緊急事態宣言の余波、あるいはただの口実

 4月7日(火)夜、新型コロナウイルス(COIVD-19)の感染拡大に対して緊急事態宣言が発令された。

 とはいえ、日本の法律で可能なのはあくまで「外出自粛の要請」であって、罰則付きの「外出禁止命令」は出せない。そのことから海外メディアには「強制力がなければ効果がない」といった論調が多いという。

 しかし日本人には「そうでもない」と感じている人が多いのではないか。罰せられるかどうかも効くが、周りを見て”雰囲気”で行動する性質が強く、お上が「緊急事態です!外出は控えるように!」と言い、メディアが一斉にこれを報じることで(実際、夕方のテレビ番組はEテレを除いて全局このニュース中継だった)、外出を控える人が大幅に増えることは間違いないだろう。

 この緊急事態宣言を受けて、八方尾根スキー場が4月7日での今シーズンの終了を決めた。いや、正確には「緊急事態宣言が出される見込みとなったことで」のようだから、4月7日の夜に宣言される前に、同日を営業最終日とすることを決定・発表した模様。

 しかし、4月8日の朝にスキー場に滑りに行って初めて、営業終了を知った人も少なからずいたのではないだろうか。決定が早いというか、突然すぎやしないか。

 栂池高原スキー場は、4月8日は営業して、この日の朝のうちに4月8日で営業終了とすることを発表している。態度としてこちらの方が望ましい。あるいは、週末に滑りに行こうと宿を予約している人のことまで考えれば、週末まではやってくれてもよかったかもしれない。

 今シーズンはおそらく、白馬のスキー場営業史上最も雪が少なかったに違いなく、八方も栂池も例年ならGW並み、あるいはGWでももうちょっとあるというくらいに滑走エリアが狭くなっていた。

 八方の公式発表の積雪量でいうと、兎平はまだ記録的少雪だった4年前と同等水準だが、黒菱は4年前でも4月18日頃の水準の少なさ、4月の降雪でGWの積雪量が比較的多かった昨年なら5月1日の水準まで減っていた。2011年以降、GWにスカイラインコースが滑れなかったのは2年前と4年前の2回しかなく、2回とも4月27日までは滑れていたのが、今年は4月5日で終了となっている。

 今シーズンの白馬村内のスキー場利用者数は、12月こそ過去6年平均を8%ほど下回ったが、それでも昨年からは2割以上の増加で、1月・2月は過去6年平均を上回る集客となったことで2月までの累計では過去6年平均並みと、雪が少なく全面オープンにならなかったことを考えれば、それでも他よりはマシなことで客が集まり、ずいぶん健闘していたと言える状況だった。

 それが3月は、過去6年平均比34%減と大幅に落ち込んだ。「雪は少ないが他のスキー場はもっと少ない」状況に変わりはないから、外出自粛の影響なのは間違いない。

 スキーバスの利用は減っても仕方ないし、宿泊旅行への影響もあるかもしれない。しかしよほど人気の宿でなければ3月は大体空いているから、自家用車で移動するスキー旅行など「3密」とは程遠い環境。

 外出自粛の掛け声の中、後ろ暗さを感じながら遊びに外出したが、自家用車でのソロキャンプなので誰とも会うこともなかった、という4コマ漫画があったが、「ソロスキーヤー」としてはほぼ同じ心境。半径2mに人がいるのは、リフトの係員さんがギリ入るかなというくらい。

 3月は1週目と3週目に湯沢方面に行ったのだが、例年の状況を知らないので減っているのかは分からなかった。3月7日(土)のみつまたロープウェーの朝と夕方は30分以上の待ち時間だったが、これも例年を知らないので判断できない。

 そこで3月の湯沢町のスキー場利用者数をみると、かぐらに関しては過去3年平均を2割上回っているので、例年以上に混んでいたのだろう。ただし他のスキー場に関しては、神立が過去3年平均比-4%で踏ん張っているほかは、苗場や岩原は過去3年平均の5分の1程度と惨憺たるもので、滑走エリアの広さでかぐらが他を圧倒して一人勝ちの状態。

 湯沢町全体では半分以下と白馬村以上にひどいのは、首都圏客比率の高さの影響が大きいから外出自粛の影響をより大きく受けているのだろうが、かぐら以外の滑走エリアの少なさも白馬より格段にひどかった。

 白馬でも、いいもりの急斜面以外はオープンした五竜47が一人勝ちに近く、3月も過去5年平均比-5%で踏ん張っていたし、今のところシーズン終了の発表もない。47はほぼ全面可のままだし、五竜も上部は全面可、とおみのリフトは終わったが、下山コースは残っていてとおみゲレンデも滑走はできる。

 結局、八方と栂池は緊急事態宣言を口実に、客の少ない残りシーズンを切り捨てたのだ。経営判断としては正しいだろうが、そうした合理的な判断は、愛好者としてはとても寂しい。

 これでますます五竜に客が集まる(白馬では五竜しか営業していない)わけだが、首都圏も大阪・兵庫も緊急事態宣言に基づく外出自粛要請となったことで、どこまでスキー客が減るのか。

 個人的には、奥美濃でもまだ営業しているし(といってもめいほうは4月12日までで先週末で既に瀕死の状態。高鷲SPはGWまでの営業予定を掲げておりどこまで粘れるか)、おんたけ2240もマイアもGW営業予定を掲げて営業しているし(さすがにともに下部は終わり始めているが、特にマイアは初めてGW営業を掲げただけにどこまで粘るか見もの)、五竜47が例年並みに上部全体滑れるならGWも行く気満々。

 そもそもが雪不足でGW営業が危ぶまれていたのが、4月に入って気温が平年より低くなって希望が見えてきた矢先の、緊急事態宣言によるスキー場の営業終了。

 かぐらもGWはともかく、雪不足でそれ以後の営業は無理かもしれないとも噂されるなか、どこまで営業を続けるか。奥只見は、そして月山の営業に影響は出るか。

 災害級の雪不足と感染症拡大というダブルパンチのシーズンとなったが、例年通りGWまでは滑りたい。