ウイングヒルズ白鳥 来シーズン情報

 月山や乗鞍に滑りに行く人、サマーゲレンデに滑りに行く人、早期受注会に行く人と、シーズンの終わりと始まりが交差する時期になりました。

 シーズン券に関しては、シーズン中に翌シーズンの早期販売を始めるところも出てきていますが、早割1日券も出始めました。

 サマーゲレンデ営業中の、岐阜県奥美濃エリアのウイングヒルズ白鳥は、6/9から9/30まで超早割として、1日券4枚セットを12,400円で販売します。昨年は9,800円でしたから25%を超える大幅な値上げとなります。

 昨年は夏以降に燃料費高騰などで値上げムードになって当日1日券は4800円から5000円に200円値上げ、10/1以降の早割(1日券4枚セット)も10,400円から11,200円に800円値上げされていたのに対して、6月販売開始の超早割は据置きでしたので、2年分まとめての値上げということではありますが、それにしても大幅です。

 と思ったら「18,000円~22,000円 → 12,400円」という表示があり、これは、平日4200円→4500円、休日5000円→5500円に値上げということと考えられます。これで当日は2年で700円の値上げに対して超早割は1枚当たり650円アップ、値引き額は2350円から2400円に微増、割引率にすると48%から44%弱に縮小ということになります。

 200円の値上げでは全然足りなかったということもあるでしょうし、高鷲スノーパークが4900円→5400円、めいほうスキー場が4800円→5200円という昨年の値上げを見て「もっと上げてもよかった!」と思ったのかもしれませんが、このままだと奥美濃エリアの盟主(最大規模・最多客数)である高鷲スノーパークよりも高いことになってしまいます。高鷲も少なくとも5500円に、あるいはそれ以上に上げてくると見込んでのことでしょうか。

 過去を振り返ると、

・2012年:12/9まで販売で1枚2,500円(3回で1回無料だったから実質は7,500円で4回)

・2016年:7/18まで販売で3枚7,500円(食事券500円*3枚付・3回で1回無料)

・2019年:8/31まで販売で4枚8,900円(食事券500円*3枚付・3回で1回無料は廃止)

・2021年:9/30まで販売で4枚9,800円(食事券なし)

・2023年:9/30まで販売で4枚12,400円

となっており、2019年から値上げペースが早く・大きくなっています。

 超早割が12,400円となると、10/1からの早割は、もともとの超早割との価格差600円を踏襲するなら13,000円に、1枚売りは3,400円か3,500円でしょうか。奥美濃では数年前まで早割だと2000円台が当たり前だったものですが、昨年で既に鷲ヶ岳が3,300円、高鷲スノーパークが3,500円、めいほうは3,700円になっており、中規模どころではホワイトピアたかすがまだ2,900円でしたが、ここも値上がりされるのでしょう。

 ウイングヒルズの超早割は、有効期間が2024/3/24(日)までなっており、これは早々に延命営業を頑張るつもりはないとの宣言です。かつては終了時期を明言せずに、雪出し・雪寄せの努力を重ねて4月中旬までできる限り営業したものでしたが、近年はその努力具合が薄まっていました。あとは、そんなに労力をかけなくても滑れる場合に延長営業するのかどうかが焦点となります。

 そして値上げよりも3/24終了よりも衝撃的なのが「※2023-24冬シーズンは天然雪で12月にオープンする予定です。」という1行です。ああ、とうとうICS(人口造雪機)による早期営業を諦めてしまった!

 かつて奥美濃では4つのスキー場がICSを利用して11月から営業を開始していました。特にウイングヒルズと鷲ヶ岳が最速を競っていて、鷲ヶ岳は10/30、ウイングヒルズは10/24にオープンしたこともあり、全国でもイエティ、狭山に次ぐ3番手でした。しかし5年前に鷲ヶ岳が11月開始をやめ、そして今年はウイングヒルズもと、最速を争っていた2つが撤退ということになります。

 そもそも4つもあるのが多すぎるということは言えると思います。ウイングヒルズと鷲ヶ岳の2つだけの期間も、イエティや軽井沢プリンスほどのリフト待ちではなかったのではないかと思います。そんななか、ゴルフ場がある鷲ヶ岳に続いてキャンプ場があるウイングヒルズがやめるのは、あるいはICSコース距離の長い順に撤退しているというのは、必然だったのかもしれません。

 残る2つのうち、白鳥高原もゴルフ場です。だからだと思いますが、昔からオープンは11/20前後と4つの中では最も遅く、無理な早期オープンはしてきていませんでした。エネルギーコスト高騰のなか、白鳥高原もいつICS営業をやめてもおかしくないのかもしれません。あるいは、2つに減ったことで採算が改善して継続されるのか。

 残るホワイトピアたかすに関しては、前記の3つと違って夏営業を行っておらず、逆にそれで(冬営業だけで)よくやれているとも思います。

 ウイングヒルズは、以前はグリーンシーズンはマウンテンバイクとピスラボマットによるサマーゲレンデに力を入れていたのですが、コロナ禍以降は親会社であるアルペングループの後押しからキャンプ場に力を入れており、これが好調なのかもしれません。サマーゲレンデの営業日数は、平日営業は盆期間中だけどピーク時よりも大きく減って、そのかわりキャンプ場は4/21から12/3までとなっており、昨年はICSによる冬営業とキャンプ場が重複している期間がありました。

 「天然雪で12月にオープン」というのは、ウイングヒルズにはICS以外は普通の人工降雪機はなかったのだと思います。そうなるとオープンは、ICSのあるメインのアトリウムゲレンデにはピスラボマットがあって雪が溶けにくいとはいえ、これまでのゴンドラ営業開始よりも遅くなるかもしれません。

 ゴンドラ営業開始は去年だと12/17、過去11年の中央値で12/19です。しかし2015/16、16/17、19/20は1月の中旬や下旬までゴンドラを動かせませんでした。今どき奥美濃の中規模ゲレンデで人工降雪機なしは厳しいと思います。あのクラスの雪不足なら正月明けまで営業できなくても仕方がないと腹を括っているのか、そうなったらICSを動かすのか、今後は普通の人工降雪機を導入するのか。

 これで今年の奥美濃のオープンは、ホワイトピアと白鳥高原がおそらく11/18で(白鳥高原は11/23や25かも)、次いで降雪機に力を入れいてる高鷲スノーパークとめいほうが12月の上旬から半ばにかけて、そこから遅れてかつては10月オープンもあったウイングヒルズと鷲ヶ岳ということになりそうです。

 ウイングヒルズがICSをやめるのは今年だけで来年以降の復活があるのか、それとも普通の降雪機を導入してICSは完全に諦めるのか。気になります。

(所感)スノーリゾートの活性化・形成

 スノーリゾートの活性化・形成に関する観光庁主催のこれまでの会議の様子を振り返ると、最初の「スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会」では

「スノーリゾート地域の活性化のためには、リピーターの実施回数の増加、スキー人口の底辺拡大の他、新市場開拓(インバウンドのような新しい層を取り込む)も重要」

「連休のあり方について政府で検討いただきたい」

などの国内客振興向けの意見・要望も多く出ていました。

 しかしこれに続く「スノーリゾート地域の活性化推進会議」ではもうインバウンド誘致一辺倒のようになっており、「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」を経て始まった補助金事業のタイトルは「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」です。

 このタイトルからも分かるように、今ではいかにインバウンド誘致の世界的競争を勝ち抜いていくかにフォーカスされるようになっています。

 その結果、資本の論理を前面に押し出した、欧米の成功事例をまねてのキャッチアップ傾向が強くなっているように感じます。

 最初の検討会での幅広い提言というのは「とりあえず現状調査して課題を洗い出した」というものであり、言い方を変えれば「的が絞られておらず総花的」とも言えます。

 そこに優先順位を付けて絞り込んでいくことは必要ですし良いことだと思いますが、「インバウンドが重要だからまずはインバウンドから」という意思決定プロセスが示されずになし崩し的に絞られているのは気に掛かります。

 観光業の原点が家族経営的な民宿であるのは日本に限ったことではないと思いますが、観光の産業化という点では50年以上も先行してそうなヨーロッパと比較すると、日本はまだその状況が根強いように思います。

 特に、富裕層が多く、中間層でも週単位での休暇が当たり前の欧米的なリゾート需要への対応は、国内にそういった状況がないことから供給数が少ないのは確かでしょう。

 そういった世界基準のリゾートのサービスレベル提供については、外資系高級ホテルチェーンの参入で強化されているためか、報告書では「日本らしい滞在を求める人に、独自の旅行目的像を造っていくことも課題」と挙げられていますが、「おもてなし」の本質は「個人の気遣い」であるかと思います。

 それは文化的な慣習を背景に個人レベルで身に付けられたものが多く、これを組織的に訓練する機関はほとんどないのではないでしょうか。観光地全体を自治体と企業と地元住民が一体となって運営していく体制の必要性や、そのための人材育成の必要性なども報告書で課題として挙げられていますが、それは現場の最前線でサービスを提供する人の育成システムという点でも同様と思われます。

 遅れているということは学ぶべき手本がたくさんあるということでもありますが、文化・歴史の異なる他国の先行事例がそのままあてはまるとも限りません。自国の特徴にあった仕組みを作っていかなければいけませんが、人材育成などは十年単位の長期取組が必要であり、そうした単年度の予算ではどうにもならない取り組みが日本でうまく進んでいくとはなかなか思えず、不安です。

 「国際競争力の高いスノーリゾート形成」はあくまで海外からの長期滞在客を想定したものです。産業政策としての国の支援が、大きな資本を要するが大きなリターンを見込める分野に重点的に配分されるのは仕方がないというか当然のことであるとも思います。

 しかし一方で、これまで「おもてなし」を支えてきた中小・零細(個人)事業者や、市場は縮小していくが比率としてはまだまだ大部分を占める国内客需要に対してどうしていくかがなおざりになっているように感じられるのは、非常に残念です。

 観光業の宿願は、観光業経営者の多くが口をそろえるように「需要の平準化」であるかと思います。これはスノーリゾートにとってはまずはグリーンシーズン強化ということになりますが、観光業全般での「需要の平準化」への最たる対策は「長期休暇の分散化」であるかと思います。

 しかしこれはもう社会(学校を含む)の休み方の慣行を根底から変えるにも等しく、国家のグランドデザインとして少子化対策並みの政策対応が必要なように思われ、だから一向に手つかずのままなのかと考えられます。

 優先順位として、まず今は「国際競争力の高いスノーリゾート形成」のために、地域一丸となっての取組を支援するというのは正しい方向性であると思いますが、対策はより困難でも、市場規模として大きく安定的である国内客向けの活性化についても、忘れずに取り組んでいってもらいたいと思います。

国際競争力の高いスノーリゾート形成の促進に向けた検討委員会

 「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」の報告書での提言を受けるように、2020年度から「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」という補助金制度が始まります。地域単位で募集し、投資額の最大半額を補助するものです。これは今も続いていて2023年度も募集されており、そろそろ採択結果が各自治体に通知される頃合いです。

 2020年度と2021年度は18地域、2022年度は10地域が採択されていますが、実数では20地域となります。うち9地域は3年連続で採択されています(札幌、キロロ、安比・八幡平、蔵王、湯沢、妙高、志賀、白馬、郡上)。それまで2年連続で選択されていた大雪、たざわ湖、夏油、塩原、野沢、斑尾は、おそらく、申請はしたけれど予算の関係か2022年度は採択地域数が大きく減ったことから対象から外れたのではないかと思われます。上記以外では、ルスツ(2021年度)、会津磐梯(2020年度)、米原(2021,2022年度)、神鍋(2020年度)が採択されています。

 この補助金助成事業も3年が経過したということで、2022年12月から2023年1月にかけて「国際競争力の高いスノーリゾート形成の促進に向けた検討委員会」が開催されました。「これまでの取組における成果と課題を整理するとともに、より効果的な支援のあり方を検討する」ためのものです。

 この検討委員会では、「国際競争力の高いスノーリゾート」として、スキーを目的として訪日する欧米豪のスキー上級者(の特に富裕層)をターゲットとした「カテゴリー1」と、観光の一部に雪遊びを組み込むアジアからの観光客をターゲットとした「カテゴリー2」に分けて、補助金事業としては投資額の大きくなるカテゴリー1に重点を置くこと、そのためにカテゴリー1の基準を明確にすることが行われました。

 オーバーツーリズムの問題などもあって国の観光政策自体がインバウンドの人数から質(消費額)重視に移行していること、補助金事業も費用対効果が問われること、どこが弱くてどこに集中的に投資すべきかを明確にするのは経営としては当然であり、大学を「グローバル」と「ローカル」に分け補助金にメリハリをつけるようにしたのと同じ考えです。

 委員会では、これまでの振り返りとして、「採択されて補助金を受けられるようにするための取り組みが地域でまとまるきっかけとなっている」ことを評価し、「地域経営の取り組みを補助金採択の基準にしてより一層推進すべき」とするとともに、そうするにあたってのマネジメント人材の不足、そうした人材を育成する場の不在も挙げています。

 「日本のスキー教師はスキー技術を教えるだけだがヨーロッパではそのスノーリゾートを楽しむタウンガイド的な役割も果たしているところもある」ことや、あるいは「スキー教師がバックカントリーの山岳ガイドを兼ねていて、それらの資格認定や育成に地域や自治体で取り組んでいる」という紹介もされていました。

 「スキー教師兼タウンガイド」が自然にそうなったのか地域で戦略的にそうしたのか分かりませんが、自然発生的だとしても、それは長期滞在を基本とするリゾート地だからです。日本にその下地はなく、スキー場のベースエリアにガイドが必要なタウンもほとんどありません。

 「リゾートタウン」として街が形成されて、スキー以外の街での遊びやアプレスキー(スキー後の夕方以降の楽しみ)の場所がたくさんあってこそのタウンガイドです。ニセコでも白馬でも野沢温泉でも、ショップガイドがあれば事足りそうで、タウンガイドが必要なほどのスノーリゾートは日本にはなさそうに思われます。

 バックカントリーガイドの育成に地域や自治体が積極的に関わっていくのは良いと思いますが、タウンガイドに関してはガイド育成よりもまずはガイドが必要なくらいのベースタウンの充実が先のように思います。

スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会

 「スノーリゾート地域の活性化推進会議」は2019年3月で終わり、続いて2019年12月からは「スノーリゾートへの投資の課題・ボトルネックを明らかにし、解決方策について検討」するため、「スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会」が始まります。

 現場サイドからの要請もあるでしょうし、観光庁サイドとしても、投資家を呼び込んで自律的に持続していってもらわないと困るので、その地ならしが必要という認識は強かったのだと思われます。

 2020年4月に出された報告書では、「スノーリゾートの現状と課題」として、

・国内客は減少傾向だがインバウンドの成長は今後も見込まれることから国際競争力の高いスノーリゾートを形成することが重要である

・借地であることや敷地境界の不明確さから索道事業の譲渡が困難である

・スキー場が供給過剰である

・スキー事業者が過大な借金により新規投資ができず経営が硬直化している

・アジアを中心としたインバウンドの受入体制を整えることで市場拡大が見込まれるが事業者が小規模に分散しており投資が進まない

・収益源が索道事業のみであることが低収益の要因である

ことなどが挙げられています。よって、投資環境整備の方向性として、上記の課題を解決すべく、

・索道事業者の資本統合(一山一社化)

・ベースタウン事業者の小規模資産の統合

・所有と運営の分離(資本の分離)を推進することで投資の受け皿を作り規模の経済で収益性を向上させる

・誘客の組織化(DMO:観光地域づくり法人を設立して地域全体で取り組む)を進めていくことでスノーリゾートの魅力を造成する

ことなど、地域をまとめていくことが鍵であるとしています。その取り組みのステップとして、まず(STEP 0)は

・投資環境整備の国の支援方針策定・地域への浸透を図る[実施時期目安:2020年]

次(STEP 1)に、

・地域連携協議会の設立、エリア一体のマスタープラン策定、エリア共通施策(共通リフト券・周遊バス等)の企画・実行、スモールパイロット施策(小規模かつ実証実験的な設備投資等の取組)の実施を通じて関係者間で成功体験を共有することで地域の一体感を醸成する[2020~2021年]

その後(STEP 2)、

・索道会社の資本統合による効率的な経営/運営体制の構築や不動産保有/管理会社の設立によるベースタウン投資の受け皿整備による地域全体での強固な組織化を図る[2021~2022年]

ことで投資促進に向けた環境が整備できる、としています。

 投資環境という視点なので当然ですが、資本の論理が前面に押し出された提言内容となっています。「国際競争力の高いスノーリゾートを形成する」のが目的で、そのための投資環境を整備するにあたっては、課題認識も解決策も至って妥当なものだと思われますが、そういったいかにも経営学的な正解を押し出しても、現場はもっと感情的でそのようには進まないのが現実だと思います。(そんなこと理解した上で、あるいはそんな当たり前の正解が共有されていないからこそ、あえて経営学的な正解を強く全面に打ち出したのかもしれませんが)

 また、この報告書の1~2年後にもう索道会社の資本統合とは、実施時期目安は理想(願望)的過ぎて「絵に描いた餅」も甚だしいと感じます。本当に日本のあちこちでそんなスピード感で物事が進んでいくと考えているのだとしたら、現実が見えていないように思います。コロナ禍でそれどころではなくなりましたが、コロナがなくてもほとんどの地域でまだせいぜいSTEP 1の途中だったのではないでしょうか。

スノーリゾート地域の活性化推進会議

 「スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会」の最終報告での提言を受けて、2017年10月から「スノーリゾート地域の活性化推進会議」を開き、アクションプログラムの策定に取り組みます。

 アクションプログラムの骨子は「モデル事業の実施」と「スキー場の経営に関する事項」で、前者はその取組成果を検証し横展開、後者は事例収集と情報共有を目的としたものです。

 このモデル事業には公募から大雪(旭川)地域と八甲田地域が採択されますが、その取組内容は「アジアを中心としたスキー観光客をターゲットにスキーインバウンド裾野拡大」と「初めて雪に触れる外国人観光客に青森でしか体験できないコンテンツの提供」とスキー初心者のインバウンド向けのみでした。

 雪不足で国内客が減る中、外国人客はさらに増加して比率が高くなっていましたし、かつ、外国人客は平日のお客さんになることからスキー場やその地域にとっては重点を置くべきターゲットだからでしょうが、このモデル事業の採択の時点で国内客を含めての活性化よりもインバウンドメインの姿勢が伺われます。

 2018年3月の第3回検討会でモデル事業の成果を含む取組の報告がされ、2018年度もモデル事業の公募・実施、アクションプログラムの策定など、同様の取組が行われます。

 モデル事業の取組は、公募に当たっては「訪日外国人の誘客への対応について」と「日本人の誘客への対応について」が挙げられていますが、採択されたたざわ湖と湯沢の事業内容は、たざわ湖では

・新たなバックカントリーガイドツアーの実施

・廃止スキー場を活用したスノーアクティビティの開発

・インバウンドを惹きつける観光コンテンツを生かしたオプショナルツアーの開発

湯沢では

・外国人目線を取り込んだ体験型観光コンテンツ及びモデルコースの開発

ハルビン市スキークラブ等の招聘、北京市での観光説明会、ベトナム商談会の参加及びセールスコール

となっており、たざわ湖はまだしも湯沢は完全にインバウンド向けのみです。

 たざわ湖にしても、成果報告で有識者から「地元のスキーヤーも多く、このような特徴は残したまま、インバウントとうまく共存できる仕組みを考えるとよいと感じた」という発言があるなど、実質的にはインバウンド向けの取組です。

 「日本人の誘客への対応」は飾りのようなもので、「スノーリゾートの活性化」=「いかにインバウンドを呼び込むか」という視点は、この時点ではもう事業者・観光庁の共通認識になっていることが伺われます。

スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会

 国(観光庁)は、2015年1月から継続的に、行政・民間・有識者等によるスノーリゾートをテーマにした会議を開催しています。

 2015年というと訪日外国人数の急増期(2014年;+29%/+305万人、2015年;+47%/+633万人)でもありますが、スキー業界的にも、降雪に恵まれ、震災後のレジャー需要回復に乗って2013年度・2014年度とスキーブーム終焉以降初めて冬季の索道輸送人員数が2年連続(冬以外も含めた通年では2011年度から4年連続)で増加して「スキーブーム再燃」などと言われもした時期です。

 マックアースの運営スキー場数が2014年に30を超えて救世主ともてはやされ、2012年11月に白馬観光開発を東急から買収した日本スキー場開発が2015年4月に上場と、明るいニュースが続いていました。その後、スキー業界はずっと雪不足に悩まされることになり、コロナの直撃も食らうことになりますが、スノーリゾートをテーマにした会議は絶好調の時期に始まりました。

 初めは「スノーリゾート地域の活性化に向けた検討会」です。検討会設置の目的は「観光振興のため、スノーリゾート地域における様々な課題に対応すべく」「スノーリゾート地域やスノースポーツ人口、 スノースポーツ競技の現状及び課題について幅広く調査・分析し、今後の方向性等を検討するため」で、主な検討事項として

(1)スノーリゾート地域の現状及び課題(地域住民のスキー参加を含む)

(2)国内スノースポーツ人口の現状及びスノースポーツ人口拡大に向けた取組・課題

(3)スノーリゾート地域へのインバウンド拡大に向けた取組・課題

(4)我が国における生涯スポーツとしてのスノースポーツの定着及びスノースポーツの競技力向上に向けた取組・課題

が挙げられるなど幅広いものでした。

 検討会は2015年6月に中間報告を出し、2017年2月に再開して4月に最終報告を出します。最終報告では、今後の取組(事業者、民間団体、地方公共団体、国が連携した取組)の方向性を示し、包括的なアクションプログラムの策定・実施を提言しています。

 ここで示した取組の方向性は、地域の経営力の向上/国内客対応/関係者の連携強化/モデル事業の実施など。国内客対応としては「生涯を通じたスノースポーツ人口の拡大(特に子供・若者・高齢者が重要)」を挙げていました。

 この時点では、「主な検討事項」の幅広さそのままに、特に訪日客誘致にフォーカスしたものではない、幅広い提言でしたが、その後は訪日客誘致にフォーカスしたものへとなっていきます。(続く)

 

エルニーニョ

 去年12月でラニーニャが終わり、今年の夏からはエルニーニョになりそうだとのことです(5月の発生確率70%、6月以降9月まで80%)。おおよそ1年から1年半続くことが多く、冬から来年の春にかけても続く可能性が高いと考えられます。

 エルニーニョは一般には冷夏・暖冬になると言われています。スキーヤーには困った現象です。が、あらためて過去の出現確率をみると、7月から10月にかけては確かに低温傾向が見られますが、冬に関しては、1月に東日本、2月に西日本で高温傾向が見られるものの、冷夏程はっきりとした傾向は観測されていないとなっています。

 日本海側の降水量も、例えば1月の東日本は少なかったことが54%と半分を超えていますが、多かったことも38%あり、必ずしも少雪(少雨)傾向とも言えません(「並」が8%しかありません)。

 2月などは「多い」が50%で「少ない」は25%とむしろ多雪傾向で、3月も「多い」が67%です。が、3月は低温が11%しかないので、高標高域は多雪だけど低標高域では多雨になってしまいます。4月も低温が0%・高温が56%と、エルニーニョは春に低温にならない傾向が強く出ています。

 エルニーニョラニーニャも、気温の傾向ははっきりと出ますが、降雨量の傾向はそれほど出ていません。低温か高温が50%以上か15%以下なのは、エルニーニョで6か月・ラニーニャで8か月ありますが、少雨・多雨が50%以上か15%以下なのは、エルニーニョだと4か月・ラニーニャだと2か月しかありません。(アメダスの観測点は高標高には少なく、スキー場の降雪量との関係となるとまた違ってくると思いますが)

 近年の暖冬傾向をみると、長く安定したスキーシーズンのためには、1月・2月がどうかよりも、12月の雪の降り始め時期と量、そして3月以降の気温の影響が大きいように感じます。エルニーニョの12月は、東日本では高温が38%、低温が23%で、日本海側の降水量は少雨が38%で多雨が31%となっています。どちらかといえば高温少雪ですが、「高温ではない」「少雪ではない」出現率が62%であるとも言えます。

 エルニーニョは3月・4月が圧倒的に「低温にはならない」傾向なので、12月はなんとか「高温ではない」「少雪ではない」スタートとなってもらいたい、なってもらわないと困ることになりそうです。