富裕層向けサービス

 岩岳で「HAKUBA S Class」というサービスを始めると言う。

 山頂・中腹・山麓に専用のVIPラウンジを備えフード&ドリンクを無料サービス、ゴンドラ・リフトには優先乗車でき、チケットカウンターも専用窓口を用意、予約すれば宿からの送迎無料もしくは専用駐車場利用可、ゲレンデに荷物を預けられて板はチューンナップ、温泉施設利用可、別料金で夜の雪上車ツアーあり。これで1人1日15,000円。

 山頂と山麓は分かるが、中腹って、あのもう何年も使われてなさそうなのを再稼働させるということか。ただの休憩スペースではなく食事も出すとなると、山頂や山麓同様、このサービス専用ではなく、一般に開放しつつ一部を専用スペースにしないと採算あわないだろうが、本格的にゲレ食を1つ復活させるというのか。

 昨シーズン、2/10というシーズンで最も混んでいるであろう日に行ったが、ゴンドラは並ぶ気が失せるほどに混んでいたが、下の食堂はそうでもなかった。混むのは上だろうが、下からは想像できないほどに上のレストランは激混みなのだろうか。

 八方がシーズン券利用者向けに専用ラウンジというのはそれなりに利用者いて価値があると思うが、岩岳で15,000円のサービスの利用者がどれだけいるのか。利用者が少ないからこそのVIP感はあるだろうが、ほとんど利用されず閑散としているのもどうか。

 既存施設の一角を専用スペースにしたり、せいぜいちょっと囲ったくらいじゃ、VIP感漂う雰囲気の演出はできないと思うが、山頂レストランの一番いい席が確保されているなら、雰囲気はただのゲレ食でもそれで十分なのか。

 八方ではなく岩岳で富裕層向けサービスというのも違和感があるが、長期滞在の外国人が主要想定顧客なら、そのあたりはあまり関係ないのかも。リフト券もHAKUBA VALLEY共通券なのだろうし。事業者としては、八方より岩岳の方がサービス設計の自由度が高くてやりやすいのだろう。

 こういうサービスを提供するとなると、宿もゲレンデの施設もそのサービス価格に見合ったものでないことを痛感する。ゲレンデの施設にゴージャスな高級感は必要ないと思うが、内装やイス・テーブル、空間設計などにもうちょっと余裕や洗練さがないと、あまりにも古くて安っぽいと感じられるのではないだろうか。個人的にはそういう”昭和感”は嫌いじゃないが。

 サービス内容も価格も、いろいろ考えた結果にせよ、やってみて、反応を見て、改善していくものだろう。自分が利用することはないが、富裕層の満足度向上が運営会社の利益向上につながって、ひいてはスキー場の設備更新や持続可能性の向上につながるのであれば、こうした意欲的な取り組みは注視していきたい。