マックアース -4

(前回から続く)

 マックアースは、兵庫県のスキー場の食堂を出発点に、宿を学校団体向けに特化することで成功した会社。資金力があるわけではないので大規模な設備投資はできないし、したことがない。できるのはオペレーションの改善、それも成功体験といえるのは、オーンズでシーズン券価格を大幅に下げて客数を増やしたことと、近隣エリアで運営する複数スキー場の共通シーズン券を出すことでヘビーユーザーに人を連れてきてもらうことくらいではないか。

 そうした「自分たちにできる(得意な)こと/できない(苦手な)こと」がわかってきたからこその、他社への譲渡だったり、直接運営から提携への方針転換なのだろうし、異業種から「スキー場運営は初めてだがやってみよう」とリスクを取る事業者が出てきたというのは、その程度には市場環境が好転してるということだろう。

 一ノ本社長はブログで、「自治体所有で、大きな設備投資を伴わないと経営改善できそうもないスキー場を、自治体が撤退して民間に任せようとする、なんてことはムチャクチャハードルが高すぎる」ということも書いている。「地域に不可欠な存在としてのスキー場を何とかして存続させるためには、自治体も地元も運営事業者も一体になって苦労しないといけない」ということなのだろう。本当に必要なら税金投入してでも維持すべきだと。(この「自治体が撤退して民間に」は、「最近も長野ではいくつかスキー場閉鎖のニュースがあります」から続くので、いいづなリゾート、飯綱高原のことと思われる)

 「設備投資に過疎債、辺地債などを起債して償還分について指定管理料で納付するといったスキームが組めれば延命、再生できます。」「過疎の指定を受けていない自治体なら有利な起債も使えないので余計(難しい)かもしれません。」「(自治体所有で大きな設備投資が必要なスキー場を残す方法は、)起債前提で設備投資リノベーションのプロポーザルを公募でやる。大規模修繕も同時にやる。これを10年に1回繰り返すのです。何もせず民間譲渡といってしまったらもうおわり」などは、専門家でないと出てこないような話。

 成功ばかりではないとはいえ、あるいは失敗事例も含めて、マックアースの貢献は大きいと思う。今が終わりの始まりなのか、次のステップへの踊り場なのかは分からないが、14年ぶりの新設スキー場となる峰山高原の初年度の成功から、日経トップリーダーの取材を受けるなど、経営者としての注目も引き続き(久しぶりに?)されている。

 その取材では「これほどスキー場にアクセスしやすい国は、日本のほか、スイスとリヒテンシュタイン、それからアンドラだけ」「スイスでは、国民のウインタースポーツの参加率が35%あります。日本は5%です。日本にもウインタースポーツの参加率が20%ぐらいになるポテンシャルはあると思っています。むしろ、こんなにスキー場が近くにあるのに5%というのは異常」「インバウンドに頼らないとスキーリゾートは先がないのかというと、そうではない」「日本のお客様がなぜ今、スキー場に行きたくないのかを考えて、ハードルを下げる努力が必要」「低価格で回数を狙ったほうがいいリゾートもあります。」「当社ならではの工夫でハードルを下げ、日本のウインタースポーツの参加率を20%に高めたいと考えています。」と発言している。(続く)