マックアース -6

(前回から続く)

 スキー場へのアクセスが世界屈指というのは、諸外国では大都市圏から半日~丸1日かかるところが、日本では2~3hあれば行けるということだろうが、諸外国では1~2週間の休暇を取るのが一般的だが、日本では日帰りか1泊がほとんどということとあわせて考えると、休暇期間に占める移動時間の割合は日本の方が高い。

 ウインタースポーツ人口を増やす決め手として、一ノ本社長は「休日分散や長期休暇の浸透が進めばスキー人口は簡単に増えると思っている」と言っている。「休日分散や長期休暇の浸透」は星野リゾートの星野社長も以前から言っていることで、旅館経営的にはもちろん、観光地や交通機関の混雑・渋滞回避のためにも決定打であるのは間違いないだろう。ただこれも「文化(価値観)を変える」ことなので、一朝一夕には行くはずがない。

 先ほど「諸外国では1~2週間の休暇を取るのが一般的」と書いたが、データがあるわけではない。映画を観てると、フランス映画で特に、そんなにアッパーミドルでもない中流家庭でも、バカンスに家族で行楽地に行く様子が描かれていることが少なからずある。だが、本当のところ、それがどこまで「一般的」なのかは知らないし、行楽地では古い家を借りて特に何もせずにのんびりするだけで、家賃くらいしかお金掛かってなさそう。

 だから、日本もいくらかそのようになったとしても、空き家をメンテナンスして貸す民泊的な需要は増すだろうが、本業として宿泊やレジャーを提供している業者の売上が大きく増えるかというと、行楽を楽しむ側にそこまでの経済的余裕はないのが実際ではないだろうか。

 そもそも、そういう、自然以外は何もないところに、1週間以上、「特に何もしない生活(日常の家事はある)」をしに行く、という休み方を日本人が望んでいるのどうかも、微妙。

 休日分散や長期休暇が浸透したとして、その休みをどう使うようになるか。混雑の分散はするだろうけど、出かける回数は増えるだろうか。回数が増えたら、そのぶん支出単価が下がって、市場規模は大きくは変わらないのではないか。あるいはレジャー支出が増えるのなら、そのぶん別の支出が減るのではないか。

 休日が増える → レジャー産業が活性化する(他へのマイナス影響はない) → 賃金も物価もGDPも適度に上昇する、なんて夢みたいな話、ないとは言わないが楽観的すぎるだろう。適度な楽観主義はビジネスにも人生にも必要なのだろうが、その「適度」が難しい。

 休日が分散化・長期化したところで、スキー人口の微増程度は簡単かもしれないが、大幅な増加はそう簡単ではないと思う。