ユーチューバー

 数年前から、小学生のなりたい職業ランキングの上位に「ユーチューバー」がランクイン、というニュースを目にする。

 まあ、アイドルやお笑いタレントと同しで、それが今の小学生にとってはユーチューバーというだけなんだろうな、くらいに思っているのだが、オッサンたる当方にはユーチューバーの何が魅力なのかが分からない。自分の親世代が、子供っぽいアイドル歌手が人気なのが分からない、というのと同じなのだろう。憧れの対象が「カッコイイ」から「カワイイ」に変わり、より身近な存在として行きついた先がユーチューバーなのだろうか。

 なぜ人気なのかの考察記事をググると、ヒカキンについては「ネットも現実も傷つけられるリスクでいっぱいだけど、ヒカキンの動画を観ているときだけは何の心配もなく平和な気持ちになる」「どんな悲惨な状況でも、動画の中では必ず「笑顔」で凄いと思える」「絶対的にブレない「いい人」を感じれて、見ていて安心できる」、はじめしゃちょーについては「大人が押し付ける常識が邪魔をしてバカな遊びをできないけど、はじめしゃちょーの動画を観ていると度を越えたノリの良さで楽しい気分になれる」「みんなからの「愛されているオーラ」を感じられて、見ていてホッとする」というのが出てきた。うーん、よくわからない。

 別の記事で、ヒカキンの子供人気の高さについて、商品レビュー動画の商品のチョイスや紹介時の言葉の分かり易さ、そして変顔によって「クラスの人気者」的な立ち位置を獲得した、というのがあり、「しょーもな!」とは思うが理由としてはこちらの方がわかる。その分かり易さが児童のみならず20代くらいまでには刺さっているのだろう。自分の世代も親世代からはずいぶんと幼児化が進んでいる自覚はあるが、その勢いは留まるところを知らず、ということか。

 スキー・スノボ系のユーチューブ動画というと、もともとは個人の滑走(風景)動画が多かったと思うし、数で言えば今も多いだろう。あるいは、「SKI NOW」の録画映像や、市販のレッスンDVDの動画とか。

 素人ではなくプロの人(スキーを生業にしている人)では、齋藤勇洋氏は古株の部類かと思う。ユーチューブへの登録は2012/1/7、現在残っている一番古い動画は2013/2/3投稿、ワンポイントアドバイスなどの投稿が継続的に残っているのは2014年末からとなっている。自分がいつ頃知ったのかは覚えていないが、2015年か16年だろうか。

 小学生のなりたい職業ランキングの上位に「ユーチューバー」が登場したのは2017年とのこと。スキー・スノボ系で顔出し投稿動画が増えだしたのもそのあたりからだろうか。

 子供や若者にユーチューバーがそんなに人気なら、オリンピックで金メダルを取らずとも、あるいは取るよりも、スキー・スノボ系ユーチューバーが大ブレイクすればスキー・スノボの人気が増すのではないかと夢想したりもするが、オリンピックやワールドカップや漫画・アニメの人気と違って、ユーチューブでの人気が社会的現象になって特定ジャンルの参加者が明らかに増えたという話はまだ聞かない。

 ネットというのは、テレビのように広くあまねく大衆に開かれたものではなく、あくまでパーソナルなものであり、個々に細分化したニッチな欲望を満たす装置であり、社会的ムーブメントに繋がるものではないのだろうか。

 しかし世界的には、政治的ムーブメントの発信源となっている例は多い。日本でも検察庁法改正反対の件が盛り上がったが、あれはテレビが積極的に取り上げたからという感じもする。

 今どき、インスタやユーチューブで知って興味を持つというのは、10代・20代では一般的というか当たり前というか、むしろ何かのファンになるにはそれしかルートがないといってもいいくらいなのだろうから、ユーチューバーやそのSNSからブームになるというのはない話ではないはず。

 かといって、ブームになるほどスキー・スノボ系ユーチューバーが大ブレイクするというのは、もしかすると、品行方正で、キャラが立ってて、トークもそこそこいけて、顔面偏差値の高い選手がオリンピックで金メダルを取ってスターになるより難しいのかもしれないが。