をテーマパークのような、みんなが楽しめる場所にしていき、オールシーズン利用できる施設を作っていきたいと思っています。」

と夢を語られていますが、コロナ前でも2015~2018年度の4年間で9千万円の赤字であり、当座の費用として数百万円の資金を募ったところで、市の許可があれば1年やってみることは可能かもしれませんが、継続は極めて困難なのではないかと思われます。

 これについて、高山市から正式な発表はなさそうです。

 昨年12月の市議会定例会で、廃止後についての議員からの質問に対して市側は

「施設の撤去に3年を見込んでおり、借地部分については令和5年4月からの3年間の土地貸借契約の延長を交渉している」

と回答されており、この時点ではまだ撤去予定です。これに続けての

「アルコピアを年間を通じた民間のレジャー施設として活用し、地域の活性化を図りたいという強い思いを持ち、準備を進めている地元の若い事業者がいる。会社を立ち上げて、森林空間を活用したアクティビティ施設も設立し、人気のヒマワリ園の開催や、伝統ある全日本ラリー選手権なども継続して受け入れ、施設を運営したいと考えられている。こうした意欲ある取組に対して、市としてスピーディーに策を講じるべきではないか」

という質問に対しても

「地域振興策の一つとして考えさせていただく」

と煮え切らない回答でした。この議員は早急な検討(イメージとしてはおそらくシーズン終了までの決定)と、施設の無償譲渡の検討も要望していますが、その後の情報がありません。

 その後3月までの間に高山市との話が進展して実際に会社を立ちあげ、高山市所有の施設を買い取る(譲り受ける)ことになってのクラウドファンディングなのだと思いますが、市の発表も報道も見つけられませんでした。

 このスキー場はもともと高山市の所有であり、継続を支持する地元利害関係者も多いことから、継続のハードルはまだ低い方だとは思われます。クラウドファンディングは目標金額未達でも募集者の手に渡るもので、そこに400万円以上集まっているので、チャオ御岳とは違って事業継続の見込みが極めて高い(と出資者は考えて出資した)ということだと思いますが、信頼できる情報がほしいところです。

岩岳の近未来像予想(妄想)

 日本スキー場開発㈱が、岩岳山麓エリアにある敷地の一部を、不動産(ホテル)開発を進めるために、有力な不動産ディベロッパー(国内法人だが現段階では非開示)に対して土地の譲渡に関する優先交渉権を設定したとする発表をしています。物件引渡日は早くとも2024年と想定しているとのことです。

 スキー場に隣接する土地を早い時期に買い取っていて、再開発時にホテル誘致を検討しているというのは、ここ数年、一時期のマックアース社長に代わって「スキー場再生人」としてメディア露出の増えている岩岳リゾート社長のコラムだったかインタビュー記事だったかにもありましたが、貸地にして誘致するのかと何とはなしに思っていたので、土地売却というのは少し意外でした。ディベロッパーはその方がやりやすそうですが、岩岳リゾートとしても資産はなるべく持たずに運営に徹するのが良いということなのかもしれません。

 売却するのは「敷地面積:約 40,000 ㎡の一部(岩岳リゾートが自ら建設するスキーセンター等の予定地を含む)」ということですが、現在のゴンドラ山麓駅やその前のロータリーから、南側の長いペアリフト前のレストハウスやその奥の第2駐車場までで、2万m2ちょっとぐらいでしょうか。メインの駐車場も同じくらいの感じです。

 早い時期に買い取った隣接の土地というのはおそらく、来年12月完成予定の新ゴンドラ山麓駅ができるであろう、現在のゴンドラ山麓駅の北側、旧パラダイストリプルリフト乗り場付近一帯の平坦地ではないかと思われ、ここも同じく2万m2ぐらいの感じです。

 合計6万m2以上になりますが、これらのうちの約4万m2を所有していて(メイン駐車場が岩岳リゾートの所有ではない?)、その一部を売却するということのようです。

 岩岳では現在、チケットセンターや更衣室、ロッカー、レンタルショップ売店、レストラン、スクールカウンターなどのベースセンター機能が複数の建物に点在していて、これらをまとめた新ベースセンターを新ゴンドラ建設後に整備する予定もあり、これは新ゴンドラ山麓駅付近に作られるのかと思われます。

 そうなると、買い取ったのであろう土地を売ってそこにホテルが建つのではなく、買った土地に自社施設を集約して以前からの土地をホテル用に売る、ということかと思われます。買った土地に新ゴンドラ&新ベースセンター建設→現在のゴンドラから第2駐車場にかけてを更地にして売却→ゲレンデ直結のホテルが建設される、でしょうか。

 広い土地があってホテルもスキー場が所有・運営するなら、ベースセンターもゴンドラ山麓駅もホテルも一体化するのがいかにもリゾートっぽくってよさそうですが、それは投資額的にもリスク的にも難しそうです。現在の土地で運営しながら新たに作って機能を移してとなると、上記の段取りがよさそうです。

 買った土地に新ゴンドラ山麓駅と新ベースセンターだけで2万m2ということはなく、そこには大型バスの乗降・待機場もできるでしょうが、一般客向けの駐車場はできても有料かプレミア客向けになりそうで、メイン駐車場からは今よりも少し遠くなりそうです。

 資金が潤沢なら、新ゴンドラ完成後すぐ、2025年のグリーンシーズンのうちに新ベースセンター建設に着工し、完成までいけるでしょうか。建設と並行して既存施設の取り壊しを進めれば、2026年グリーンシーズン時にはホテル建設の着工も可能かもしれません。であれば最速で2028年の開業でしょうか(そんなにトントンとは進まないでしょうが)。

 グリーンシーズンの客の方が多くなったとはいえ、冬以上に日帰り客比率が高いのではないかと思われます。「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート」を目指すとしていますが、夏の滞在客、特にホテルに長期滞在するとなると外国人客や比較的富裕な層ということになり、夏にそういった客層の呼び込みはニセコでも多くありませんし、白馬エリアとしてもまだまだこれからかと思われます。

 岩岳のホテルというのも、ディベロッパーとしては投資リスクを考えると、通年営業の大型ホテルよりも、ニセコで建設されているものの多くがそうであるように、貸出利用を想定した分譲コンドミニアムになるのかもしれません。(ディベロッパーとしては分譲販売した時点で投資回収できる)

 ホテルは個人的には関係しませんし、何ならベースセンターだって個人的には今のままでもまったく構わないのですが、岩岳リゾートの経営が順調に運び、リフトがこれ以上減ることなく順次更新されていくことを願うばかりです。

菅平、ICSを導入して10/20前後のオープン目指す

 菅平高原が裏太郎ゲレンデのファミリーコースに人工造雪機(ICS:アイス・クラッシャー・システム)を導入し、9月中旬から造雪を始めて10/20前後のオープンを目指すと発表しました。

 当初のコース幅は15m弱とイエティなどと同様のヒモゲレンデですが、コースの標高差120mは、関東圏で11月上旬までにオープンするゲレンデ(ICS及び横手山)では最大となります。立地面ではイエティや軽井沢プリンスに劣りますが、この時期に滑りたがる人には大きなハンデにはならないでしょうから、それこそイエティや軽井沢プリンスと同等かそれ以上の人気・混雑が予想されます。

 12/8までを早期営業期間として、この期間はシーズン券不可で、営業時間は9時~15時、ただし混雑時は午前(9時~12時半)と午後(11時半~15時)の入替制(1日券を販売しないということ?)とする場合があるということです。経営判断として妥当と思われ、他に天然雪ゲレンデが続々とオープンするまでの休日は入替制になるのではないでしょうか。

 片道3hかけて3.5hしか滑れないとか、6h滑ろうと思ったら半日券を両方でおそらく1日券の1.6倍くらいの料金になるのは残念で、それなら9時-12時・13時-16時の2部制にして12時-13時にゲレンデ整備してくれてもよさそうです。(ザウスが思い出されます)

 かつて岐阜県奥美濃エリアには4つのICSゲレンデがあり、しかも鷲ヶ岳とウイングヒルズ白鳥はコース長1㎞前後、標高差200m前後と、イエティや軽井沢プリンスの2倍以上の規模のものでした。だからこそ続けられなくなったのかもしれませんが、コース長は500mそこそこですが標高差が140mあるホワイトピアたかすには何とか続けてほしいものです。

 設備費も運用コストも人工降雪機よりも相当に高いであろうICSを導入するのは、なかなかに思い切った経営判断だと思います。報道発表資料には

「冬の修学旅行は、催行時期が年々早まっている傾向にあり、例年予定通りにスキー場をオープンできるかどうかの判断が難しいことが多々ありました」

とあり、12月上旬のオープンを確実にしたいということもあるでしょうが、それだけなら気温の低い菅平なら、同じ予算で通常の人工降雪機を多数導入して滑走エリアを広くした方がよいようにも思います。

 トマムが、予定変更の難しい外国人観光客向けに、オープン予定時期に確実にオープンできるよう、北海道では珍しく人工降雪機を導入していますが、菅平もそれに近いと思われます。

 ただ、今回の対象ゲレンデは、上部は特にそれなりの中斜面であり、初心者の多い修学旅行生向けではありません。修学旅行の催行時期が早まっているといっても、2月下旬や3月だったのが1月や12月下旬が増えているということと思われ、修学旅行向けにはICSはほとんど関係ない、あるとしても最悪級の雪不足に備えた保険という位置づけになるのではないかと考えられます。

 報道発表資料には

「選手活動をされている方々は早く雪上トレーニングができる環境を探して、海外遠征に行くこともあります。早い時期に確実にオープンできることで団体や選手層の方々は安心してスケジュールが組めることができ、トレーニングを開始できます 」

ともありますが、こちらはさらにこじつけ感が強いように感じます。

 確かに皆川賢太郎氏はSAJの競技本部長時代に「年中滑れるスノードーム」はレジャーだけでなくトレーニングにも有用であると語っていましたが、10月下旬というとヨーロッパで大会が始まる時期であり、海外遠征に行くクラスの選手がその時期にトレーニングに使いたいと需要がどれほどあるのか。海外遠征をさておけば、早朝貸切営業をすればそれなりの需要はありそうですが。

 いろいろと副次的な目的を述べていますが、基本は、イエティや軽井沢プリンスの混雑を見て、あるいは横手山の様子を見て、菅平の気温(対象ゲレンデの標高1320~1440mはイエティとほぼ同じ)や立地なら採算が取れると考えたということでしょう。

 イエティは最速を譲らないでしょうから、菅平のこの「10/20前後のオープンを目指す」というフワッとした発表を受けて、10/13(金)と過去2番目に早そうな日付とするのか、最速タイでよしとして10/20(金)にするのか。

 いずれにしても10/20に2か所となると、2017年にイエティが10/7(これが最速)、狭山が10/21にオープンしたのを上回ることになり、菅平が10/21になったとしてもこの時期に屋外スキー場2か所というのは日本史上初ではないかと思われます。

 そうなると、10/21,22や28,29の週末の混雑がイエティと菅平でそれぞれどうなるか。菅平なら行こうという新規顧客はそう多くなさそうなので、総客数が大きく変わらないのなら、1か所が2か所になることでイエティのオープン週末の客数は半減、あるいは最初ということで菅平に流れてイエティは穴場になったりするのか。それとも例年ほど混雑しなさそうならと合計客数が増えたりするのか。

 軽井沢プリンスが例年どおり11/3オープンとすると、11/3-5の3連休のこの3か所の混雑はどうなるのか。さらにその翌週には横手山がオープンしているかもしれません。

 名古屋・大阪の人にとってはウイングヒルズのICS営業休止でシーズンオープンが2週間遅くなるという人が増えそうですが、首都圏の人にとっては10月下旬から11月上旬の選択肢が増え、混雑が緩和されて、喜ばしいシーズンになりそうです。

ウイングヒルズ白鳥 来シーズン情報

 月山や乗鞍に滑りに行く人、サマーゲレンデに滑りに行く人、早期受注会に行く人と、シーズンの終わりと始まりが交差する時期になりました。

 シーズン券に関しては、シーズン中に翌シーズンの早期販売を始めるところも出てきていますが、早割1日券も出始めました。

 サマーゲレンデ営業中の、岐阜県奥美濃エリアのウイングヒルズ白鳥は、6/9から9/30まで超早割として、1日券4枚セットを12,400円で販売します。昨年は9,800円でしたから25%を超える大幅な値上げとなります。

 昨年は夏以降に燃料費高騰などで値上げムードになって当日1日券は4800円から5000円に200円値上げ、10/1以降の早割(1日券4枚セット)も10,400円から11,200円に800円値上げされていたのに対して、6月販売開始の超早割は据置きでしたので、2年分まとめての値上げということではありますが、それにしても大幅です。

 と思ったら「18,000円~22,000円 → 12,400円」という表示があり、これは、平日4200円→4500円、休日5000円→5500円に値上げということと考えられます。これで当日は2年で700円の値上げに対して超早割は1枚当たり650円アップ、値引き額は2350円から2400円に微増、割引率にすると48%から44%弱に縮小ということになります。

 200円の値上げでは全然足りなかったということもあるでしょうし、高鷲スノーパークが4900円→5400円、めいほうスキー場が4800円→5200円という昨年の値上げを見て「もっと上げてもよかった!」と思ったのかもしれませんが、このままだと奥美濃エリアの盟主(最大規模・最多客数)である高鷲スノーパークよりも高いことになってしまいます。高鷲も少なくとも5500円に、あるいはそれ以上に上げてくると見込んでのことでしょうか。

 過去を振り返ると、

・2012年:12/9まで販売で1枚2,500円(3回で1回無料だったから実質は7,500円で4回)

・2016年:7/18まで販売で3枚7,500円(食事券500円*3枚付・3回で1回無料)

・2019年:8/31まで販売で4枚8,900円(食事券500円*3枚付・3回で1回無料は廃止)

・2021年:9/30まで販売で4枚9,800円(食事券なし)

・2023年:9/30まで販売で4枚12,400円

となっており、2019年から値上げペースが早く・大きくなっています。

 超早割が12,400円となると、10/1からの早割は、もともとの超早割との価格差600円を踏襲するなら13,000円に、1枚売りは3,400円か3,500円でしょうか。奥美濃では数年前まで早割だと2000円台が当たり前だったものですが、昨年で既に鷲ヶ岳が3,300円、高鷲スノーパークが3,500円、めいほうは3,700円になっており、中規模どころではホワイトピアたかすがまだ2,900円でしたが、ここも値上がりされるのでしょう。

 ウイングヒルズの超早割は、有効期間が2024/3/24(日)までなっており、これは早々に延命営業を頑張るつもりはないとの宣言です。かつては終了時期を明言せずに、雪出し・雪寄せの努力を重ねて4月中旬までできる限り営業したものでしたが、近年はその努力具合が薄まっていました。あとは、そんなに労力をかけなくても滑れる場合に延長営業するのかどうかが焦点となります。

 そして値上げよりも3/24終了よりも衝撃的なのが「※2023-24冬シーズンは天然雪で12月にオープンする予定です。」という1行です。ああ、とうとうICS(人口造雪機)による早期営業を諦めてしまった!

 かつて奥美濃では4つのスキー場がICSを利用して11月から営業を開始していました。特にウイングヒルズと鷲ヶ岳が最速を競っていて、鷲ヶ岳は10/30、ウイングヒルズは10/24にオープンしたこともあり、全国でもイエティ、狭山に次ぐ3番手でした。しかし5年前に鷲ヶ岳が11月開始をやめ、そして今年はウイングヒルズもと、最速を争っていた2つが撤退ということになります。

 そもそも4つもあるのが多すぎるということは言えると思います。ウイングヒルズと鷲ヶ岳の2つだけの期間も、イエティや軽井沢プリンスほどのリフト待ちではなかったのではないかと思います。そんななか、ゴルフ場がある鷲ヶ岳に続いてキャンプ場があるウイングヒルズがやめるのは、あるいはICSコース距離の長い順に撤退しているというのは、必然だったのかもしれません。

 残る2つのうち、白鳥高原もゴルフ場です。だからだと思いますが、昔からオープンは11/20前後と4つの中では最も遅く、無理な早期オープンはしてきていませんでした。エネルギーコスト高騰のなか、白鳥高原もいつICS営業をやめてもおかしくないのかもしれません。あるいは、2つに減ったことで採算が改善して継続されるのか。

 残るホワイトピアたかすに関しては、前記の3つと違って夏営業を行っておらず、逆にそれで(冬営業だけで)よくやれているとも思います。

 ウイングヒルズは、以前はグリーンシーズンはマウンテンバイクとピスラボマットによるサマーゲレンデに力を入れていたのですが、コロナ禍以降は親会社であるアルペングループの後押しからキャンプ場に力を入れており、これが好調なのかもしれません。サマーゲレンデの営業日数は、平日営業は盆期間中だけどピーク時よりも大きく減って、そのかわりキャンプ場は4/21から12/3までとなっており、昨年はICSによる冬営業とキャンプ場が重複している期間がありました。

 「天然雪で12月にオープン」というのは、ウイングヒルズにはICS以外は普通の人工降雪機はなかったのだと思います。そうなるとオープンは、ICSのあるメインのアトリウムゲレンデにはピスラボマットがあって雪が溶けにくいとはいえ、これまでのゴンドラ営業開始よりも遅くなるかもしれません。

 ゴンドラ営業開始は去年だと12/17、過去11年の中央値で12/19です。しかし2015/16、16/17、19/20は1月の中旬や下旬までゴンドラを動かせませんでした。今どき奥美濃の中規模ゲレンデで人工降雪機なしは厳しいと思います。あのクラスの雪不足なら正月明けまで営業できなくても仕方がないと腹を括っているのか、そうなったらICSを動かすのか、今後は普通の人工降雪機を導入するのか。

 これで今年の奥美濃のオープンは、ホワイトピアと白鳥高原がおそらく11/18で(白鳥高原は11/23や25かも)、次いで降雪機に力を入れいてる高鷲スノーパークとめいほうが12月の上旬から半ばにかけて、そこから遅れてかつては10月オープンもあったウイングヒルズと鷲ヶ岳ということになりそうです。

 ウイングヒルズがICSをやめるのは今年だけで来年以降の復活があるのか、それとも普通の降雪機を導入してICSは完全に諦めるのか。気になります。

(所感)スノーリゾートの活性化・形成

 スノーリゾートの活性化・形成に関する観光庁主催のこれまでの会議の様子を振り返ると、最初の「スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会」では

「スノーリゾート地域の活性化のためには、リピーターの実施回数の増加、スキー人口の底辺拡大の他、新市場開拓(インバウンドのような新しい層を取り込む)も重要」

「連休のあり方について政府で検討いただきたい」

などの国内客振興向けの意見・要望も多く出ていました。

 しかしこれに続く「スノーリゾート地域の活性化推進会議」ではもうインバウンド誘致一辺倒のようになっており、「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」を経て始まった補助金事業のタイトルは「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」です。

 このタイトルからも分かるように、今ではいかにインバウンド誘致の世界的競争を勝ち抜いていくかにフォーカスされるようになっています。

 その結果、資本の論理を前面に押し出した、欧米の成功事例をまねてのキャッチアップ傾向が強くなっているように感じます。

 最初の検討会での幅広い提言というのは「とりあえず現状調査して課題を洗い出した」というものであり、言い方を変えれば「的が絞られておらず総花的」とも言えます。

 そこに優先順位を付けて絞り込んでいくことは必要ですし良いことだと思いますが、「インバウンドが重要だからまずはインバウンドから」という意思決定プロセスが示されずになし崩し的に絞られているのは気に掛かります。

 観光業の原点が家族経営的な民宿であるのは日本に限ったことではないと思いますが、観光の産業化という点では50年以上も先行してそうなヨーロッパと比較すると、日本はまだその状況が根強いように思います。

 特に、富裕層が多く、中間層でも週単位での休暇が当たり前の欧米的なリゾート需要への対応は、国内にそういった状況がないことから供給数が少ないのは確かでしょう。

 そういった世界基準のリゾートのサービスレベル提供については、外資系高級ホテルチェーンの参入で強化されているためか、報告書では「日本らしい滞在を求める人に、独自の旅行目的像を造っていくことも課題」と挙げられていますが、「おもてなし」の本質は「個人の気遣い」であるかと思います。

 それは文化的な慣習を背景に個人レベルで身に付けられたものが多く、これを組織的に訓練する機関はほとんどないのではないでしょうか。観光地全体を自治体と企業と地元住民が一体となって運営していく体制の必要性や、そのための人材育成の必要性なども報告書で課題として挙げられていますが、それは現場の最前線でサービスを提供する人の育成システムという点でも同様と思われます。

 遅れているということは学ぶべき手本がたくさんあるということでもありますが、文化・歴史の異なる他国の先行事例がそのままあてはまるとも限りません。自国の特徴にあった仕組みを作っていかなければいけませんが、人材育成などは十年単位の長期取組が必要であり、そうした単年度の予算ではどうにもならない取り組みが日本でうまく進んでいくとはなかなか思えず、不安です。

 「国際競争力の高いスノーリゾート形成」はあくまで海外からの長期滞在客を想定したものです。産業政策としての国の支援が、大きな資本を要するが大きなリターンを見込める分野に重点的に配分されるのは仕方がないというか当然のことであるとも思います。

 しかし一方で、これまで「おもてなし」を支えてきた中小・零細(個人)事業者や、市場は縮小していくが比率としてはまだまだ大部分を占める国内客需要に対してどうしていくかがなおざりになっているように感じられるのは、非常に残念です。

 観光業の宿願は、観光業経営者の多くが口をそろえるように「需要の平準化」であるかと思います。これはスノーリゾートにとってはまずはグリーンシーズン強化ということになりますが、観光業全般での「需要の平準化」への最たる対策は「長期休暇の分散化」であるかと思います。

 しかしこれはもう社会(学校を含む)の休み方の慣行を根底から変えるにも等しく、国家のグランドデザインとして少子化対策並みの政策対応が必要なように思われ、だから一向に手つかずのままなのかと考えられます。

 優先順位として、まず今は「国際競争力の高いスノーリゾート形成」のために、地域一丸となっての取組を支援するというのは正しい方向性であると思いますが、対策はより困難でも、市場規模として大きく安定的である国内客向けの活性化についても、忘れずに取り組んでいってもらいたいと思います。

国際競争力の高いスノーリゾート形成の促進に向けた検討委員会

 「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」の報告書での提言を受けるように、2020年度から「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」という補助金制度が始まります。地域単位で募集し、投資額の最大半額を補助するものです。これは今も続いていて2023年度も募集されており、そろそろ採択結果が各自治体に通知される頃合いです。

 2020年度と2021年度は18地域、2022年度は10地域が採択されていますが、実数では20地域となります。うち9地域は3年連続で採択されています(札幌、キロロ、安比・八幡平、蔵王、湯沢、妙高、志賀、白馬、郡上)。それまで2年連続で選択されていた大雪、たざわ湖、夏油、塩原、野沢、斑尾は、おそらく、申請はしたけれど予算の関係か2022年度は採択地域数が大きく減ったことから対象から外れたのではないかと思われます。上記以外では、ルスツ(2021年度)、会津磐梯(2020年度)、米原(2021,2022年度)、神鍋(2020年度)が採択されています。

 この補助金助成事業も3年が経過したということで、2022年12月から2023年1月にかけて「国際競争力の高いスノーリゾート形成の促進に向けた検討委員会」が開催されました。「これまでの取組における成果と課題を整理するとともに、より効果的な支援のあり方を検討する」ためのものです。

 この検討委員会では、「国際競争力の高いスノーリゾート」として、スキーを目的として訪日する欧米豪のスキー上級者(の特に富裕層)をターゲットとした「カテゴリー1」と、観光の一部に雪遊びを組み込むアジアからの観光客をターゲットとした「カテゴリー2」に分けて、補助金事業としては投資額の大きくなるカテゴリー1に重点を置くこと、そのためにカテゴリー1の基準を明確にすることが行われました。

 オーバーツーリズムの問題などもあって国の観光政策自体がインバウンドの人数から質(消費額)重視に移行していること、補助金事業も費用対効果が問われること、どこが弱くてどこに集中的に投資すべきかを明確にするのは経営としては当然であり、大学を「グローバル」と「ローカル」に分け補助金にメリハリをつけるようにしたのと同じ考えです。

 委員会では、これまでの振り返りとして、「採択されて補助金を受けられるようにするための取り組みが地域でまとまるきっかけとなっている」ことを評価し、「地域経営の取り組みを補助金採択の基準にしてより一層推進すべき」とするとともに、そうするにあたってのマネジメント人材の不足、そうした人材を育成する場の不在も挙げています。

 「日本のスキー教師はスキー技術を教えるだけだがヨーロッパではそのスノーリゾートを楽しむタウンガイド的な役割も果たしているところもある」ことや、あるいは「スキー教師がバックカントリーの山岳ガイドを兼ねていて、それらの資格認定や育成に地域や自治体で取り組んでいる」という紹介もされていました。

 「スキー教師兼タウンガイド」が自然にそうなったのか地域で戦略的にそうしたのか分かりませんが、自然発生的だとしても、それは長期滞在を基本とするリゾート地だからです。日本にその下地はなく、スキー場のベースエリアにガイドが必要なタウンもほとんどありません。

 「リゾートタウン」として街が形成されて、スキー以外の街での遊びやアプレスキー(スキー後の夕方以降の楽しみ)の場所がたくさんあってこそのタウンガイドです。ニセコでも白馬でも野沢温泉でも、ショップガイドがあれば事足りそうで、タウンガイドが必要なほどのスノーリゾートは日本にはなさそうに思われます。

 バックカントリーガイドの育成に地域や自治体が積極的に関わっていくのは良いと思いますが、タウンガイドに関してはガイド育成よりもまずはガイドが必要なくらいのベースタウンの充実が先のように思います。

スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会

 「スノーリゾート地域の活性化推進会議」は2019年3月で終わり、続いて2019年12月からは「スノーリゾートへの投資の課題・ボトルネックを明らかにし、解決方策について検討」するため、「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」が始まります。

 現場サイドからの要請もあるでしょうし、観光庁サイドとしても、投資家を呼び込んで自律的に持続していってもらわないと困るので、その地ならしが必要という認識は強かったのだと思われます。

 2020年4月に出された報告書では、「スノーリゾートの現状と課題」として、

・国内客は減少傾向だがインバウンドの成長は今後も見込まれることから国際競争力の高いスノーリゾートを形成することが重要である

・借地であることや敷地境界の不明確さから索道事業の譲渡が困難である

・スキー場が供給過剰である

・スキー事業者が過大な借金により新規投資ができず経営が硬直化している

・アジアを中心としたインバウンドの受入体制を整えることで市場拡大が見込まれるが事業者が小規模に分散しており投資が進まない

・収益源が索道事業のみであることが低収益の要因である

ことなどが挙げられています。よって、投資環境整備の方向性として、上記の課題を解決すべく、

・索道事業者の資本統合(一山一社化)

・ベースタウン事業者の小規模資産の統合

・所有と運営の分離(資本の分離)を推進することで投資の受け皿を作り規模の経済で収益性を向上させる

・誘客の組織化(DMO:観光地域づくり法人を設立して地域全体で取り組む)を進めていくことでスノーリゾートの魅力を造成する

ことなど、地域をまとめていくことが鍵であるとしています。その取り組みのステップとして、まず(STEP 0)は

・投資環境整備の国の支援方針策定・地域への浸透を図る[実施時期目安:2020年]

次(STEP 1)に、

・地域連携協議会の設立、エリア一体のマスタープラン策定、エリア共通施策(共通リフト券・周遊バス等)の企画・実行、スモールパイロット施策(小規模かつ実証実験的な設備投資等の取組)の実施を通じて関係者間で成功体験を共有することで地域の一体感を醸成する[2020~2021年]

その後(STEP 2)、

・索道会社の資本統合による効率的な経営/運営体制の構築や不動産保有/管理会社の設立によるベースタウン投資の受け皿整備による地域全体での強固な組織化を図る[2021~2022年]

ことで投資促進に向けた環境が整備できる、としています。

 投資環境という視点なので当然ですが、資本の論理が前面に押し出された提言内容となっています。「国際競争力の高いスノーリゾートを形成する」のが目的で、そのための投資環境を整備するにあたっては、課題認識も解決策も至って妥当なものだと思われますが、そういったいかにも経営学的な正解を押し出しても、現場はもっと感情的でそのようには進まないのが現実だと思います。(そんなこと理解した上で、あるいはそんな当たり前の正解が共有されていないからこそ、あえて経営学的な正解を強く全面に打ち出したのかもしれませんが)

 また、この報告書の1~2年後にもう索道会社の資本統合とは、実施時期目安は理想(願望)的過ぎて「絵に描いた餅」も甚だしいと感じます。本当に日本のあちこちでそんなスピード感で物事が進んでいくと考えているのだとしたら、現実が見えていないように思います。コロナ禍でそれどころではなくなりましたが、コロナがなくてもほとんどの地域でまだせいぜいSTEP 1の途中だったのではないでしょうか。