日本スキー場開発㈱ 決算報告資料

 日本スキー場開発㈱の決算説明会資料が出ている。

 冬の回復にグリーンシーズンの順調さもあり、1年で黒字転換を果たして一安心。

<ウインターシーズン>

 国内客数は2019/20シーズンを超えた。2019/20は災害級の少雪にコロナによる春スキー強制終了という散々なシーズンだったとはいえ、緊急事態宣言下での客回復は心強い。しかしもちろんインバウンドはほぼ9割減と壊滅的。八方は国内客に関しては2018/19シーズンの水準をほぼ回復しているが、インバウンドが4割を占めていただけに苦しいところ。

<グリーンシーズン>

 7月決算なので期またぎになる。今年は7月が天候不順だったので八方や竜王は昨年比マイナスだが、岩岳は約2割増しの絶好調。これで3年連続で冬よりも夏の方が客数が多く、夏の客数は八方の2倍。 別のニュースリリースによると盆期間はコロナ前比で1.3倍ということで、そりゃゴンドラも更新するわな、という感じ。

 めいほうや川場も夏の集客を伸ばしてる。

<2023年7月期計画>

 この冬は、インバウンドは国内在住者中心の昨シーズン並み、でも行動制限も無いとして、その割には全体で昨シーズン比+3%と控えめな計画。岩岳を2割減にしているのがちょっと謎。

 中期計画では、インバウンドは2023/24シーズンにコロナ直前の2019/20シーズン並みの20.5万人に戻り、2024/25シーズンには2018/19シーズンの23.3万人を大きく超えて30万人とこちらは強気の計画。国内客も2024/25シーズンには2016/17シーズンの146.7万人を超えて150万人としているが、これはただの希望的観測なのか、岩岳のゴンドラ更新による客数増も計算してのことなのか。

<成長戦略:課題解決に向けた取り組み>

①こども来場者数の増加…キッズプログラム(小学生以下シーズン券無料等)の継続

②ノンスキーチャネルの拡大…岩岳鹿島槍ポケモンアドベンチャー

③ベースエリア開発~宿泊事業の本格化…「後継者不足やコロナの影響で休業する事例が増加しており、宿泊施設数はスキー場の来場者数にも直結することから、ポテンシャルのある宿泊施設はグループリゾートで譲り受けてリノベーションや新規営業活動を実施、開発可能性のある土地の仕入れも行い、スキー場事業にプラスとなる事業者等をパートナーとして招致もしていく」とのこと。

 インバウンドを見据えた中~高価格帯の開発になるのだろうが、低価格帯のドミトリーも手掛けてほしいところ。

④提携の推進による競争力の強化…「断続的な暖冬小雪やコロナの影響によりスノー業界全体的に支援要請が増加しており、ノウハウを積極的に活用し経営支援する事業を展開してマーケットシェアを高めていく。昨シーズンからみやぎ蔵王えぼしとオグナほたかに対し営業支援やコンサルティングを始めて初年度から効果が表れており、今後も同様の支援要請が見込まれることから、重点領域として社内に専属の組織を設けてコンサルティングや業務支援を他スキー場に対しても進める」とのこと。

 どことは書かれていないが今期はパートナーリゾート数が2つ増えて「4」となっているので、水面下で話が進んでいて正式な発表を待つばかりなのだろう。2025年7月期には直営・提携合わせて20か所と、2年でさらに8か所も増やす計画となっている。

⑤更なる差別化~ゴンドラリフトの新設…岩岳、「今後も将来に向けて、索道施設を含めたスキーリゾートの最適なリニューアルプランを策定し、地域の協力とともに実現に向けて取り組む」

 

 2020年11月の信濃毎日新聞の報道では八方について「2023/24シーズンの稼働を目指して新たなゴンドラを整備する方針を固めた」ということだったが、これについては何も触れられていません。

 ということは、SNSの一部で囁かれている「白紙撤回」の噂は真実なのか、少なくとも無期延期状態なのか。成長戦略⑤の「地域の協力とともに実現に向けて取り組む」がこのことなのか。

 報道では「八方尾根開発によると」で、現在のゴンドラ所有者である白馬観光開発からのリークではありませんでした。新ゴンドラの計画は2015年12月の「八方尾根活性化マスタープラン」に既にあり、ここでは索道会社の統合を前提条件としていました。その後に何の進展も聞かれなかったのは雪不足による客数減もあるかもしれませんが、前のめりな白馬観光開発に対して八方尾根開発が飲み込まれることを恐れて後ろ向きで立ち消えにでもなったのかと思っていました。

 だから2020年11月の報道はマスタープランが立ち消えになったわけではなく遅まきながら前進したのだと喜んだものですし、コロナ後の報道だから客入りに関わらず進むと思ったのですが、その後はまたなしのつぶて。

 ゴンドラ架け替えとあわせて駐車場やセンターハウスが整備されたら国内客も増えるでしょうに、インバウンドの復活を待つなんて悠長なことでよいのかどうか。

 

 噂と言えば、鹿島槍の休止や縮小という噂も一部で流れているようですが、この報告資料では昨シーズンの「ポケモンアドベンチャー」の成果をアピールしており、直営リゾート数も減らしていないため、少なくとも今期での休止はないはず。

 ただ、「ノンスキーヤーでも雪遊びを楽 しむことができる「冬のテーマパーク化」を進める」ともあるので、リフト営業の縮小の可能性は否めません。