スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会

 「スノーリゾート地域の活性化推進会議」は2019年3月で終わり、続いて2019年12月からは「スノーリゾートへの投資の課題・ボトルネックを明らかにし、解決方策について検討」するため、「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」が始まります。

 現場サイドからの要請もあるでしょうし、観光庁サイドとしても、投資家を呼び込んで自律的に持続していってもらわないと困るので、その地ならしが必要という認識は強かったのだと思われます。

 2020年4月に出された報告書では、「スノーリゾートの現状と課題」として、

・国内客は減少傾向だがインバウンドの成長は今後も見込まれることから国際競争力の高いスノーリゾートを形成することが重要である

・借地であることや敷地境界の不明確さから索道事業の譲渡が困難である

・スキー場が供給過剰である

・スキー事業者が過大な借金により新規投資ができず経営が硬直化している

・アジアを中心としたインバウンドの受入体制を整えることで市場拡大が見込まれるが事業者が小規模に分散しており投資が進まない

・収益源が索道事業のみであることが低収益の要因である

ことなどが挙げられています。よって、投資環境整備の方向性として、上記の課題を解決すべく、

・索道事業者の資本統合(一山一社化)

・ベースタウン事業者の小規模資産の統合

・所有と運営の分離(資本の分離)を推進することで投資の受け皿を作り規模の経済で収益性を向上させる

・誘客の組織化(DMO:観光地域づくり法人を設立して地域全体で取り組む)を進めていくことでスノーリゾートの魅力を造成する

ことなど、地域をまとめていくことが鍵であるとしています。その取り組みのステップとして、まず(STEP 0)は

・投資環境整備の国の支援方針策定・地域への浸透を図る[実施時期目安:2020年]

次(STEP 1)に、

・地域連携協議会の設立、エリア一体のマスタープラン策定、エリア共通施策(共通リフト券・周遊バス等)の企画・実行、スモールパイロット施策(小規模かつ実証実験的な設備投資等の取組)の実施を通じて関係者間で成功体験を共有することで地域の一体感を醸成する[2020~2021年]

その後(STEP 2)、

・索道会社の資本統合による効率的な経営/運営体制の構築や不動産保有/管理会社の設立によるベースタウン投資の受け皿整備による地域全体での強固な組織化を図る[2021~2022年]

ことで投資促進に向けた環境が整備できる、としています。

 投資環境という視点なので当然ですが、資本の論理が前面に押し出された提言内容となっています。「国際競争力の高いスノーリゾートを形成する」のが目的で、そのための投資環境を整備するにあたっては、課題認識も解決策も至って妥当なものだと思われますが、そういったいかにも経営学的な正解を押し出しても、現場はもっと感情的でそのようには進まないのが現実だと思います。(そんなこと理解した上で、あるいはそんな当たり前の正解が共有されていないからこそ、あえて経営学的な正解を強く全面に打ち出したのかもしれませんが)

 また、この報告書の1~2年後にもう索道会社の資本統合とは、実施時期目安は理想(願望)的過ぎて「絵に描いた餅」も甚だしいと感じます。本当に日本のあちこちでそんなスピード感で物事が進んでいくと考えているのだとしたら、現実が見えていないように思います。コロナ禍でそれどころではなくなりましたが、コロナがなくてもほとんどの地域でまだせいぜいSTEP 1の途中だったのではないでしょうか。